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第77話 火急、天災、暗雲

 マリーの出した料理を片手に4番テーブルへと向かっていると、唐突に店の入り口がバン、と強く開かれた。

 随分と騒がしくなった店内においても、その音は大きく響き渡り、店員の話し声が一瞬止まる。

 何事か、と視線を向ければ、そこには見慣れた姿。

 冒険者ギルドの受付をやっていたミルティアじゃないか。

 冒険者向けの依頼関連で色々とお世話になっており、すっかり見慣れた顔となっただけに、その表情の深刻さをすぐに理解した。

 

「ミルティアじゃないか、どうしたんだ」

「クラウスさん。えと、すみません、少し奥、いいですか?」

「あ、あぁ。わかった。取り敢えず先に行っててくれ。クロン、アリア、店の中頼むぞ」

「すみません、アリアさんも一緒でお願いします」

「へ?アタシ?あー、まぁ良いけど……クロンちゃん一人で大丈夫?」

「が、頑張るっす」


 この混みよう、クロン一人でどうにかなるとは思えないのだが、それでもミルティアの表情を見ればそれを断る事など出来ない。

 

「悪いなクロン。すみません!ちょっと所用で二人程奥に引っ込みます!料理の提供等、遅れるかもしれませんがご了承願います!」


 一先ずそう客に声を掛ける。

 客の大体は冒険者や街の常連客。

 多少の遅れはこれでなんとか見逃してもらえる、と思いたい。


 有り難い事に、そこかしこから、いってこーい、やら、仕方ねぇなぁ、といった声が上がってくる。

 こういう所に頓着しないところが彼らの良いところであり、本当に助かっているところだ。

 4番テーブルに料理を置き、ミルティアと共に店の奥……裏の空き地にでも行けばいいだろう、と歩き始めると、どうやらそれが目に入ったらしく、ミルティアが足を止めた。

 

「あ、ギルガルトさんもいらっしゃいましたか。ギルガルトさんも……お願いしたいのですが……」

「あぁ?今飯食ってるところだろうが」

「ひっ、その、すみません、すぐ済みますから……」

「わかったわかった。後でまた作り直してやるから、取り敢えずギルも頼む」

「ちっ、クラウスの頼みじゃしゃーねぇな」

「助かるよ」


 やや乱暴にフォークをおいたギルがガタリと音を立てて席を立つと、その音に引かれて皆の注目が集まる。

 

「おい、ギルガルトさんもか?」

「銀翼の隼のメンバーじゃねぇか……なんかあんのか?」

「あの3人が揃ってって事は……もしかして銀翼の隼復活か!?」

「まじかよ!そりゃ飲まずにゃ居られねぇぞ!おい嬢ちゃん!エール持って来い!」

「おぉこっちも頼むぞ!」

「ひぃぃ、お一人づつお願いしますっすー!」


 なにやら背後では逸った連中が酒盛りでも始める様子。

 いやぁ……ミルティアの様子を見る限りそういういい話じゃなさそうなんだけどなぁ。

 というか、俺は冒険者に戻るつもりは皆無だぞ?。

 まぁこういった悪ノリは冒険者らしくて俺は嫌いではないけどな。

 

「マリー、厨房頼む。本当に無理そうなら気にせず声をかけてくれ」

「分かりました。でも、クロンと二人でどうにかしますから、気にしないでください」


 裏に出る前に厨房へと声を掛けると、グッと力こぶを作る仕草でマリーが答えてくれる。

 本当に、出会った頃の弱々しさが何処かにいったよなぁ。

 良いことだ。

 

「さて、そんなわけで裏に出てきたわけだが、一体どういった要件なんだ?」


 裏の空き地、俺がクロンの稽古に使っているだけあってそれなりの広さがあるそこのど真ん中で、俺とアリア、ギル、ミルティアの4人で円陣を組むかのように肩を寄せ合って話している。

 奥に、という事はあまり人には聞かせられない事を話すということ。

 本当ならどこかの部屋とかがいいんだろうが、厨房に入ると流石に狭いし仕方ない。

 そんなわけで、小さな声でも届くようにある程度固まった状態にならざるを得なかった。

 

「はい、重大案件です。決して他の人には漏らさないよう、お願いいたします」

「了解した。二人もいいな?」

「ふん、そこまでバカじゃねぇよ」

「ま、内容にもよるけどね」


 アリアとギルの二人は……まぁ色々と危ういところのある二人ではあるが、こういった事で馬鹿な事を仕出かす程のバカではない。

 軽口を叩いているアリアだが、万が一にも外に漏れる事は無いだろう。

 

「では単刀直入に伝えます。先日、グワース山中にて、ドラゴンの巣穴が確認されました」

「な」

「まじか」

「それホント?」

「はい、ゴールド級冒険者の報告のため、信憑性は高いと思います」


 ミルティアの告げた事実に、俺達3人は思わず言葉を失ってしまった。

 それは……深刻な顔をするわけだ。

 

 ドラゴン。

 

 それはモンスターの中でも最上位に位置するもはや天災とも呼べる代物。

 

 その生態はほとんど明らかになっておらず、とにかく強い、という認識だけが存在するといってもいい。

 一部のドラゴンは何故か金銀財宝を求める傾向にあるようで、そういったドラゴンの巣が街の近くに出来たとなれば大事件だ。

 街の滅ぼされたくなければ貢物をしろ、と脅迫されたという話を聞いたこともあるし、そういった回りくどいことはせずに直接破壊しつくし略奪したという話すら聞いたことがある。

 討伐はほぼ不可能、と言っても過言ではない。

 一度、銀翼の隼時代にドラゴン討伐の依頼を受け向かった事があるが、討伐までは至らず追い払うのが精一杯だった。

 まさに、天災。

 

 そのドラゴンが、カーネリアにほど近いグワース山に巣を作った、というのか。


「現在、対策を検討する為に領主代行様を含め、主要メンバーが冒険者ギルドに集合しています。ミスリル級であるお三方にも是非ご参加頂きたいのです」


 参ったな。

 これは予想以上の問題だ。

 もはや冒険者ではない、などと言っていられる状況でもないことは理解できた。

 とはいえ……ただの冒険者にできる事もそう多くはない。

 果たして俺達が参加したところで何かできることはあるのだろうか。

 

「リカ……領主代行様ってのはどう言ってんだ?」

「銀翼の隼の事は勿論ご存じです。一度でもドラゴンと対峙したことのある方の意見は重要だと、おっしゃっておりました」


 ギルの質問に答えるミルティア。

 ……そうか、リカルドが呼んでいる、のか。

 ドラゴンの強さは人の手でどうにかなるものでは無いということはリカルド本人こそ良く理解しているはずだ。

 それでも俺達を呼びつけるということは、何か考えがあるのかもしれない。

 

「……分かった、行こう。ギルとアリアはどうする」

「てめぇが行くってんなら俺も行くぜ」

「アタシも行く。状況だけでも把握しておきたいもん」

「ありがとうございます。早速ですが向かいましょう」


 それにしても厄介な事になった。

 まさかドラゴンとはな……。

 思わずグワース山のある方角へと視線を向ければ、他の3人もそちらへと視線を向けていた。

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