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犠牲者クイズ

 ゴールはゴールでもナイシューでないゴールはなーんだ? 白けた二人のあいだを割るように注文していた料理がテーブルの上に置かれた。俺はチーズカレー、染野はミートドリア。「なーんだ?」さっそくスプーンをとってとろけたチーズと具のないルーとライスを一緒にすくって一口。「うまい」「なーんだ?」

 クイズ同好会だかで有名な番組にも出演したことがあるらしい染野のなぞなぞめいた問題を解くのに機転はいっさい必要ない。なぜなら何のひねりもなく単純に知識を問うているからだ。

「なーんだ?」

「しつこいぞ」

「ワンワンワン!」

「三回ワンしてもだめ」

 くーんと、染野はなくふりをしてドリアを食べはじめる。が、熱かったのか「ひげぁ」と悲鳴をあげて水をごくごくと飲み干し、あげくに俺のコップまで持って飲むったら飲む。犬なのに猫舌。

「答えてくれないと次の問題にいけないですよ、先輩」

「俺が知らなかったらどうするつもりだ?」

「次の日になったら更新されます。で、す、が、先輩は知っているはずです」

「明日も会うつもりなのか」

 染野は両手で顔を隠してぶんぶんと首を横にふる。「次に会う日のことです! で、でも先輩が会いたいというのならまんざらでもないのだか?」

「会いたくないよ」

「え? それは何のひっかけ問題ですか?」

「現実を見てくれ」

 いないいないばあをするように顔を出した染野は「そういえば、先輩にお返しクイズを出してもらっていません」と目を丸くした。こっちが丸くしたい。

「わかったよ、ホワイトデーに渡すから」

「そんなの待ってられませんよ! あと、数ヶ月あるじゃないですか」

「大ざっぱだな」

「出してください、クイズ。でないと私のクイズの答えも教えてあげませんよ」

「残念だな、仕方ない」

 あきらめないでください! 染野のポニテが犬の尻尾みたいに振れている。

「なら、問題だ。大金持ちの君は、ある日、やせ細った子どもが万引きしているところを見つけた。君はいったい何をしたか?」

「えっ、それってクイズっていうより心理テストじゃないですか」

「さあな、とりあえず思ったまま答えてみろよ」

 染野はグラタンを食べることも忘れて「クイズはうーんと悩むほうが楽しいんですよ」と首をかしげながら「わたしが買ってあげます」と言った。

「やさしいんだな」

「せ、先輩の前ですからね……ではなくて、だって大金持ちの君はって部分があやしくないですか? ここはきっと金持ちだから助けてやれってノリなんですよ! 定石!」

 カレーを食べ終えた俺は伝票をもって立ち上がる。染野は慌てて俺を追いかけた。

「ちょっとまだ食べてますよ! というかクイズの答えも聞いてないですしっ、そもそも……先輩ってなにか私に用があったんですよね」

「答えは、特にないけど。でも哀れな子どもを説教すると答えた女の子は、みんな死んだよ」

 免れた子犬は、ふるりと震えた。

お題:免れた子犬 制限時間:30分

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