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「さてさて、まだ見つかるかな〜」
グゥ〜、腹が鳴った。そういえば起こされてから何も食べてないな。
「腹減ったなぁ、えっと、今の所持金だと…。コンビニのおにぎりかな。何にしよ、ツナマヨと肉おにぎりと、後は」
一旦休憩しようと、何を食べるか考えていると背後から声をかけられた。
「お前か?俺の霊犬を消したのは?」
振り返ると、鎌を持ちこちらを睨みつけている金髪野郎が立っていた。俺の霊犬?
「たしかに、霊犬は駆除したよ?俺のってどいう事?先にやったもん勝ちだろ」
「アレは瀕死にして、わざと放置していたのだよ。そして、人を襲い食べまくって、狩った時の価値を上げるためにな」
「お前、養殖してたのか。知るかそんなの。むしろ、俺が駆除しようとした時になんで止めなかった?」
「その時偶々他の人が襲われててな、そっちを狩っていた少しの間目を離したら、お前が台無しにしてたというわけだ。まぁいい、価値はそんなに上がらなかったが、それを渡せ」
「は?」
こいつ、何ほざいてんだ?自分のミスで獲物取られただけだろ?それ寄越せとか笑える。
「おいおい、ふざけんな。こん中には俺が契約しようとしたが、断って死んだ奴の寿命分も入ってんだぜ?誰が渡すかよ。てか、養殖とかしてんならちゃんと最後まで見てろよ、集中力ねぇのかお前は」
「渡さないなら、実力行使だが?」
「面倒くせぇ、ウザいなお前。養殖ならまたしろよ、今度はちゃんと目を…」
言葉の途中こちらに向かって、鎌が飛んで来た。ギリギリ気付き回避して、体制を整える。不意打ちかよ。
「随分と卑怯君だな、野蛮人」
「…避けたか」
睨み合い、相手はまた鎌を出してこちらに向かって投げる。成る程、鎌を作ってそれを武器にしてんのか。糸だと斬られそう…。また回避するが、今度は次々と投げつけてくる。
「うわぁ!嫌がらせじゃん、この量!」
糸を使って持ち手の部分に巻き付けて、振り回して近づく。
「鎌、借りるよ〜」
「そんな、霊糸なんぞという基礎技しかできないのか?」
鎌を鎌で叩き落としながら、近づくと相手は大きめの鎌を生成した。
「刈りとってやる」
あちらが、一気に近くに来る。鎌のついた糸で牽制をしたが、普通に斬られた。危ね!間一髪のところで、首を持っていかれそうになった。
「随分と避けるのが上手いな」
「お前が攻撃下手なんだろ?養殖するようなザコだし」
そう言って俺は仕掛けといた糸の罠を引っ張り、発動させる。これで身動きが取れないだろ。
ザパァン!
相手は鎌を一回転して、糸の罠を斬り裂いた…。俺の苦労。
「見え見えの罠だ」
「なら、これはどうだ!」
糸を束ねた鞭、物量勝負!今度は衝撃が強かったらしく、迎え撃った鎌が変な方へ飛んだ。
「隙あり!」
手ぶらになった一瞬、懐に入り思いっきりブローを決めてやる。
「ゴハッ」
まだまだ、ここから。
「はい!アッパー!首蹴り、かかと落とし!寝てんじゃねぇぞ!スタンピング!オラオラ、どうした?まともにやり合ったら、勝てませーんってか?」
「ぐ、ぐっ…」
そろそろ、終わらすか。まぁ、殺しはしないよ。大怪我でオッチャンに面倒見てもらえ!ハッハッハ!
「何してる、水間。なんで、ボロボロにされている」
踏みつけながら、声の方を向くと知らん長髪の人が居た。目が怖い人だな。てか、ここで仲間が来たか…。予想外の事態だな、どうしよう。
「貴方はいつまで水間を踏んでいる?離してくれないかね」
「いやぁ〜、今この人とバトってて。まだ決着ついてないんだよねー」
「何故、戦っていたんだ?」
「こいつの養殖してたモンを俺が駆除したから。でも、こいつ止めなかったし、他の事して放ったらかしにしてたからしょーがなくね?」
渋い顔をした後その男は申し訳なさそうに言った。
「はぁ、済まなかった。おい、水間。何度も言っただろ養殖する時は慎重にしろと、じゃないとこんな風にもめるのだ」
この人は話分かりそうなタイプかも?
「その馬鹿が養殖して、駆除してしまったモノは好きにしてくれ。其奴のミスだからな。手出しはさせないから、もう解放してやってくれ」
そう言われたらもう俺も戦う理由も無いし、足を退けた。
「チ、チクショウ…余計なことを」
「どこが?完全に負けてたでしょ。その現実を見ない性格直せ。あんたには連れが本当に悪かった、それじゃ消えるから。オイ、お前のせいでマイナスが出たんだ。これから稼ぎに行くぞ」
水間という奴はチラッとこちらを見てからもう1人に返事をした。
「あぁ、わかってるよ」
こうして2人は去っていった。なんかサッパリしないな…、なんでだろ?まぁ、それにしても同業者と初めて戦ったかも、なのに勝っちゃった俺って結構強い?そんな事を思いながら俺は、現実世界に戻りコンビニに向かった。