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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
新人戦 編
59/62

本能のままに


 歓声が響く。

観客席を見渡せば、その全てと目が合いそうなほど、皆が俺を見ている、

準決勝一組目。相手は団体戦三位のハワード学院の大将、ロード・クルセイダー。


家名に恥じない完璧な闘いぶりでここまでやってきたが、それもここまでだ。そもそもクルセイダー家は氷結遠距離魔法を得意とする血筋で、爆炎系魔法は大したことがない。

そんな奴がここまで辿り着いのは、偏にセンスによるものとしか言いようがない。


 こいつの戦いは、その突出したセンスに任せた魔法の波状攻撃で相手に攻撃の隙を与えないのが特徴だ。

 この手の戦法に対する正攻法は無く、単に速さで上回り、主導権を握るしかない。


 次に当たるであろうジークは、ここまでの戦いでかなり消耗している。向こうの山は皆がジークに備えた結果、長期戦になった。

一方、無名の俺に対して対策をしてくる奴などほとんどいなかったので、奇襲に次ぐ奇襲で難なく勝ち上がってこられた。なので、体力にはまだまだ余裕がある。


観客も、そろそろ普通の戦い方には飽きてきた頃だろうし、ここはひとつ、派手に戦うとしよう。


相手は余裕の表情だ。

 

『始め!』


 これまでの5試合とは打って変わって、早々に間合いを詰め、こちらから攻める姿勢を見せる。

軽く打ち込んだジャブに対し、反射的な蹴りが返ってくる。癖のない、簡素な動きだ。


 生まれつきの反射神経と身体能力に任せた、天性のカウンタータイプだ。技巧派のノイルとは似て非なる

タイプ。

 

 間合いが開くと、間髪入れずに魔法が飛んでくる。それを腕を盾に防ぎ、反動を後転で流す。こちらが体勢を立て直す前に、追撃。すかさず自らの魔法をぶつけ相殺。

流石というべきか、カウンターからの組み合わせも上手い。


 ならば、今度はこちらから。

弧を描かせながら三発を打ち込む。

だが、その全てが避けられた。一瞬で、前に出ればよいという判断を下せるのは、やはり才能がずば抜けているからだろう。

 

第二・三撃、四撃と、隙なく撃ち込み、次の手に策を巡らせる。

体勢が戻る前にもう一度、弧を描かせて二発。前に出てきた所を、こちらも詰める。

カウンターの蹴り。

予想の範疇、こちらは体勢を落とし、軸足を払いにかかる。予想していたのか、それとも瞬間的な判断か、蹴りの反動で宙を舞い、それを躱す。


互いが放った魔法での追撃は相殺。予想通りの完璧な流れだったが届かない。

だが、今ので確信した。少しでも考えていれば、ほんの僅かに届かない。全てを感覚に委ねるしかないのだろう。


 本能のぶつかり合いなど、久しぶりだ。


相手は動きが読まれていることに気がついたのか、余裕がなくなっているように思えるが、気のせいか。


試しに、全く同じ攻撃を繰り出し、様子を伺う。

一瞬、こちらをちらりと見た。さっきまではなかった動きだ。

気のせいではなかった。実際、さっきよりも動きが堅く、判断に迷いが見られる。


 プレッシャーだ。

家名という大きな存在から生み出される、想像を絶する重荷。

それは人が、自らの人格を捻じ曲げてでも、家に相応しい理想像を演じさせる程に、強いものだ。


だが俺は、背負うものなど無い。妹に全てを委ねた情けない兄だから、プレッシャーなど感じない。


 結末だけを決めた。それまでの道筋は本能のままに紡ぐ。

鎬を削る格闘戦が幕を開ける。本能と本能のぶつかり合いは荒々しく、勇ましく、けれど美しい。

何も考えていなくても、最善の対応がなされている。どうやら俺の本能は、思考によって磨かれ、経験によって洗練されてきたらしい。


攻撃を防ぐたびに、相手の表情は焦りの色が強くなる。少しずつ、こちらのペースに引き込み、やがて、攻守が逆転。



 観声が止んだ。

誰もがその一挙手一投足を、この攻防戦の結末を、固唾を飲んで見守っている。


 

 そして完全に、俺のペースになった。

飛び蹴りのフェイントに対し相手は、腕を盾に顔を覆う。

それと同時、両手から互いに逆方向へと魔法を放ち、追撃。反動により、回転能率が発生。体に回転が加えられた。

 放たれた魔法が敵の頰を掠めた直後。俺の右脚が、相手の顔へと迫る。


 魔法を避けるために体を逸らした結果、重心が完全左に、体は蹴りが迫る方へと向かっている。

そんな状態で、躱す術など存在しない。頭を覆う腕に蹴りを見舞う。

相手は左、こちらの蹴りは右。互いに逆方向へと進む物体が互いにぶつかる時、凄まじい衝撃が発生する。

 その衝撃は、腕などで防ぎ切れるはずもなく、脳を、揺らす。


ガクッと、相手の体勢が大きく崩れ、二、三歩よろめいた後、完全に崩れ落ちた。

「勝負あり!」

会場が一瞬にして湧き上がる。


 崩れ落ちたロードを起こし、言葉を交わす。最低限のスポーツマンシップだ。

「俺が言うのもおかしいが、大丈夫か?」

「大丈夫。初めて、楽しいと思えたよ」

「なら、よかった」

「決勝、楽しみにしてるよ」



グッと固く握手を交わし、決勝のコートへと向かった。





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