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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
入学編
31/62

第三条の魔力


言われたことが二つ。

一つは、新人戦のチームメンバーの一人が怪我をしたため、先鋒と大将を俺に任せるということ。

二つ目が、四月終わりの長期休暇に行われる予定の強化合宿に、部員として参加してほしいということだった。


人数合わせだったはずだけどな、と思いながらも、ここで活躍しとけばスポンサーの目に止まるという期待もある。なので、一つ目は了承した。


問題は二つ目だ。大体の考えはわかる。俺が加わるとなれば、学校が施設を用意してくれるのだろう。


「強くはなりたいですが、目標が無いので……」

二つ目に関しては、そう答えた。目標があっても

努力を続けることは難しい。まして、目標が無いとなるとなおさらだ。

「なら、適正別の新人戦で優勝、というのはどうだ?」

初耳の言葉に、そのまま聞き返してしまった。

「団体戦とは別に個人戦もある。お前レベルの人間は少ないし、同じ適正どうしの戦いだから、格闘技が重要になってくる。お前なら優勝を狙える」

『優勝』という、俺に全く縁のない言葉に、心が踊った。



「なら、狙ってみましょうか」

「よし、やるか。ジークとお前で一位、二位を独占だな」

完全に調子に乗った。シュヴァルト先輩も意外と乗り気だ。ジークとは別の山なので、決勝で戦うことになる。

「ジークには負けたくないですね」

あいつとはいい関係を築いて行きたい。だが、勝負となると、特に同じフィールドでは負けられない。


目標を掲げたところで、練習に取り掛かる。

今、格闘技に大きな可能性を感じている。


身体強化が蹴りが当たる瞬間にだけ発動させることができるのなら、他の魔法でも、難易度は違えど可能であるということだ。

 当たる瞬間に何かしらの魔法で威力を増大させる、もしくは常時展開した炎を武器に戦うなど、色々思いつく。

 その中で、最初に思いついたものが最も簡単だ。

蹴りと同時に展開し、僅かに遅れて発動する魔法により追撃する。どちらかを防げは、もう片方が防げなくなるため、かなり有効だ。


 それを可能にする為に必要なことは三つ。

一つは、魔法の無詠唱展開。これがなければ話にならない。

二つ目は、動きながらの魔法の展開。蹴りという激しい動きの中で、魔法に意識を向けることが必要になる。

 三つ目は、身体能力の向上。無意識に威力のある生きた蹴りを放つなどの基礎に加え、長期戦に備えた、そもそもの魔力や体力の向上だ。


 無詠唱化は、魔術部のマネジャーをしていれば、嫌でもできるようになるだろう。魔力も同様だ。

動きながらの魔法は、まず、格闘の動きを体に染み込ませなければならない。


 そうして、黙々とサンドバッグを蹴り続ける日々が幕を開けた。当面は、サンドバッグを壊すのを目標にするとしよう。


 

