布告者の運命(1)
テヘラン方面軍がすべて前線にたどり着いたころ、カフカス山脈では、トルコ軍とソビエト軍が戦闘を行っていた。作戦名は「クルセーダー(ロシア語名「крестоносец」)」。名目はクルド人自治区の開放。ソビエト独自の作戦であり、先日の包囲殲滅作戦の時に一緒に可決された。
作戦内容として、初めにクルド人自治区を包囲するように空挺降下、そこにトルコ軍がいれば、殲滅し、一時的に占領する、そこを起点にし、トルコ制圧、アラビア半島の制圧の橋頭保を確保するための作戦である。
結論から言うと、作戦は大成功だった。こちらにも多少の損害はあったものの、そこにいたトルコの守備部隊を壊滅させた。数週間たったころにはイラク、ヨルダン、イスラエルのあたりを全て制圧し、ペルシャを包囲することができた。ペルシャが疲弊しきっている中、この包囲作戦はどんな効力を発揮するのか、それは誰にも分らない。ペルシャ軍幹部以外には...
そしてその作戦が遂行される前、総司令部内では、こんな議論が出ていた。
「核兵器を使うか否か」
議場は荒れに荒れた。各爆撃に賛成なソビエトらに対し、反対の中華らとの言い合いで、話は平行線を辿る。と、そこに「Calm down once!(一度落ち着け!)」と、声が響く。声の主は、日本人将校、山極だった。そして、静まり返った議場の中で、ぽつぽつと、語りだす...
「私情を挟むが、私の祖母は被爆者だった。そしてな、数十年前に、なくなったんだ。
俺のばあちゃんはいろんなことを教えてくれた。原爆の恐ろしさとか、町の惨状とかを。それを聞いていてな、
「なんでこんな思いをさせなくちゃいけなかったんだ」って、思うようになってた。
言葉はおかしいかもしれないが、だから、祖母みたいな思いをする人が増えてほしくない。俺はそう思ったんだ。」
話す途中、山極の頬には涙が伝っていた...
彼の涙の演説は各国士官の心を動かし、テヘラン、アブダビなどへのミサイル攻撃案は、否決された。
この後の会議では、テヘランへの侵攻作戦、トルコ方面軍の編成などの話し合いがされた。
この戦争、世界にとってどのような意味を成すのだろうか...




