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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
芸術祭編
52/62

動き出した恋の話


 第一グラウンド、演習場それぞれで、有志の音楽ライブが行われている。この学園の後夜祭は、生徒会に所属する生徒の思い出づくりのために始まり、その頃は細々と芸術祭の成功を祝っていたらしい。


 だが今では、一般生徒がそれらを盛り上げている。


 必死に歌うバンドグループに、恥ずかしげに手を繋ぐカップル。ダンスに誘う一人の男子生徒と、それを見守るその友人たち。


 学年も学科も、魔法も、何一つ関係ない、人と人とのふれあいが、営みが、そこでは行われている。


青春、と呼ばれる光景がそこには広がっている。


 そんな様子を、俺は一人、生徒会室から眺めていた。

 大音量で流れるライブの音源に、弾む笑い声。おおよそ喧騒に近い騒ぎだか、耳障りではない。


あいにく俺はこういった催しには慣れていない。なので、こうして見ているだけで十分だ。



「今から、クール・アリシア並びに、ミス・アリシア本戦を行います」

そのアナウンスを聞きつけ、生徒らが一斉にステージに集まりはじめた。どこから湧いてきたのかわからない。


正直、俺もこれを楽しみにしていた。近くで見たいのだが……ハンナ先輩を観に行っていると思われるのは少し恥ずかしいので、ここから画角に収める。


扉が開く音が聞こえ、そちらに目をやる。レーナ先輩だ。昨日のこともあるので、人混みは避けたのだろう。

「アルバート君、ここいい?」

「どうぞ」


 先輩は窓から外を眺めるのかと思ったが、そのまま壁を背に三角座りをした。白い太ももがちらりと覗く。

「こら、ニヤニヤしない」

ほんの僅かに口角が上がったのを、先輩は見逃さなかった。たぶん、わざと見せたのだろう。

「ありがとうございます」

「なにそれ」

笑いながら、再び窓の外に目をやる。


「アルバート君は、私のこと怖がらないんだね」

ぽつりと、先輩が呟いた。

「俺も似たようなもんですから」

「炎と氷なのに、似たものどうしなんだ」

クスクスと笑いながら、先輩は立ち上がる。



 しばらく眺めていると結果が発表された。

一位は誰かはわからないが三年だろう、二位にリーエル、三位にミーナと、ハンナ先輩がランクインしていた。



 次に男子。一位はやはり、俺の親友のレックス。二位は知らない三年で、三位はジークと、二年の誰か。



「続いて、フォークダンスを行います。コンテスト出場者の皆様、指名を」


一位の人は、男子二位の人を指名した。


「エルトーレ先生、踊りましょう」

リーエルは、教師である兄を指名し、会場が盛り上がる。

「俺じゃなくて、男を誘え」

そう言いながらも手を取る姿に、会場はさらに湧く。


当然、ミーナはジークの元へ。

その、壇上で交わされるミーナとジークの熱い視線に、会場から冷やかしの声が跳ぶ。


一人一人にスポットライトが当てられ、そのまま意中の相手の名を呼んだり、その人の元に歩み寄ったりする。


そして、ハンナ先輩の番だ。

すると突然。

「ハンナ!アルバート君はここだよ!」

窓からレーナ先輩が叫んだ。

全員がこちらを向き、ざわつき始める。スポットライトが、俺を照らす。


「アルバート君!私と、踊ってほしい」

声を張り上げて、ハンナ先輩は手を差し出した。 体が熱い。

「行ってらっしゃい」


この指名は、断れない。覚悟を決めて、息を吸った。

「喜んで!」

勢いよく、窓から飛び降りた。


 空中で魔法を展開し、ゆったりと着地。そして、俺を待つハンナ先輩の元へ。

ゆっくりと階段を登り、手を取った。


物語の主人公のような振る舞いに、最高潮に盛り上がる。

「……ありがとう」

先輩は初めて、皆の前で本当の一面を見せた。

「こちらこそ」


何人の男子を敵に回したか、考えたくもない。


「俺、踊れませんよ」

不意に手を引き、先輩が俺の肩に手を回す。

「私に、任せて……」


「……はい」

気の抜けた声でしか答えることができなかった。ハンナ先輩も、顔を真っ赤にしている。


これは絶対にレーナ先輩が吹き込んだに違いない。



 

 先輩に身を委ね、踊る。

「アルバート君……」

先輩の頰は紅潮し、目は潤んでいる。

「……はい」

俺もそこまで鈍感ではない。この後に何が続くのか、それくらいわかる。


先輩は足を止め、顔を近づける。それは予想外の事態に、鼓動が早まる。

「……好きだ」

耳元で囁かれ、脳が熱で溶けた。思考が回らない。


しばらくして、ようやく余裕を取り戻す。

「……俺なんかで、いいんですか?」

「君じゃないと……嫌だ」

「先輩……かわいいですね」

ムッとした様子で、こちらを見上げる。それに対し、耳に顔を近づけ、囁く。

「俺も、好きです」

その反撃で、先輩の顔は耳まで真っ赤に染まった。



 俺は感じた。人に愛されることはとても幸せで、何物にも代えられない価値があるのだと。

 

 俺の恋は、今、動き出した。



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