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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
入学編
5/62

争奪戦2日目

 一夜明けた通学路。今までと変わらず、隣にはミーナがいる。

視線を感じるのはミーナに対してか、それとも俺に対してか。おそらくは後者。


 空を飛んで、なおかつあれほどの魔法を展開したら、目立つのは当然だ。学園生活の開始早々、面倒な事になった。

「目つき悪いよ?」

「生まれつきだって知ってるだろ」

遠くを見るときの目つきの悪さと、生まれつきの髪色が相まって、完全にその類の人間だと思われているだろう。

「お前、俺と歩いてて大丈夫かよ」

周りから見れば、優良児が不良に絡まれてる図である。可哀想、などという声も聞こえてくるほどだ。

けれどミーナは、鼻歌交じりに俺の横を堂々と歩いている。


 門までたどり着いたところに、一人の女子生徒が近づいてきた。顔立ちから判断すると先輩だ。恐らくはミーナに用があるのだろう。

「ミーナさん、今大丈夫?」

やはり。ミーナに少し待っててと言われ、俺は少し離れて会話が終わるのを待った。


「ごめん、おまたせ」

数十秒なので、お待たせと言うほどでもないが。

「誰だ今の?」

「生徒会の人だよ。答辞は生徒会執行部に入るのが条件だからね」

そういう制度だったのか、初めて知った。頑張れよ。と、とりあえず労いの言葉をかけておく。


「アルバートも入らない?記章貰えるよ?」

「記章は欲しいが、仕事が多いから面倒だ」

聞くところによれば、生徒会は殆ど全ての行事に関わっているらしい。それに、俺は生徒会に入れるような立派な人間ではない。

「なら学級委員長にすれば?やってたから分かるけど、あれ、ほとんど何もしなくていいよ」

その割には評価が高いから、と、ミーナは笑いながら言う。

「それでも、迷うわ」

笑いながら、ミーナと別れた。


 始業の鐘が鳴った。今日も、順調に事が運べば二時間で終わる予定だ。

 今日は魔導書の配布と、それぞれの係を決める。どこの学校でもこの流れは同じだろう。

 

 係を決める。まずは委員長からだ。

女子の方は、立候補したリーエルで決まった。そして、男子。さっきも言った通り、やはり悩む。先生と目があった。


「立候補は居ないか?」

気がつけば、俺は手を挙げていた。

「アルバート、志望理由を聞かせろ。次にお前だ」

ミーナの話と、リーエルにやってみようと言われたからだし……適当に誤魔化すか。

「この機会に経験しておこうかと迷っていたところ、アリシアさんが声をかけてくれました。それならぜひ、と思い、立候補しました」

ほとんど何も考えていなかったのに、驚くほどに言葉がスラスラと出てきた。


「なるほどな。次、お前」

「僕こそが委員長、そして彼女のパートナーに相応しいと思うからです。あんなやつに、彼女の隣は務まらない。僕こそが彼女に相応しい唯一の人間なのです。以上です」

見下したような話し方にイラっときた上に、あんなやつとはな。それに最後、よくあのバカ兄貴の前で言えたもんだ。


「あ?最後、聞こえなかったわ」

やっぱり、不機嫌になるわな。

「僕こそ、アリシアさんに相応しいと言いました」

「ふざけてんのか?」

眉が、さらに釣り上がる。バカだろ、こいつ。

「いえ、僕は至って真面目ですが……」

「はい却下、アルバート、頼んだぞ」

はーい。と、軽く返事をしておく。横目で奴を見ると凄い目でこちらを睨んでいる。

「贔屓です。納得いきません」



俺が口を開くより早く、

「いい加減にしろよ」

誰か他のやつが代わりに言った。

「いいでしょう。ここは彼に譲ってあげましょう」

なぜか、俺を睨んで座った。今後、変に絡まれなければいいが……

その後は滞りなく決まり、予定通りの時間に全てが終わった。


 帰る間際、先生から、今日は騒ぎを起こすなよと耳打ちされた。加えて、教師で気づいているのは俺だけで、今回はそれっぽく誤魔化せたが、次は厳しいと。


 留意するが、ここからその問題にぶち当たる。昨日のこともあるし、今日は空からは逃げられないだろう。


 肝心の部活動だが、俺は全く決めていない。ミーナは生徒会に入るため、生徒会のメンバーが多く両立がしやすい儀仗部に入ることを決めたようだ。リーエルは学業優先で考えているため、今のところはどこにも入らない予定らしい。


 帰り道の最大の難所、アプローチだ。


「今日は逃がしませんよ。説明だけでも聞いてください」

「私はもう決まったので」

ミーナが断るが、まだ引かない。本当に鬱陶しい。だから人が集まらないんだよ。

「私は学業優先なので」

リーエルも続く。これで諦めるだろうと思っていたが、そいつらは俺の前に立った。


「違うよ、君だよ。昨日のあれ、すごい魔法だったね」

気がつけば俺の周りに人が集まり始めている。手の平返しもいいところだ。

「「いたぞ、ここだ」」

「二人は先に行け」

ミーナとリーエルの背中を押し、集まる人の輪から追い出した。

勧誘はどんどんと集まる。特に、体育会系の勧誘が。

「だから入る気はないって言ってるでしょう」

俺の叫びも、全く耳に入っていない。


 五分以上が経った。我慢してきたとはいえ、さすがに腹が立ってきた。これは俺が短気だからではない。全員まとめて蹴散らしてやろうか。

「いい加減に……」

目を閉じた瞬間。

「え?」

「生徒会執行部です」

その声とともに俺の周りは魔法の壁に包まれ、それが 広がり、生徒らを押しのけていく。


 体育会系の奴らを押しのけるとは、なかなかの魔法だ。


そしてそのまま、俺はその壁ごと門まで運ばれた。

「ありがとうございます」

「君、人気者だね」

運んでくれたのは、生徒会の腕章をつけた、女子生徒。

「昨日色々あったので」

あっと、彼女は俺を指差した。

「アルバート君だよね?」

そうだが、どうして俺の名前を知っているのか、不思議でならない。


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