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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
試験編
61/62

天国か地獄か


 新人戦も終わり、一学期も残すところ僅かとなった。長い夏休みの前には学生の敵、期末試験が控えている。


 この学校では一年で三回の試験がある。一・二学期末にそれぞれ一回ずつ座学の試験があり、三学期末に実技の試験がある。


 そしてこれから一週間が本格的な対策期間となる。

 二週間前から原則として部活動に制限がかかり、一週間前からは全面禁止となる。


 試験期間は普段から勉強をしている奴にとっては天国のような期間だが、サボってきた奴にとってはそれまでのツケを払う地獄の期間だ。

 後者が圧倒的に多いのは言うまでもないが、俺のクラスは見ている限りでは八割以上がそれにあたる。天国にいる残りの二割は、魔導工学を武器に入学し工学部として毎日試験対策をしている奴ら。つまりは俺とかリーエルがその二割に入る。



 そして今日からは、ハンナ先輩と下校ができる。毎日連絡は取り合っていたが、こうして話すのは本当に久しぶりだ。

「アルバート、試験は大丈夫?」

「軽く詠唱を覚え直すくらいですね。先輩はどうなんですか?」

聞き返すと、先輩は珍しく曇った表情を浮かべた。

「それが……魔導概論と爆炎系の陣が全然ダメで……できれば教えてほしい」

この言葉を待っていた。彼女と二人で勉強なんて理想的すぎる。

「爆炎系なら任せてください。場所はどこにしますか?」

ハンナ先輩はしばらく考え、少し上目遣いで。

「アルバートの家がいい」

その言葉が頭を反芻し脳は溶かされ、俺はただ頷くだけしかできなかった。

 今の家に人を上げたことはない。幼馴染のミーナですらだ。

 

 なんとか正気を取り戻し、言葉を紡ぐ。

「俺の家、なんにもないですよ」

最低限の家具にダンベルやチューブといったトレーニング用品、工具類。おおよそ人を呼ぶには質素過ぎる部屋だ。


実家には軽く運動ができる庭や、妹と共有のゲーム機やボードゲーム、トレーニングマシンと、ある程度は揃っているのだが、下宿先に人を呼ぶことがあるとは思っていなかったため、何も用意していない。


「お邪魔します」

「着替えますか?ジャージなら貸せますけど……」

私服はワンセットのみ。部屋着はジャージしか持っていない。

「うん。そうしたい」

自室へと招き、適当なジャージを二セット引っ張り出し、片方を渡して部屋を出た。


 書斎へと向かい、ファイルを漁って文書を引っ張り出し、部屋へと戻る。先輩は既にテーブルにノートを広げていた。

「先輩、これ、俺が書き込んで、使い物になるかわからないんですけど……」

「……!?」

不思議そうに受け取った先輩は、それが何かに気がつき驚いた。

 その正体は、今机の上に開かれている魔導概論の教科書の原稿と、本にはならなかった部分―クソほど細かい解説や応用などが書かれた文書だ。


「アルバートが書き込んでるってことは……理解しているってこと?」

「昔から親父の研究は間近で見てましたし、暇だったので」


 世間一般の子供は、それぞれの魔法を伸ばすために日々練習や稽古をする。少なくとも四系統を上達させなければならないため、それなりの時間を要する。

 その点俺は一つ。単純計算で四倍の時間があるのだが、詠唱を刷り込ませる過程を含めると十倍の時間がある。

 一つに平均の五倍の時間をかけ、かつ格闘技に時間を費やしても、半分以上の時間が余る。そこで、暇つぶしがてらに親父の書斎で、全く訳のわからないものを勉強していたのだ。その一つが、魔導概論。


「自分は、神のところを自分自身に書き換えてますけどね」

「あ、本当だ」

神なんて糞食らえと思っていた頃だったから、仕方ない。今は、どうでもいいというのが正直なところだ。


「じゃあ……アルバート先生。教えてください」

「わかりました」

こうして、授業が始まった。



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