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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
合宿編
39/62

錯綜する想い


 目を覚ますと、ベッドで寝かされていた。

かなりの時間気を失っていたのだろう。窓から差し込んだ夕日が天井を赤く染め上げている。皮肉にも俺の魔法と同じ色だ。


 俺は、完膚無きまで負けたのだ。

なんとも言えない虚無感を吐き出すように、深いため息をついた。


ふと、人の気配を感じた。

「アルバート君……」

この声はハンナ先輩だ。

「先輩……いつから?」

赤く染まる天井を見つめながら、会話を続ける。

「君が来たときから、ずっと」

「練習は……よかったんですか?」

「心配だったから」

その言葉に、少し心が温まる。

「ありがとうございます」


心地のいい、静かな時間が続く。このまま、全てを忘れて眠ってしまいたい。

「先輩……」

「どうした?」

声をかけたが、何を言いたいかは考えていない。


しばらくの沈黙の後。言葉を絞り出した。

「強さってなんなんですかね」

頭に浮かんだ言葉を、そのまま口に出した。それは、俺がこれまで求め続けた「強さ」というものへの、本質的な問いだった。


 シーナと戦って感じたのは、格の違い、ただそれだけ。

 七つの魔法は全て、一つの魔法を導くための一節。そんな化け物じみた才能の前には、小細工なんて通用しない。

俺が積み上げてきたものが全てが否定され、壊された感覚だった。


「私にもわからない」

思い出すと、様々な感情が込み上げてきた。

「俺は……どうすればいいんですかね」

どれだけ足掻いても、勝てるとは思えない。


すると、ハンナ先輩が俺の手を握った。その手はとても柔らかく、なぜか温かく感じた。

「大丈夫。今のアルバート君には、人に優しくできる強さがある」

優しさに満ちた声音。それに応えるように頷いた。


「どうしたら、強くなれますか?」

「私は、人は悩んで、迷って、彷徨って。ゆっくりと強くなるんだと思う」


その言葉を聞いて。自らの過去を振り返った。先輩の言う通りだ。

「俺も……そうでした」

顔が見えるように、少し体を起こした。

一度離れた手は、先輩によって再び握られる。俺は、先輩の目を見た。

「だから、焦らなくてもいい」

夕日に照らさた先輩の顔も、赤く染まっている。

「はい……」


先輩は言葉を選ぶように、目を泳がせている。そして、少しずつ言葉が紡がれてく。

「私は、魔法なら教えられる。シーナよりも強い」

「俺に……教えてください」

「教えるだけではいやだ。私は、アルバート君と一緒に強くなりたい。私だけ、置いていかれたくない」

ギュッと、さらに手を強く握られた。少し心臓が跳ね上がる。

「だから……私にも……教えてほしい」

照れながら、先輩が真っ直ぐにこちらを見た。


何を、とは聞かず、ただ頷いた。俺が教えられることなら何だって教える。

「本当?」

なぜなら、こうやってハンナ先輩に頼られるのは、特別なことだから。


もう一度、強く頷いた。


そして、手が包み込まれるように握られ、心が痛くなる。だが、その優しさには争うことはできなかった。

 身を任せ、目を閉じた。時が全てを解決してくれるだろう。

 


 再び目が覚めた時には、すっかり夜になっていた。


帰っていると思っていた先輩は、俺の胸の上で心地好さそうに、無防備にもこちらに顔を向けて寝息を立てていた。


愛おしい、そう、思ってしまった。


「アルバート君……」

「っ!」

急に呼ばれて驚いたが、寝言だったようだ。

「そういうことか……」

昨日、先輩の様子がおかしかった理由がわかった。それに気づかないほど鈍感ではない。


 雲の切れ間から差し込んだ月明かりが、先輩の顔を照らす。

その幸せそうな表情に、思わず笑みがこぼれる。それと同時に、胸が締め付けられた。

「なんで、そんな表情してるんですか」

今までにないぐらい動揺しているのが、自分でもわかる。


「俺は、どうすればいいんですか?」

囁くような声で、眠る先輩に声をかけた。

けれど、返事は帰ってこない。



窓から見える満天の星空に、季節外れの夏の大三角が浮かんでいた。


「なんでこうも、上手くいかないかな」

そう吐き捨て、再び目を閉じた。俺は、どうすればいいのだろう。

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