電マご披露
休んでから約一時間後、回復したマロニエから呼び出しがあった。二人でマロニエのお館に行ってみると、マロニエは歓待の用意をして二人を待っていた。
伝馬、ネリネ、マロニエの三人は茶菓のある円卓を囲み、マロニエの背後にはカトレアとカミツレの二人が座している。
「テンマ、あなたの滞在を認めます。なにか困ったことがあったら言ってください、力になります。それと、先程は失礼しました。どうか無礼をお許しください」
さっきとは打って変わって優しい態度のマロニエ。伝馬は内心驚いた。
「いえいえ、全然気にしてません。僕のほうこそすみませんでした。加減がわからなくて、やりすぎちゃったみたいで……」
「あなたが気に病むことはありません。私から仕掛けたことですから。それに、被害を受けたどころか、あの術を受けてからかえって身体の調子が良いのです」
言って、マロニエは自分の頬をなでた。たしかに、全体的に肌艶がツヤツヤテカテカしている。特に頬はバラ色で、十代のたまご肌でプニプニ感満載のモッチモチ。
「そ、それはよかったです……」
微苦笑する伝馬。内心では、
(たしかこの人、百九十歳なんだよなぁ……。百九十歳のたまご肌ってのも、どうなんだろう……?)
若干気味悪がっていた。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はこの村の村長を務めています、マロニエ・カロラといいます」
マロニエは丁寧に頭を下げた。
「新堂伝馬です」
伝馬も同じように頭を下げた。
「シンドウデンマ? 珍しい名前ですね」
「いえ、伝馬です。デンマじゃなくて、濁らず伝馬」
「テ・ン・マ、テンマ、ですね。失礼しました。こちらはカトレア・ハイエーとカミツレ・ハイエー。二人は双子で、私の従者なのです」
カトレアとカミツレの二人は全く同じ表情、全く同じタイミングで伝馬に会釈した。伝馬も会釈を返した。
「ところで、デ、テ、デ、デン、デン、テン、デンマ、テ、テン、テン、テンマ……」
ネリネと同じように、マロニエも口唇を震わせながら、やっとのことでテンマと言った。
「そ、そんなに言いづらいですか……?」
「ええ、とっても。デンマだと言いやすいんですが、テンマは難しいですね。ちょっと変ですし」
「変、ですかねぇ……」
伝馬、釈然としない。
(デンマの方が、よっぽど変な名前だと思うけど……)
もし名前がデンマなら、変の下に態が付く。そんな名前を親が付けるわけがない。
「テンマ、一つお願いがあります。もう一度、電マを見せてもらえませんか?」
マロニエは伝馬の腰の電マを指差した。
「はい」
伝馬は電マを抜いて見せた。断じて変な意味ではなく。
「もうちょっと近く」
マロニエの目の前に電マを持っていく。かなり怪しくいかがしく見えかねない絵面だが、もちろん変態プレイではない。
「ふぅむ、先程私と戦ったときの魔力は感じませんね」
「それは多分、スイッチを入れてないからだと思います」
「すいっち?」
きょとんとしている。スイッチという単語はこの世界にないらしい。
(異世界だから、言葉が違ってもおかしくないか。でも、言葉自体は通じてるんだよなぁ。それにマロニエさん、さっきはウインドカッターとかって英語も使ってたし。ま、あんまり気にしても仕方ないか)
と、一人納得して、
「スイッチとは、ここについているこれのことです。これを入れると、このように――」
伝馬は電マのスイッチを入れた。
ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!
電マが鳴り、振動する。
マロニエは顔を赤くし、身をのけぞらせた。
傍から見ると、電マ男が女性に電マを見せびらかせ、恥ずかしがらせている構図に見えなくもないが、当然そんなわけではない。
「凄まじい魔力の波、いや、渦、いいえ、波動でしょうか……!」
直接電マに触れていないにも関わらず、彼女の体表面の魔力を乱していた。魔力の乱れはなぜか筋肉の弛緩と快感を引き起こし、それが血行を促進するのか、その艷やかな肌を赤くし、潤いを与えてゆく。
すぐ近くで見ていたネリネ、マロニエの背後のカトレアとカミツレも、マロニエほどではないが、多少の影響を受けていた。三人とも、顔を上気させていた。
「凄い……。電マの先端で大気中の魔力が乱れ渦巻き撹拌し、波動となって放射されている……! これは光でも闇でもない、純粋なる混沌魔力……! そしてこの感じ……」
マロニエは火照った肌を擦った。
「私の中の魔力が混沌へと転化しつつあります……。どうやら電マが生み出した混沌魔力には二つの性質があるようです。一つは他の正常な魔力を混沌へと転化させる性質。もう一つは、強大かつ光でも闇でもないゆえに制御不能であること。この二つの性質を持つ混沌魔力が、爆発的に体内で増殖した結果、体内では魔力の暴走が引き起こされ、肉体と精神に多大な影響を及ぼしたのでしょう……」
伝馬は電マのスイッチを切った。マロニエの話を聞いていると、やはり電マがちょっぴり怖くなってくる。
(葵ねえはなんのためにこれを……)
無論、マッサージのためだ。電マとは読んで字の如くマッサージ用の機器である。




