秘密
サンダース大佐から指定されたのは町外れの食堂だった、本当はレストランみたいな洒落た場所にしたかったんだろうがあいにく近くの町にはそんな所は無い。
私達は四つある四人がけのテーブル席の一つに座る、後はカウンターの席が六つほどある小さな食堂だ。
「なんで子ー、宮崎が付いてきてるのよ! この、この」
「だから足を蹴るな! クレア、今お前子豚って言いそうになっただろ」
店内は二時過ぎと言う時間なのでガラガラと言いたいが、黒服にサングラスを掛けたいやにガタイが良い外国人が埋め尽くしていた。
注文を取りに来た店主は面白いほど混乱していた。
「さっきも言ったでしょ、宮崎さんには無理を言って付いてきてもらったの」
「それにしても入って良かったのかなぁ、もう遅いけど」
「何よ、パパがクレアやお姉様に何かするって言いたいの!?」
「い、いや、でもほら、周りを見ろよ」
私がそう言うとクレアも反論できないのかグッ、と言って黙ってしまった。そこへー。
「お待たせしましたー、カツ丼と餃子はー」
「はい、私です」
「中華丼はー」
「クレアよ」
「じゃあサバの味噌煮定食梅干してんこ盛りはこちらですね」
「はい」
「宮崎、また凄い脂っこいものばかり、それ以上肥ってどうするの?」
「いいんだよ、私は定食やに入ったらカツ丼と餃子って決めてるんだから」
「た、大変よクレア、宮崎さん!」
見るとシャロンは箸を持ったままプルプルと震えていた。
「お姉様?」
「少尉、サンダースさんですか!?」
私は立ち上がり周りを見渡す、周囲の男達に紛れていたのか?
「いいえ、ここの梅干しあんまり美味しくないの。いえ、全くのダメダメだわ」
「しょ、少尉・・・・・・」
「あ、やっぱり」
「ここは梅干しの伝道師でもある私、シャロン梅干しマスターの出番かな!?」
グッと力を込めて箸を握るシャロン。伝道師? マスター?
その時、カーボーイの如く颯爽と扉を開けてサンダースさんが入って来た。
「やぁーー! 待たせたねみんな、時間も無いことだし早速出発しよう。おや、君はたしかー、子ー」
「子豚じゃありません、宮崎二飛曹です」
「あー、そうそう、で、そのー、君はなぜここに?」
この野郎、覚える気ねえな。