それぞれの能力 その二
隊長がパンパン、と手を叩く。
「はいはい~、宮崎君のことは後にして次は笹船真弓少尉前へ、お願いね~」
まだ何か言いたそうなシャロン少尉が下がるとー、笹船? 真弓少尉の苗字は珍しいなぁ。
「わたくしは笹船真弓、同じく陰陽特務少尉ですわ。得意な術はこれです」
笹船少尉が振り上げた両腕を左右に開くと頭上に五本のオレンジ色に光る抜身の刀が現れた。
「おおっ、すげぇ。まるで燃えてるみたいだ」
「ウフ、ありがとうございます宮崎様。でもわたくしの術はまだまだこれからでしてよ? わたくしが命ずれば標的をどこまでも追いかけて必ず貫きますの、フフッ、それに出そうと思えば百本ぐらい余裕で出せますの! こうー」
えっ、 ここでやっちゃう? 暴走状態の笹船少尉が大きな胸をーじゃなかった両手を振り回す。
「あー! やんなくていいわよ~。ここでやったら大参事だから~。ねっ」
「あ……、そうですわね」
部屋全体が輝きだしていたが、寸前の所で隊長が止めてくれた。
「宮崎様、今度ゆっくり二人だけの時にお見せいたしますわね」
ウフ、てえ感じに私にウインクする。
「え、ええ、また今度お願いします……」
また隊長が手を叩いてー。
「はーい、次は土御門ちゃんね~」
「おじゃ……、どうしてもでおじゃるか?」
麻耶少尉がパチン、と扇子を閉じたので口元が初めて見えたー、うわ、すげえ。すげえとしか言いようが無い、色白の肌に赤い唇・・・・・・半分が仮面で隠れているのに、見とれてしまう。
「はい、どうしても」
麻耶少尉の名は土御門というのか。気が進まないのか諦めた様にゆっくりと前に出る。
「まろは土御門麻耶でおじゃる。得意な術は探知系でおじゃる、探知する物が高価な物ならば半径百キロ以内で見つけるでおじゃる。お宝ならば例え異次元に隠されていても見つけるでおじゃる」
目と鼻を隠す銀の仮面がキラリと光り口の端が少し上がる。
「フムフム、なるほどそうね、零観隊としては土御門さんの能力が一番使えそうかもねぇ」
隊長は腕を組んでウンウンと頷く。
「隊長、私も探知の術は使えます。ただー……、範囲が狭くて麻耶さんの様に異次元に隠された物までは無理ですが」
「あら、そうなの? だったら笹船さんもー」
笹船真弓少尉は両手を握りしめ床を睨みながらー。
「すみません……、私は探知系の術はー……。で、でも式神を操れますわ!」
「ププー、シャロンお姉様の足元にも及ばないんですけどね」
「クレア! 止めなさい」
あぁやっぱ一言多いなぁこいつ、すんごい顔で睨まれてるけどクレアは知らんぷりだ。
「へへ、ごめんなさーい」
「あ、そうそう、クレアちゃんも陰陽師だったのよね? なにかできるの?」
クレアは待ってましたとばかりに前に出て、麻耶少尉の横に並ぶと。
「クレアは、クレア・サンダース陰陽兵長です! 得意技はーいえ、術は相手の目を見てその物を操ることです。まだ修行中の身ですのでそんなに長くは続けられませんが……」
「だったらさっさと学校に戻って修行の続きをすることですわ!」
お返しとばかり真弓少尉が声を上げた。
「クッ、クレアはシャロンお姉さまの従卒です! 従卒はいついかなる時も離れてはならないのです!」
「人を操って無理やり付いて来たくせに、何を言ってますの!」
「何をいってると聞くのはこっちの方です! クレアはちゃんと操っていない人事課のー」
パァー-ーーーン!
隊長が天井に向けで拳銃を撃った。あ、相変わらずだな……。
「二人とも~、静かにしてくれるかな~?♡」
「「ヒッ! は、はいっ」」