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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
新人戦 編
56/62

恐怖心の克服


結局、昨日の不正の疑いは、不正ではなかった。そして次回以降は、多方面からの抗議、特にアルグレイ魔導院からの申し出によって、正当な詠唱として採用されることになった。



 敗戦から一夜明け、ノイルは燃えていた。まだ朝だというのに、熱苦しいほどに迫ってくる。

「先生、先生が前に言っていた、攻め潰す戦い方を教えてください」

「好戦的だな」

「僕はもう、負けたくないんです」

ノイルの言葉に、かつての自分を思い出した。


 俺の今までの人生の中で成長を遂げたのは、決まって負けた後。だからノイルは、ここから更に強くなる。


「わかった。それなら、体力作りだ」

技術や筋力は付いてきている。だがそれは、カウンターに適した体づくりをしてきたからだ。

「体力、ですか?」

「基本的な蹴りや突きの動きはできてきているが、攻め続ける体力はまだない」


 体力を強化するとなれば、今までとは違うメニューをこなす必要がある。

「具体的には、何をするんですか?」

「……エアロバイクだな」

理由は、これからの時期は雨が多いのに加え、ランニングは腰や膝に悪影響になる可能性があるからだ。


「先生は、何をするんですか?」

「考えとくわ」

とりあえず基礎練をこなし、朝練は終わった。




軽く授業を聞き流しながら考えること四時間、答えが出た。

更衣室でノイルに話す。

「先生、決まりました?」

「ああ、魅せる技の練習かな」

ノイルが首を傾げている。これは俺の言い方も悪かった。

「体操とかバレエの動きを技の中に取り入れようかと思ってる」

「飛んだり跳ねたりするんですか?」

「まあ、そんな感じかな。どんな体勢からでも変則的な攻撃ができれば強みになるだろ?それに、観ていて楽しい」

「なるほど……」

ピンときた様子で、深く相槌を売っている。


頭打ちになりつつあった俺にとって、それを取り入れるメリットは多い。柔軟な動きができるようになれば技も広がるし、格闘技には存在しない動きで敵を翻弄できる。


「やることは違いますが、頑張りましょう」

「ああ。言われなくても」

頭をぐしゃぐしゃと撫で、俺は演習場へ、ノイルはトレーニングルームへと向かった。

 

 演習場と言っても、一階ではなく地下一階。そこでで練習をしている体操部を観に行くのだ。


ちょうどそのタイミングで、一人の女子部員バク転をした。一回……二回……三回と続き、最後に捻りを加えながら、バク宙。

「凄え……」

これができれば、盛り上がるに決まっている。


しばらく眺めていると、一人の部員がこちらに来た。

「アルバートさん、ですよね?」

「なんで名前を?」

「ノイル君からお話を伺ってます」

この子が、ノイルの彼女か。確かに、変な男に絡まれそうな感じはする。


「それに、アルバートさん、結構有名なんですよ?」

後夜祭での一件で、もはや知らない人間はいないらしい。

「そうなのか……」

「それで、体操部に用ですか?」

「用というか……動きの勉強に来ただけだから、気にしなくてもいい」

ノイルの癖でも移ったのだろうか、同じように首を傾げている。

「対人戦闘部なのに、ですか?」

「色々あってな」

「気になりますが、あとで聞かせてください」

「終わるの、遅いぞ?」

「ノイル君を待つので、大丈夫です」

すきあらば惚気だ。俺も人のことは言えないが……


 一階へと戻り、中学の時の体育を思い出しながら、器械体操の練習をした。周りからは変な目で見られるかと思ったが、ジークがふざけ半分で参加したことでそれは回避された。

ジークのカリスマ性には本当に驚かされる。


器械体操は、思っていたよりも体幹が鍛えられ、ジークも俺も、練習が終わった頃にはヘトヘトになっていた。


 日は沈んでも、まだ少し明るいのが今の季節。日が長くなっているのを日々感じる。

 演習場の観客席で待っていたノイルの彼女と、なぜか待ってくれていたハンナ先輩と合流し、四人で学園近くの公園へと向かった。

 


「理由だっけか」

洗いざらい全て話した。昨日負けたことも、動きの幅に限界が近づいていることも、魅せる戦いをしたいということも全て。

「なら、やってみますか?」

「それがいい」

彼女の提案に、ハンナ先輩が乗っかる。

「経験は?」

「中学の時以来だ」

大きく息を吸い込み、ちょうど一年前を思い出す。飛び跳ねるのと同時に、体を逸らし、手を…………つけなかった。


肘が折れたのが原因で、そこから落下。腕を強打した。

「大丈夫ですか?」

ハンナ先輩とノイルは、オロオロと心配している。

「無理だ」

「恐怖心を捨てましょう。私が魔法でサポートします」


 そのまま言われた通りに心理操作を受け入れ、恐怖心を捨てさせられた。全く怖くないどころか、むしろ成功するイメージしかない。


 さっきと同じように、後方に飛び跳ねるのと同時に体を逸らし、地に手をつく。そして蹴り上げるように足を振り上げ、その勢いを以って回転。

「よし!」

成功した。


「次は、バク宙にチャレンジしましょう」

「わかった」

説明を受けた通りに体を動かしたら、出来てしまった。

「このまま、何回もやりましょう」

「おう!」

心理操作は恐ろしい。もう何も怖くない。



何度も何度も、体が覚えるまで、回り続けた。



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