今戦闘ハ敵艦隊ノ半壊滅ニテ終了サレタシ
古尾谷一尉を救助隊から一本の無線が入る。
〈古尾谷一尉の生存確認!これより救出します!〉
"紀伊"のCICに歓声が上がる。
「ところで、敵パイロットは?」
君津が聞く。しかし、
〈確認できていません。おそらく、波に飲まれたかと...〉
ペルシャ軍パイロットの生存は確認できなかった...
君津が何か考えた表情をしてから、
「佐久間...この状況で、敵艦隊を無力化させるなら...どうする?もちろん、撃沈も視野に入れている。」
君津が聞く。佐久間は少し考えてから、
「潜水艦を先行させて巡洋艦を沈める。それと並行して、先の佐久間と橿原に空母の無力化を図らせる。イージス、フリゲート艦は後だ。」
その話を聞いてから、君津は少し考えて...
「"紀伊"CICより"松01"無謀かもしれんが、敵後方にいる巡洋艦直下に回って、26式艦対艦誘導ミサイルにて駆動部の破壊、若しくは撃沈を狙え。」
≪こちら松01、了解。≫
「"紀伊"より"佐久間""橿原"へ、目標空母甲板、SSM使用で空母の無力化を狙え。」
≪こちら"佐久間"了解。≫
≪こちら"橿原"了解。≫
「さあ、殲滅戦だ。」
君津は少し微笑して、言った。
"佐久間""橿原"はすでに戦闘態勢に入っていた。
「敵空母、速力20ノット、距離30マイル!」
射撃管制、勝木が声を上げる。その報告に
「行けっ!」
河津が声を上げる。
「空母情報、入力完了!」
「ってー!」
二艦の前方甲板キャニスターから各艦二発、計四発のSSMが発射される。それは蒼白く、かつ、どこまでも紅い炎を上げ乍ら、闇夜に残影を残し、放物線を描く。四発の内の一発が落とされたが、ほか三発が甲板後部、エレベーター付近や、前方、VLS付近に着弾し、ドォォォン...と爆音が上がる。甲板は捲れ上がり、VLS内に装填されていたミサイルに誘爆し、艦前方に大穴が空き、少し艦が斜めになる。
ズズズ...と水面の下に吸い込まれていく空母、直後エンジンが大きく炎上、爆発した。
沈みゆくペルシャ海軍空母の中ではこんな会話が繰り広げられていた...
(本来ペルシャ語ですが面倒なので英語にします)
「From"Hubil"to"Alltat"Al-Uzza"Manat"alkhatum"hawt qatal"You guys go back to your port!
Leave us alone!("フバル"から"アラット"アル・ウッザー"アクハトゥム"ホート・カタル"へ、お前らは自分の港に帰れ!俺らのことは放っておけ!)」
「Adman ...(アドマン中佐...)」
そうアンタールは口を開ける。
「Antal, gather all the crew on the rear deck.Also, do you have a white tablecloth and a long stick?(アンタール、乗組員全員を後方甲板に集結させろ。あと、白いテーブルクロスと長い棒はあるか?)」
「commander...(司令官...)」
アンタールが少し俯く。
「Hey! hurry up!(おい!急げ!)」
アドマンが怒鳴りつける。一瞬体を跳ね上げたアンタールはマイクに顔を近づけ、
「Tell all crew. Abandon all duties and concentrate on the rear deck.(全搭乗員に告ぐ。全職務を放棄し、後部甲板に集合しろ!)」
「Really ... was this okay?(本当に...これでよかったんですか?)」
アンタールの質問に、アドマンは目を閉じて頷く。
そして...後部甲板に集められたクルーにアンタールが投降する旨を伝え、アドマンは物干し竿に折りたたんだテーブルクロスを結び付け、即席「降伏の白旗」を作り、艦橋最上部で振るのだった...
≪ラズヴェ01より、紀伊CIC、敵空母から、「これ以上の交戦の意は無い」とのことです。≫
「やっとか...」
そう君津は零して、
「全艦に通達、敵空母の乗組員の救助活動を開始せよ。捕虜にした場合の扱いは、もちろん、戦時国際法に則って扱え。各印、万一に備え、ハンドガンでの武装を推奨する。」
二十四時間に及ぶ死闘の末、潜水艦とイージス、巡洋艦こそ逃したものの、敵空母の投降、駆逐艦二隻の撃沈という大きな戦果を手にしたのだ。
そしてその水面下では強襲揚陸作戦が実行されつつあった...




