表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
合宿編
40/62

癒えるものと刻まれるもの


「おはよう」

先輩の声で目覚めた。昨夜のことを思い出すと、少し気まずい。

「おはようございます」

それらを紛らわせるように、目を逸らす。

「身体は大丈夫?」

先輩は、昨日のことなどまるで嘘であったかのように、いつものように、凛と振舞っている。

「はい、今日から練習に戻ります」

こちらも、今まで通りを装った。


 それでも、決してなかったことにはならない。いつかは、真剣に向き合うべき時が訪れるのだ。


 シャワーを浴びてからジャージに着替え、演習場へと向かった。

入口で待っていたシーナが、こちらに気がつくとすぐに走り寄ってきた。そして、頭を下げた。

「アルバート、ごめん」

「気にすんな」

気にしていたことに驚きながらも、頭をぐしゃぐしゃと撫でる。その言葉は、自分に言い聞かせるためでもあった。



俺は、魔法が単純なものではないということを忘れていた。火力だけが全てではないように、速さと威力の二つも、魔法の全てではないのだ。


「また、やろうな」

魔法だけでは勝てなくても、俺は挑み続ける。


次は、絶対に負けない。


なぜならば、アルバート・レーザスという男は、負けてからが強いのだ。何度負けても、その度にもがいて、苦しんで、最後には必ず勝つ。


今までもそうであったように、これからもそうあり続けたい。それが、俺の生き方だから。


シーナにも、絶対に勝つ。

魔法が一つしか使えなくても、俺には知識がある。


かつて、世界を狂わせるほどにまで発展した文明技術、その知識の全てが俺の脳には蓄積されている。


それは、俺に与えられた、最初で最後の可能性だ。


俺の魔法に可能性などあるわけがないだろう。

 何を勘違いしていたのだろう。俺が魔法だけで勝ったことなど、一度もないじゃないか。


相手に合わせた上で勝つなどという正々堂々とした、一流の戦い方など、俺には似合わない。



なりふり構わず相手を自分の戦場に引きずり込む。不意打ちでもなんでも、卑怯と言われたって構わない。それが、俺の戦い方だ。


だが、その戦い方に文句は言わせない。

なぜならこの世界では、勝ったものか正義なのだから。


固定観念も価値観も、常識も。それら全てを覆す。


昨夜、そう決意したのだ。


 頰を叩いて、場内へと歩く。その後ろをシーナが続く。面々に挨拶をしながら、練習に入る。

「おはようございます」

「お前、頑丈だな」

シュヴァルト先輩に笑われ、アネット先輩にからかわれた。

「まだ体内魔力の状態が良くないんで、基礎練だけにしときます」

そう伝え、二階へと向かった。


そのまま一人、様々なことに思いを馳せながら、トレーニングに励んだ。


 


 昼食後。ノイルとハンナ先輩の二人に加え、なぜかシーナも合流した。同じ格闘技を教えるなら、二人同時にやった方が効率がいいってのが建前で、ハンナ先輩には、ノイルを選んで欲しいからってのが本音だ。俺なんかより、よっぽど未来がある。



 先輩にはカウンターの技術を教え、ノイルには基本的な攻撃の動きを教える。

 二人にはそのまま、攻撃と防御を互いにしてもらう。


「お前から行かないと、振り向いてもらえないぞ」

そうノイルに耳打ちをし、俺はさっきから魔法を見せろとうるさいシーナの相手をする。


勝手についてきたシーナはというと……

「魔法を見せてくれるまでこうする」

と言いながら俺の腕にぶら下がったり、足にしがみついたり、まるで子供だ。

なんでこんなに懐かれたのかはわからないが、初めてあった時からずっとこの調子だ。

 

 仕方なく、今できる最大の魔法を生み出す。

「おお!パチパチしてる!」

今の俺には火花が精一杯だが、どうやらご満悦のようだ。

「っ!」

「何やってんだよ」

その火花に手を触れ、熱さに驚いて転んでいる。

「えへへ、熱かった」

と、手に息を吹きかけながらニコニコと笑っている。やっぱり、バカだ。


 リハビリを兼ねて遊んでいるうちに、時間は過ぎていった。そんな中ノイルは、こちらの意図を汲み取ってくれたかはわからないが、先輩に他の技を教えてもらっている。よくやったと褒めてやりたい。


「先輩、俺ら上がりますんで、ノイルのこと頼みます」

「わかった。今日はありがとう」

「うす」

一礼し、宿舎へと向かった。これは、ノイルになんとかしてもらうしかない。


 風呂で鏡を見た。魔法の跡が胸に刻まれている。

「やっぱり、痛えな……」

目にすると痛みが増したように感じた。


 この傷は治療しなければ一生の傷となる。俺は、これを戒めとして、付き合っていくつもりだ。


三日目が終わり、明日はいよいよ最終日となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