15
数時間は経ったのではないか?長い…それしか感想が出てこない。この女、本当に寿命ドンドン削れてるの理解してないのか?
「なぁ、俺さ実は病み上がりなのよ。なのにその1発目の仕事これって…。早くしてくれない?ちょっと疲れた」
「煩い!だって寿命よ!そんなの奪われるなんて…」
「いやさ、この仕事してて初めてだよ?ここまで決断するの長い人。なんやかんやで、寿命削れるよ?って言うと即契約するか、自力でどうにかするか選ぶぞ?」
「自力でどうにかできるの?」
「契約しなきゃ、俺は助けないからそりゃご本人がどうにかする事になるって」
「勝てるの?」
「んー、今まで見た事ないかな。その後見てるけど、死んでるな全員」
「見てるなら助けなさいよ!」
「だーかーら、契約したら助けるってんだろがい!何回言わすんじゃ、馬鹿やろう」
もーっと叫びながらまた癇癪を起こしてる。これ、永遠にループしない?大丈夫?試しに縛り解こうかな。俺は糸を消した。
「クルシイヨ」
わぁ、真っ直ぐに向かって行く…。俺の事は完全に無視だ。少し悲しいよ、なんて。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと!なんで、動けてんのよ!」
「そりゃ、俺が縛ってたのを解放したから」
「はぁ!なんでよ!?」
そんな怒鳴られてもなぁ…。
「命の危機の方が選択しやすいかと?」
「かと?じゃないわよ!この鬼!悪魔!人殺し!」
「…たしかに、なんかやってること悪魔に似てる?うわぁ、嫌だ。変なことに気がついちゃったよ、ショック」
落ち込んでいると、悪霊がドンドン彼女に迫ってる。
「なぁ、こっちに暴言吐くのもいいけど、逃げな?死ぬぜ」
「え?」
彼女は迫ってる事に気がつくと逃げた。なので、追走する。
「さぁさぁ、どこまで体力が保つか。ところで契約する気になった?」
「そんなの考えてる暇ないわよ!」
「ナンデ〜クルシイヨ〜」
変な追いかけっこをしつつも全然答えを出そうとしない。もう、見捨てようかな。付き合ってられない。
「そっか、じゃ、俺行くね?サヨナラ」
「え?ちょっと待ってよ!なんで!助けてよ!」
「いや、長いし。腹減ってきたし。答え永遠に出なさそうだし」
「そ、そうだ!ご飯奢るわ!」
目の前に札束を見せる。すると目を見開き驚いていた。
「お金ならあるので、それじゃ」
「待って…」
「クルシイヨ〜ナンデ〜」
「いや、いやいやいやいやいや…誰かー!」
振り返ると、捕まっていた。こちらに手を伸ばしてる。顔は絶望し、体がドンドン悪霊に飲み込まれてる。ああ、吸収されんだなと思いながら、見ていると彼女の声が微かに聞こえた。
「します」
糸を伸ばして彼女を引っ張り出す。これで勘違いなら、またあの幽霊に投げ返せばいいだけだ。
「しますって聞こえたけど、契約すんの?」
「…します、助けて。お願い」
「早くすれば…まったく長いんだよ…」
そう言って彼女を地面に下ろし、悪霊に対峙する。
「なんか、恨みとか色々あるみたいだけどすまんね、諦めて消滅してくれ」
「クルシイヨ〜」
糸を巻き付けそのまま引き、バラバラにする。こんなあっさりな仕事にどんだけの時間を…。
「さて、終わったよ。なので血を少し貰うね」
「え?寿命じゃ?」
「相手の体液なの、収集方法が。ちょっとチクッとするよ」
そう言って、血を採取した。
「これで、寿命が減ったのね…」
「まぁね。そういえば、他にもあの悪霊の子虐めてた!って言ってたけど。その他の子は平気なの?」
「知らないわよ」
「えー、薄情な」
「かなりの人数で虐めてたもの、先生だって黙認してたわ!なのになんで私が…」
「…まぁ、今度からはそんな事しないように。そろそろ現実世界に戻る時間だから、サヨナラ〜」
何か、言おうとした彼女は消えた。現実世界に戻ったのだ。さてさて、俺は。
悪霊の子の制服を見て、その学校に来てしまった、俺。なんとなく気になるんだよね、しかもこんな時の勘は当たる。校門を通り、校舎内に入った。普通の子なら、肝試しって感じだよな。ブラブラしてると、居た…。さっき消滅させた子である。
「ナンデ?ミンナイジメルノ?モウ、ツライヨ」
俺がさっき倒したのは、コノ分身だ。よくあるケースだ。死んだ子がその場所に魂が残って、
念を飛ばして別の場所に自分の分身を〜なんて話は。こうなると、元を叩かないと意味がない。恨み、悲しみ、絶望などが強く残った時に多く見られる現象だ。
「虐めって言ってたからな、心配して来たらドンピシャ」
「ダレ?」
話せる理性は残ってるのか。
「どうも、分身の方とは会いましたがこちらの本体には初めまして、俺は夜夜刺と言います。まぁ、簡単に言っちゃうと幽霊とかそんなのを退治しちゃうぞ!的な仕事してます」
「シンダ…ワタシヲ、タイジニ?」
「まぁね、気がついてるか知らんけど、おたくね自分の恨みの念を飛ばして、虐めてた人を襲ってたんだよ?さっきその分身倒しちゃったけど、俺」
「ソウデスカ…」
「沢山あるだろうけど、一応聞くね?思い残す事は?」
そう聞くと彼女は悲しそうな顔で。
「…ナンデ、ワタシ、シンジャッタンダロ。モウスコシ、ガンバレバヨカッタ。ソウオモイマセンカ?」
と言われたので、俺は。
「…そうだね、来世に幸せがあるよきっと」
そう言って彼女にカプセルを投げ、封じた。こんな時、俺は何を言えばいいかわからない。だから、毎回こんな簡素な言葉を言ってしまう。それでも、未練がないか一応聞くのだ。もしかしたら叶えられるかもしれないと思って。成功した事ないけど…。彼女を封じたカプセルを見ながら、ため息を吐いた。
「こんなもんだよな、所詮俺は」
腹が減った〜腹が減った〜、切ない気持ちでも腹は減る〜。こんな日には焼肉屋で豪勢に食事だ!
「ギャー!」
ん?なんだ、今の叫び声は。叫び声の方へ行くと、なんか…倒れてる人いるんだけど。しかも…死んでる?その人は背中がバッサリと斬られてた。
「契約してねぇよ!する暇な!てか、通り魔?これはなんだよ!」
そう叫んでると、死体は消えた。チッ、現実に消えたか。調査しなきゃな…。飯が遠いぜ。