飛べない子豚を飛ばしてみよう? その二
シャロン少尉がいきなり声を掛けてきた。
「待って真弓さん、私に宮崎さんのことを先にやらせてほしいの」
真弓少尉の目がスッ、と薄くなる。
「シャロンさん、それはシャロンさんも宮崎さんのことを?」
「違うの! 真弓さんほら、だってまだ私の式神がー」
慌てて否定したシャロン少尉が私を見る、いや、私の後ろにへばり付いている式神を見た。
「ああ、まだシャロンさんの式神が憑いてましたわね」
そう、まだ私の背中には式神が憑いているのだ。
「ええ、ずっと外そうとしているのですけど・・・・・・、なぜか外せなくて」
「シャロン少尉、無理しなくてもいいですよ?」
私がそう言うと少尉は驚いて。
「えっ! で、でもいろいろ邪魔ではないのですか?」
「いえ、さすがに四日も一緒に暮らすと慣れてきて、トイレの時はちゃんと離れてくれるし風呂の時も背中を流してくれるんですよ。勝手にですけど名前も付けました、式神の式ちゃんです」
又々驚く少尉。
「式ちゃん? ええっ! そんな、そんな命令してないのに。・・・・・・あり得るとしたら宮崎さん、あなたも陰陽師ー」
「ハッ、あり得ません! こんな子豚が、それも男が!」
「クレア、わたくしの旦那様をブタ呼ばわりは許しません! だけど男性が術を使うなんて-」
えっ、術? 陰陽師? 何を言ってるんだ。
「術だなんて私はただ気心が知れてきたと言うか、友達になれた? みたいなー」
「おじゃ! 友達!?」
今度は麻耶少尉が食い付いたー。
「気心が知れる? 友達? 式神と? 有り得ないわ。私達が何年ー、たった四日で」
「さ、流石はわたくしが見込んだ旦那様ですわ」
「嘘よ! 絶対嘘、男が術を使うなんてー、あなた本当は女なんでしょ!」
無茶苦茶言うなクレアは。
パンパンパーーン!
また隊長が天井を撃った。隊長、屋根の修理も大変なんですよ。
「はーい、そこまでです。では命令です、最初はシャロンさんにお願いしますね。合わせて数日間は身辺整理です、身の回りを整えて下さいね」
「は、はい、了解しました。敬礼!」
ザッ! と姿勢を正し、みんなで完璧な敬礼をしたことは言うまでも無い。
私達は隊長室を出た。
「お嬢様、加山様、土御門様こちらへ。申し訳ございませんがクレア様と宮崎様は後ほどご案内致します」
「えーっ、クレアはお姉様と一緒がー」
「クレアさん、あなたはオマケで付いてきたのですからお部屋があるだけましですわ。それでは宮崎様、参りましょう」
真弓少尉が右腕に胸を押しつけてきた! えっ、いいの? これ触っちゃってもいいのぉ!!
「お嬢様、それはー、あまり。宮崎様もお困りです。ね? 宮崎さ、ま」
うおわっ! い、今背中にツララを突き刺されたようなー。加藤さん! 何ですかぁその目はぁ。
「加藤そんな、宮崎様? お顔が真っ青ですわ」
「も、申し訳ありません、私は下士官ですから士官と一緒にはー」
分かって下さい、私の命が掛かってます! 多分。
「仕方ないですわね。でもいづれは同じ部屋で、同じー……キャ♡」
その後加藤さんが普通の隊舎に案内してくれた。