饒舌
「これより、全校朝礼を始めます」
ティアーナ記念館に、凛とした声音が響き渡る。その、たった一声で、喧騒に包まれていた場内が静まり返った。
「始めに、生徒会の活動報告です」
壇上の会長が、舞台袖にいる俺に目で合図を送る。
ふっと一息吐き、壇上へ。歩き始めると、会場が再びざわつき始めた。
登壇し、一例。そこからの光景は、想像を絶していた。全員が、俺を見ている。
「えっと……」
話そうとしていたことが、完全に飛んだ。冷や汗が止まらない。
とりあえず、自己紹介で繋いでおこう。
「生徒会執行部一年、アルバート・レーザスです」
全体を見渡すと、見知った顔がちらほら。遠慮気味にこちらに手を振っている一人を見て、少し落ち着いた。
しかし、次の言葉を探していると、突然。
「あ!アルバートだ!おーい!」
バカっぽい声が響き渡る。会場が一気に笑いに包まれた。今ので吹っ切れた。
「皆さんには、悪い方向でよく知られている事は自覚しています。信用できないなら、今からの話は聞かなくても結構です」
こうなれば、めちゃくちゃに喋ってやろう。
「ところで、噂って怖いですよね。気づけば悪い噂が構内中に広まっていますし、変な奴にも絡まれました。どうすればいいんでしょうか。生徒会では新たに目安箱を設置したので、解決策があれば是非お願いします」
会長の方を見ると、頭を抱えている。でも、目安箱の事はしっかりと伝えたから問題はない。
「話の中で詳細が知りたかったり、要望、相談等があれば、いつでも生徒会室に相談に来てください。可能な限りで対応します」
これも、しっかりと伝えた。答えるのは俺だけというわけではない。
誰が聞いていて、誰が聞いていないか、壇上から見ればよく分かる。魔導兵科は殆ど聞いていない。言うなら、今しかない。
「時間もないので話はこれくらいでしょうか……あ、忘れてました。最後に、マゼラティクスとの共同研究が正式に決定しました、先着順で選考対象とします。以上です」
早口で言い終え、一例。応募方法は説明していないが、やりたい奴は聞いてくる。
案の定ざわついている。さて、何人が聞いていて、何人が聞きに来るか。
親父譲りの卑劣極まりないやり方、通称あとだし方式で、ふるいにかける。
偏見を持たず、人の話を聞き、理解力があり、行動力のある優秀な人間だけが残り、それ以外は振るい落とされる。
さらにここから、筆記・面接試験をする予定だ。厳しいようだが、親父の顔もあるのだから、これくらいして当然。
ちなみに、選考に関しては俺に一任されている。信頼している人らに対しては、試験免除等の忖度は当然あるし、むしろこちらから声をかける。
「好き放題してくれたわね……」
「でも、仕事減りますよ?」
「悪巧みの時の頭のキレは、天才的ね」
「会長には負けますよ」
俺の返答に、会長もニヤリと笑った。俺と会長は、根本が似ているのだろう。だから、こういっためちゃくちゃなこともやりやすい。
親父は俺に、魔法陣が描けたり、魔法学の成績が良いやつを主に集めろと言った。「主に」にという部分が親父らしい。俺に好きにやらせるために、あえて「だけ」とは言わなかったのだろう。
向こうがこちらの考えを読めるように、俺も親父のことならだいたいは理解できる。
とりあえず、この話が決まった時から懇願するような目で俺を見ていたから、マルクスに声をかける。
「マル坊、」
「行きます!」
何も言ってないのに、返事は即答だった。
「おう、分かった」
次は、生徒会の面々に聞いた。
「参加してもいいか?」
「私も少し興味あるけど、忙しいから……」
「アンナがやるなら、私も」
シュヴァルト先輩、会長、レーナ先輩がすぐに食いつく。わかりました、と、リストに書き込んでいった。
「アルバート、私もいい?」
心配そうに聞くミーナに対し、
「お前は強制だよ」
と笑って返す。
「俺もいいよな?」
ジークが目の色を変えた。やっぱり、本気なんだな。
「当たり前だろ」
その後は、それらに後押しされる形で次々に名乗りを上げ、結局、生徒会全員が入った。言い訳はなんとでもなる。
シャル、クルシュに声をかけると、ついでにハンナ先輩も付いてきて、それに引き寄せらるようにノイルがついてきた。
そこから三日、それらの処理で多忙を極めた。
そして、何一つ準備することなく一週間が過ぎ、演説の日を迎えた。




