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どちらでもいい

 二色のランドセルと八色のランドセルなら前者のほうが好きな一色を選びやすいだなんてことはどんなにお偉い学者さまが言おうと統計が出ようと一万人の賛成があろうと信じない。実際、現実問題、現代を生きている人間においては失われる世界の数が多いより、失われる世界の数が少ないほうが辛いのである。

 このすばらしい高説を高宮は鼻で笑って「あんなにモテたくてたまらないのにいざモテると壊れちゃうんだね。かわいそうな生き物」と手を叩いて笑って「だいたいランドセルって! 黒に決まってるだろ!」と頭を前後にゆらして笑って「まあまあ二人とも恋に恋をしている状態。左が好きだから右も好き、右が好きだから左も好きという状況ですよ。選べない選べないと言っているうちに飽きられてだれも残らない。ワッハッハ」と机に突っぷして笑ったのでグーで頭を殴ってやった。

「痛ぇ!」

「痛いのはオレの心だよ。モッテモテのモッテモテにはわからんかも知らんが、モテない人間だからこそ選べなかった一人が惜しい!」

 顔をあげた高宮はえらそうに腕を組んで「それで?」と話を促した。

「左か右のどっちか、消滅しねえかなあ」

「なんで?」

「いやさ、オレは薬院さんも大橋さんも大好きなんだよ」

「左はもっちり巨乳、右はスレンダー貧乳」

「薬院さんは優しくて可愛いし、大橋さんは厳しいけど面白いし」

「どっちか決めてやれよ。おまえの席の周り、なんか悶々としてクラス中が変な雰囲気になってんだから」

 うんうん。くっつけている机の下で伸ばされている高宮の足を踏んづける。

「痛ぇ!」

「失踪してほしい。右か左に」

「なんでおまえが選べないばっかりに失踪させられなきゃいけないんだろ。かわいそうだろ」

「三年後ぐらいに警察に見つかってほしい。オレたちが卒業したときに」

「で、残ったほうと付き合うわけね?」

「あの子がいなくなったおかげであなたと付きあえた。複雑だけど嬉しい……みたいな茶番を演じたい」

「しいていうなら、どっちに失踪してほしい?」

「ドラマ的には右の失踪……いや左の失踪も捨てがたい」

 バカだなあと高宮は笑って「そんなに悩むなら」と顔を近づける。

「真ん中を選んでみてはどうだね?」

 左に薬院さん、右に大橋さん、そのあいだの前にいる高宮。

お題:右の失踪 必須要素:警察 制限時間:30分

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