 日が変わり、火曜の朝。いつもより三十分ほど長い朝練を終え、教室へ向かう。


いつもはない笑い声が聞こえ、教室に入ってすぐにそちらを確認する。

「アルバート、見ろよ」

笑いながらそいつらが指差したのはメルトバーグの席だ。置かれていたのは、どこからか入手した退学届と花束。

つまり、そういうことだ。

「そこ、花壇でもゴミ箱でもないぞ?」

馬鹿にしたトーンで言いながらカバンを置く。

「はあ?」

ケラケラと笑いながら。

「花壇に植え直してくるわ」

そう言って、俺は花瓶と紙くずを掴んだ。

「おい、何やってんだよ」

なおも笑っている。冗談だと思っているのか。

「ゴミはゴミ箱に捨てるって事すら理解できてないんなら、お前らが雑魚なのも納得だわ」

そう吐き捨て、校舎横の花壇へとそれらを植えに行った。


教室に帰ってくると、さっきの四人に囲まれた。と言っても、俺より身長が低いからどうということもない。

「さっきのどう言う事だ?」

見下ろしながら、答える。

「言葉通りだ。もっと分かりやすく言えば、子供でも理解できる事すら理解できない奴に、魔法もろくに扱えないだろうなって事だ」

「言うじゃねぇか」

四人がジリジリと詰め寄る。

「自分より下を探すのも雑魚の癖なんだろうな。まあ、メルトバーグは強いから安心しろ」

「ふざけるなよ?」

胸ぐらを掴まれたので、こちらも掴み返す。

「やるか?」

こちらが押すと、手が緩んだ。

「威勢だけが良いのも、雑魚の特徴だ」

「やってやろうじゃねぇか!」


迫る拳をそのまま顔面で受け止める。

「痛ってぇ」

「雑魚はどっちだ」

相変わらず、威勢はいいんだよ。けど、致命的に頭が悪い。

「馬鹿だな……」

「まだ懲りないか!」

また殴りかかっきたの交わし、距離を取る。



「なあ、お前ら、校則読んだことあるか?」

ヒリヒリする頰をさすりながら、問う。

「何言ってんだ?あんなの読む奴は、ただの馬鹿だ」

「ああ、てことは俺は馬鹿なのか」

その言葉を聞いて、四人は腹を抱えて笑いはじめた。

「馬鹿だ、読んで何になるってんだ」

こちらも笑う。

「一つ教えてやろうか?」

「あ?」

「お前らを退学にできるんだよ」

「はあ?できるわけないだろ」

まるで信じていない。

「ああ、痛えなぁ」

そう言って、わざとらしく頰を摩る。


「第三条、校内における暴力行為に対する処罰。相応の理由なく行われた暴力行為に対しては、処罰を課す」


一、両者に非がある場合、両者を厳重注意もしくは停学とする。


二、一方のみに非がある場合、その理由の如何に関わらず停学、理由によっては退学とする。



この場合は二の後者。いじめを注意されての逆上となれば、当然、退学である。


それを聞いてもなお、笑っている。

「証人がいなけりゃ、それも嘘になるよなぁ?こっちは四人だぞ?」

威勢がいいのは、相変わらずか。

「証人がいなかったら、お前らをボコボコにしているが……」

リーエルがいることに気がついていないようだ。


そちらを見て、一度は驚いたものの、すぐにニヤニヤと笑い出した。

「アリシアさんがお前の味方をするとでも?」

なぜ得意げなのか。

「はい。当然、私はアルバート君の味方です」

スタスタと近づいて来たリーエルが、俺の隣に並ぶ。こういう時は、本当に頼りになる。

「俺はとりあえずリーエルに委ねる。まあ……俺としては退学でいいと思うが」

「そうですね。一応、兄……先生にも相談してみましょうか」


四人はここに来て、ようやく焦り始めた。

「なあ、アリシアさん、考えてくれないか?」

リーエルはそれを無視し、教室を出た。

「おい。アルバート」

黙れと一喝し、リーエルに続いた。


教室の外には、中の様子を察したのか、事が終わるのを待つクラスメイトが数人いた。

それらに、

「悪いな」

と、一言謝り、職員室へと向かった。



「意外でした」

止めたのは、という事だろう。

「まあ、委員長だしな」

「それでも、殴られてまで……」

腫れてはいないが、赤くなっている頰を見て、心配そうにしている。

「痛く、ないんですか?」

「痛いに決まってるだろ。けど、殴られるのには慣れてるから、ちゃんと、腫れないように殴られた」

「腫れないように殴られるって、どういうことですか」

と、笑っている。


「それでも、メルトバーグ君の心を折るっていってませんでしたか?」

なぜ止めたのかがよくわかっていない様子でこちらを伺う。

「あいつの尊厳や自尊心は、俺との戦いで十分折れた」

「そうでしょうね……」

「まあ、そういった空気になるのは仕方がない。だが、第三者が実害を及ぼすのは別だ」

それでリーエルは納得してくれた。

「そういうことですか」

そのまま、自らの考えを伝える。

「それに、この空気は俺がなんとかしないといけない。あいつが弱いから負けたのではなく、俺が強いから仕方がないという風にしなければならない。それが、俺の責任だ。アスリートがよく言う、勝者の責任と似たようなもんだ」


「なんだか、正義のヒーローみたいですね」

見直したとでも言いたいのか……小さい頃は、それに憧れていた。けど、俺は。

「そんな良いもんじゃない。どちらかといえば、恐怖政治の暴君だろ」

その例えに、リーエルは笑った。

「確かに、そうかもしれませんね」

「おい。納得するなよ」

「けれど、優しい暴君です」

その笑顔に、少し体温が上がった。

「なんだそれ」

そんな風に笑い合いながら、職員室への道を歩いた。






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