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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
試験編
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即発


 一夜明け、教室。張り詰めた空気が漂う。今まで遊び続けた連中が、ここに来て危機感を感じているのだ。

「空気、重いですね」

リーエルが苦笑を浮かべながら耳打ちした。

「自業自得だろ」

「今までの行いを見ていたら、仕方ないですよね」

そんなやりとりをしながら、俺とリーエルはいつも通り内職に励んでいた。


 と言うのも、次なる魔道具の政策に向けた案を考えなければならないのだ。前回の火力推進式の飛行具とは毛色を変えて、マゼラティクスらしく戦闘に特化した何かを作ろうと考えている。


 王都に位置するこの学園では、戦争の影響を受けないが、国境付近では今も戦闘が行われている。

 今ある魔導武器は殆どが杖である。その理由はこの国が魔法は神聖なものであると考えているからだ。

 馬鹿馬鹿しいにも程がある。


しかし、テスト期間にも関わらず俺達がこんなことをしていれば、当然よく思わない連中も現れてくる。


放課後、大抵の生徒は設備の整った学校でテスト勉強をするため、教室には生徒が勉強を教えあっている。

「鬱陶しいんだよ」

俺達と同じ工学部、クルシュが絡まれていた。あの一件以来、小馬鹿にされていることが多々あったが、こうして突っかかられるのは今回が初めてだ。


「なんだ?その目はよぉ?」

そこそこ強い連中がたかっているため、クルシュにはどうしようもない。


場所を変える生徒もちらほら。

「アルバート君……」

俺も続こうとしていたところに、リーエル。

「リーエル、障壁で小細工はできるか?」

俺の問いに、リーエルが頷く。

「よし。なら、曲がったストローで、伝わるか?」

「はい。あなたの考え、わかりました」

「なら頼む」

リーエルが詠唱を始める。他の生徒らは俺達が何をしようとしているのかを察したのか、顔を伏せて耳を覆った。



リーエルが最後の一節の詠唱を終えると、歪な形の障壁が現れる。それは生徒の間を縫って、絡む三人へと伸びた。

「っ!」

開いた口から一息、炎を打ち込んだ。障壁内をうねりながら進んだ炎は、やがて反対側の口から解き放たれ、絡む三人を吹き飛ばす。


一瞬の出来事に、三人は何が起こったか理解しきれていなかった。

「おい!誰がやった!」

魔法ということだけは理解し、教室にいた奴らを睨む。


ここからが本番、収集をつけるまでが俺達の仕事だ。

「馬鹿は黙って勉強してろ」

「ふざけてんのか?」

一、注意をこちらに向ける、

「そう思うか?」

「調子乗りやがって」

二、怒りをこちらに向ける


 リーエルに視線をやると頷いたので、迷わず開戦の火蓋を切った。

「こいよ」

「雷よ!」

迫る雷は、俺が突きつけた掌に触れた瞬間、轟音を立て、その姿を煙へと変えた。

「なっ、消えた?」

「消したんだよ」


 ジークに負けてから、試行錯誤を繰り返して完成させた擬似障壁。俺に複数の魔力は無いが、出力に関してはジークにも引けを取らない。そして、出力と火柱の大きさは反比例する。そこから考えたのが、手を纏う最高出力の炎で、相手の魔法を真っ向から打ち消す方法だった。

 パクリでもなんでもいい。勝てば正義なのだ。


 そして、これを習得する過程での副産物は、障壁破壊だった。近距離なら威力の減衰はなく、こいつら程度の障壁なら、簡単に打ち破れる。

 魔法を封じてしまえば、こいつらの優位は失われる。


「お前、こんなことしてタダで済むと思ってんのか?」

一人の男が目を剥いて怒鳴り上げる。

「ああ、お前の親、教育省の偉いやつだったな」

「そうだ、お前一人の進退なんてどうにでもなる」

それを聞いて、思わず笑いがこみ上げる。


「アリシアは魔法省の管轄、見当違いもいいところだな。 この学園での不祥事は魔法省にも一応は話が行くし、新設の魔法工学科なんかの話は特にだ。この件が明るみになったら、どうなるんだろうな」

「脅しか!お前こそ、攻撃魔法の仕様だろ!」

「言っただろ?ここはアリシアだって」

この国の法律では、公の場での攻撃魔法の仕様を原則禁じている。

 しかし、アリシア含む上級魔法学校の校則は王国の法と等価とされ、基本的には校則が優先される。アリシアが魔法省の管轄である理由はそこにある。

 つまり、余程のことがない限り国の方は適用されないのだ。


「暴力行為で退学だ」

なおも引かずに食い下がる三人を、教室の全員が蔑んだ目で見ていた。

「もういい、勝手にしろ」

三人は笑みを浮かべて、帰って行った。

「ご愁傷様です」

それを見たリーエルは、笑いながら言った。


 しばらくして、異変に気付いたのか、レーナ先輩がやってきた。なぜ嬉しそうなのか。

「アルバート君、またやらかしたの?」

「まあ、見ての通り」

示した先、教室の一角が僅かに焦げ付いていた。

「けど、特に何もないんで、もう大丈夫ですよ。競り合いにすらなりませんでしたので」

「なら、よかった」

その言葉を残し、レーナ先輩は帰っていった。本当に、何しにきたんだろうか、この人は。


 これからもこんなことがあると困るので、少しやりすぎたが、とりあえずクラスに平穏が戻り、皆は机に戻り、再び勉強を始めていたので、良かった。


 俺に対するクラスからの目も、少しは変化してきているのかもしれない。


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