七色の舞
三日目。俺たちの班はのこれから練習試合に入る。
「アルベルト」
どんな奴がいるかを、一通り見渡していく。
すると突然、背中を叩かれた。
「誰だよ……っ!」
振り向くと、この前の変人がいた。確か、名前はシーナ・モンナタール。
ずっと呼んでいたようだが、違う名前を呼んでいたら気づくわけがない。
「俺の名前、アルバートだから」
「じゃあアルバート、私と試合」
「はいはい」
ハイというまで心理操作を掛けてくるのは目に見えている。
俺がその場で座り込むと、横にちょこんとシーナが座った。何をされるか分からないからマジで怖い。
試合を見ていると、シーナは何やらブツブツと呟いている。耳を傾けると、それは色の名前だった。
「青……水色……綺麗……赤!」
「さっきから何言ってんだ?」
「魔法の色、綺麗だよ」
「色?なんだそれ」
聞いても理解できない。すると、説明よりも先にシーナは俺の目を手で覆い、魔法を唱えた。
それは、幻術魔法の中でも難易度が高いとされる、感覚共有魔法の詠唱文。
次の瞬間、真っ暗だった世界に色が戻る。
「なんだ……これ……」
そこに広がっていた光景に息を飲んだ。
魔法の波が鮮やかに色づいている。魔法の起動とともに、色も広がる。俺が肌で感じている魔法の状態が、全て色で伝わってきているのだ。
「綺麗?」
「ああ……綺麗だ」
これが、こいつが見ている景色なのだ。
四試合目が終わり、次は俺たちの番だ。立ち上がろうとした時、ぎゅっと重みを感じた。
「おい、何してんだ」
密着するシーナを振りほどこうとするが、ここでも魔法で力を強くしている。
「おんぶして」
「子供かよ」
力を込めて立ち上がるが、思ってたよりもずっと軽いことに驚いた。
そうして、試合が始まる。
真っ向勝負で勝ち目はないため、開始早々に回避に専念する。
「赤色……」
火球が翳める。当たれば終わりなため、一瞬の気も抜けない。
「オレンジ色……」
しかし、何も起こらない。少し間が開いて波が到達、自分への身体強化系魔法だったのか。俺の攻撃に備えたと考えるのが自然だが、真意はわからない。
「黄色……」
「っ!?」
色のある世界が広がった。幻術系魔法、それをこんな使い方をする理由がわからない。
「緑色……」
緑色の波が広がる。そして、吹き始めたそよ風がシーナの髪を揺らす。
これは、遊んでいる。だったら、ここで反撃するしかない。足を止め、詠唱。
「フレア!」
「青っ!」
俺が口を開いたのと同時、向こうの魔法が発動する。ふわりと飛んだシーナは、俺の攻撃の射線から逃れる。
「読まれている!?」
しばらく考えて、違う結論に至る。
波で感じる俺とは違い、向こうは光で魔法の状態がわかるのだ。発動と同時に全て知られ、対策をされているから、読まれているように感じるのだ。
少しでも離れていれば、こちらの攻撃は絶対に当たらない。
そこでさらに気がつく、シーナの周りに何かが描かれている。あれは……魔法陣か?
シーナが手を振りかざすと、更にそれらが描かれていく。やはりこれは、魔法陣。
「藍色……」
シーナの周りに、水が流れ始める。
シーナが描きたいものがわかった。俺の足は完全に止まった。完全に、諦めた。
赤、オレンジ、黄、緑、青、藍。
それに続く色は、ただ一つ。紫だ。それで、この魔法は完成する。
「紫……」
雷が水と反応し、ミスト状に広がる。
「出来た……虹!」
七色の波が広がる。もう、笑うしかない。
そして、それまでに唱えた全ての魔法が、俺へと迫る。
「無理だ……」
避ける事すらも諦め、目の前の光景に見惚れていた。
強烈な熱や痛みとともに、世界の全てが黒く染まった。




