汽車は進むよ何処までも(ムフフ)
「お、おおおおおおおお、お姉様! 今、ななななな、舐めました!?」
クレアが目を見開いて怒っている。
「えっ?」
「シャロンさん! 何をなさってるの? 殿方の手を直接舐めるなんて!」
「えっ? えっ? 大丈夫よ、梅干しには殺菌作用があるの。お弁当に入れておけばそのお弁当は一年ぐらい腐らないわ」
トンデモ情報を軽く言い放つシャロン少尉。
「まあ! 一年も? ……凄いのですね梅干しは」
「うなわけあるかいっ!!」
はぁつ! つい突っ込んでしまった。ででも今シャロン少尉は私の手の平から直接ー、あぁ唇の感触がぁ、そして舌のフワフワがぁ!
「クッ、何を呆けているの豚! お姉さま、ズルイです。……クレアにも梅干しを下さい」
「えっ、でもクレアは梅干しがー」
「はい、だから口に銜えますから、お姉さまが又口でー、ウプシ!」
真弓少尉がクレアの後頭部にチョップを入れた。
「いい加減にしなさいクレア、それにシャロンさん、いつも言ってる様に軽はずみな行動はしないで下さる? そうしないとこの男は使い物にならなくなるわよ」
「ほんなこと無いわよ、梅干しを取ったぐらひで」
「はぁ~、そうじゃないでしょシャロンさん? ほら、顔に書いてあるわ、この手は絶対に一生洗わないぞっ。てね」
な、なにっ! なぜに、クッ、やはり陰陽師。心を読んだか?
「またなんて顔してますの? 別に心なんて読んでないですわよ。あなた正直すぎですわ」
「まーまー真弓ひゃん、そほんなに興奮しひゃいー、ウグ!」
あれ? シャロン少尉の目が寄っている。
「お姉様?」
シャロン少尉が梅干しをしっかりツボに戻すと胸をドンドンと叩き始めた、何か喉に詰まらせたんだ!
「これはー、クレア! 少尉の背中を思いっきり叩け!」
「えっ、えっ、こ、こう?」
それじゃ肩たたきだ、力も弱い。クッ、又動かなくなってる、どうなってるんだ!
「シャロンさん、どうなさったの!? シャロンさん!」
「おじゃ? おじゃ?」
ああっ、顔が真っ青に。二つの胸の膨らみも酸素を求めてプルプルと震えている! このお、動け、動け! 動け―!!
ピキン!
ん? 何かが切れた? いや繋がった音がした直後。
「どけ、クレア!」
「きゃ!」
クレアを突き飛ばしてシャロン少尉を前かがみにさせた、そしてその背中にー。
「ーーセイ!」
掌底を落とす。
「クワハッ!」
少尉の口から二個の梅干しの種が飛び出した。
「ヒュー、ハーッ、ハ―――……。ありがとう宮崎さん、死ぬかと思いました」
涙目のシャロン少尉が胸を押さえお礼を口にした。
「お姉さま!」
「とわっ」
今度はクレアに突き飛ばされた。
「大丈夫なのですか?」
「ええ、もう大丈夫。心配かけたわね皆」
飛んで通路に転がった種を見て。
「もう、種を喉に詰まらせるなんて、まあシャロンさんなら仕方ないですわ」
「おじゃ? おじゃ?」
「ちょっと、どおいう意味?」
ハハ、一人だけ何が起きたのか分かってないな。でも良かった、動くようになっ、あ、あれ?
「何をやってますの宮崎二飛曹、逆さまになってないで、ちゃんと座席に座りなさい」
「私もそうしたいのですが……、動かなくて」
「あ、ごめんなさい」
少尉が私を見ると又勝手に動き出して、ちゃんと座席に座った。どうなってんだ?




