争奪戦最終日
激動の部活勧誘も、いよいよ今日が最終日。結局
あれからも勧誘され続け、その度に生徒会の世話になった。
今日は本当に何もない。来週から始まる授業の諸注意と部活動に関する校則の最終確認だけだ。
何一つ滞ることなく、一日の課業が終わった。
「アルバート、ちょっといいか?」
また、先生に呼び止められた。だが、今日は何か雰囲気が違う。
「部活動は決まったか?」
そう言いながら、先生は隣の席に座った。これは、何かある。
「というか、入るつもりはないです」
「創る気はないか?」
「創る?どんな部活をですか?」
「工学部だ。俺が顧問をする」
おそらく、古代技術の方だ。
「確か五人で創部できるんですよね?五人もいますか?」
「声はかけた。リーエルはお前が入れば入るし、ナッカもそうだ。クルシュ、ライノはリーエルがいるなら間違いなく入る。隣のクラスも多分そうだ。お前が入れば全て解決する」
「興味はあるんですが……」
学業優先という理由で生徒会を断るつもりだったから、部活動に入るとなると断る理由がなくなる。
「ここだけの話だが、実銃も触らせてやれるぞ?」
すぐに入部を決めた。生徒会よりも実銃に決まっている。
「入ります」
「よし、お前が部長、副部長はリーエルでいいな?」
「はい」
その返事よりも早く、先生は動き始めていた。
話も終わり、帰り道。
やはり、最終日の戦いは熾烈を極めている。五日目ともなると、めぼしい生徒の獲得はひと段落している。そのため、今は数集めの戦いだろう。俺の周りの人数も、今日がピークだ。
「だから、もう決まったって言ってるでしょう」
「兼部でもいいから、入ってくれよ」
そろそろ、あの先輩が助けてくれるだろう。そう思っていると案の定、銀の頭が見えた。
そして、いつも通り輪の中心からつまみ出される。
「何度もありがとうございます」
「ねえ、そろそろ生徒会に入る気になった?」
悪戯っぽいトーンで聞いてきた。
「委員長と部長の掛け持ちで大変なので、生徒会は……」
その言葉を聞いて、彼女はなぜか少し嬉しそうだ。
「アルバート君、委員長になったんだ。そのまま勢いで委員会に入ろうとは思わない?」
「俺を忙殺する気ですか?」
「うそうそ、冗談だよ」
「まあ、この借りは返したいので、何かしらの手伝い事ならいつでも呼んでください」
俺の目を見て、彼女は笑う。
「私はレーナ・シーザー。よろしくね」
改めてどうしたんだろうか。そういえば、名前は知らなかった。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
その時、彼女から、凍えるような冷たさを感じた。