13
悪魔は人間に憑依して自我を乗っ取り、その人の人生を破滅させたり。取り憑きそのまま生気を奪い、魂をあの世の地獄へ持っていく奴等がいる。他にも、人間の願いを叶え契約として数年後などに時間差で、魂を貰うという悪魔もいる。
どのみちコイツらが持ってく場所は地獄。魂は嗜好品らしく、地獄で生きていたら間違いなく耐えれない拷問などをしているという噂だ。そして、当たり前だがそこら辺にいるような霊なんて比較にならないクラスに、強い。
そんな悪魔が目の前に居る。目が黒く、青色の肌、口元は少し尖った歯が見える。耳は尖り、何より捻れた角が2本頭から生えてる。尻尾も生えており、足が獣なのはこいつ特有なのか?
「まさか、悪魔が憑いてるなんてな。予想外だ。こんなんあの蠱毒でも、無理だったろ」
「どうするの?夜ちゃん」
「決まってる、倒す!」
そう言って俺は霊糸を何十本も女悪魔に飛ばした。初悪魔の討伐だが、やる事は変わらねぇ。強いっても、油断しなきゃ…。
「本当、邪魔よねぇ」
そんな声が直ぐ隣で聞こえ、なっ!と側に居た事に気付くと、次の瞬間に俺は吹き飛ばされてた…。クソ腹イテェな。
「ガハ、ガハッ。ちっ、このやろう…。まだまだぁ!」
突っ込んで行き殴る蹴るを繰り返すが、余裕で躱される。クソ、当たる気しねぇぞ!
「風見!霊体回収して空間から出とけ!」
「夜ちゃんは!?」
「俺はこい…」
ドゴォ!
「グォ…。ゲボォォ。ハァハァ」
キツ!?1発が重い!
「こいつって言いたいの?」
ドス!
「ガァァァァ!」
踏み付けの威力が洒落になってねぇ!この馬鹿力がぁ!体勢を…。
「夜ちゃん!」
風見の馬鹿!叫んでる暇あるなら、サッサと逃げろや。やべ!踏み付けがまた…。
ドス!ドス!ドス!ドス!ドス!ドス………。
「こいつを倒す、とか言いたかったのかしら?動かないけど…アハハハハ!」
シュルシュルシュルシュル……。
「ん?何?この糸?」
「す…すき…あ…り」
俺は踏み付けられながらも、ずっと出していた糸で女悪魔をグルグル巻きにした。
「そ…そと…に…で…やが…れ」
俺がなんとかそう言うと、風見はやっと別空間から出た。
「フーン、意味の無い事するわね」
ブチブチブチブチと音がして、女悪魔は普通に糸から抜け出してた。まぁ、そりゃそうか。あんだけの馬鹿力だもんな。
「…に…にが…す…なん…て…やさし…じゃ…ん」
俺がフラフラになりながら気合いで、立ち上がりそう言うと、何言ってんの?と言う顔していた。
「別に逃げられてないわよ、貴方をサッサとと殺して側に居たもう1匹も殺す。その後またじっくりと魂を取ればいい。ほらね?問題はないわよ」
マジで言ってんのがムカつくが、現実問題できるからな。この悪魔。
「ハァ、ハァ、ハァ…フゥー。おい、ケホ、お前は、なんで、あの人に、ハァハァ、取り憑いた」
「理由なんて無いわよ」
「クソ悪魔め、少しは人の迷惑考えやがれ」
「そうね〜、なんか悪魔悪魔言われるのもなんか嫌ね。知ってる?悪魔にも名前は有るのよ?」
「んなもん、知ってる」
「貴方が死ぬ前に私の名前、教えてあげる。私はメアよ。貴方達がよく悪い夢の事を、ナイトメアとか言うでしょ?その根源の悪魔が私。夢魔とも言われるのよ。さぁ、どう?勝てるかしら?フフ」
悪魔の中でもゴロツキじゃねぇのかよ…。上級じゃねぇか?通りでクソ強いよな!ハズレもハズレの、祓い仕事だ。どうすりゃ良い。
最初に戦った悪魔がこんな大物とか、笑う。
「あれ?黙りなの?そうだ、貴方も名乗りなさいよ。死ぬ前に名前くらい聞いてあげるわよ?」
気合入れろ!俺ぇ!もう少し動けぇ!
「夜夜刺だ。言っとくがお前に殺されるなんて、まだ決まってねぇぞ!俺がお前を殺すかもなぁ!」
そう言って、糸の鞭を繰り出す。
「夜夜刺ねぇ…」
チッ、片手で止めやがった。
「この馬鹿力が!くらえや!」
糸で作った巨大な拳、物量で押しまくってやる!
ドドドドドドドド…………。
その後、巨大拳を何発もぶち込んでやったがどうなった?流石に、少しは。
「うーん、夜夜刺ねぇ」
「な…」
女悪魔メアは片手を突き出したままの状態で、無傷だ。ここまで差があるのかよ。あんだけぶち込んでんだぞ?
絶望して、もう手がない。マジで殺されると思った時。変な事を言われた。
「ねぇ?貴方、私と会った事ないかしら?」
「…はぁ?」
何を言ってんだ?なんかの作戦か?
「夜夜刺ってなんか聞いた事ある名前なのよね…。気になってしょうがないわ」
「知るか」
首に糸を這わせ巻き付け、思いっきり引っ張る。これで、首が落ちれば…。しかし。
「なんだったかしらね、ウーン気になるわ〜」
びくともしない、むしろ糸が切れる。
「鬱陶しい事しないでくれない?今真剣に考えてるのよ」
「煩え!俺はお前を退治しに来てんだ!辞めるわけにはいかねぇんだよ」
「あぁ、そういえばそうね。でも、貴方じゃ私に勝つのは無理よ。だから、今回は見逃してあげる」
「何?」
「だから、今回は引いてあげるって言ってるのよ。色々気になって、そんな気分でもなくなっちゃったしね」
「テメェ!」
「メアよ、ちゃんと記憶しときなさい。それじゃ、早く手当てしなさいね?また逢いましょう?夜夜刺」
そう言って、目の前からフッと居なくなった。見逃された、本当なら殺されていた。運が良かった、それだけで生きている。チクショウ…。悔しさとなんとも情け無い気持ちでいっぱいになりながら、現実世界に戻った。
「夜ちゃん!生きてたか!でも、スゲェボロボロの血塗れ。早く手当てしなきゃ」
「あぁ」
「夜ちゃん?」
風見の声を聞きながら、意識が遠くなる。しかし、言わなければならない。
「契約は…失敗…だ、悪魔は居なくなったがな。今回は…見逃された。だから…報酬は貰えねぇ…」
「夜ちゃん!?」
俺はそのまま意識が途切れた。