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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
入学編
25/62

ささやかな親孝行

 練習風景を眺めながら、ただひたすらに走る。


 一人一人の戦い方は少しずつ違っていて、それぞれが工夫を凝らした動きを身につけている。

 これは自慢だが、俺は他人の状態が分かる。

その人間がどのような魔法を使うのか、どれほどの威力なのか、魔力はどれほどかを、一目で知ることがで きるというわけだ。

 

小さい頃からケンカをしているうちに身についたので あろうこの能力は、今までは逃げるためにしか役に立たなかった。

だが今は、戦法を決める判断材料になる。勝つために使えるのだ。


 正直、魔力量と威力ではここの全員に勝っているが、おそらく殆どが俺より強いことは確かだ。

 まず、引き出しの数が違う。引き出しとは、詠唱の知識だ。それらが多いというのが強さを決める一つの基準となる。


 そして、なによりも驚いたのが、それらの引き出しからどの魔法をを用いるか、どのように組み合わせるかの判断の早さが桁違いだということだ。

 アネット先輩に至っては、普通の魔法を一節、つまり速攻魔法と同じ時間で展開している。


 速攻魔法を習得するのですら三年かかるのだ。あれほどのものを一節詠唱で展開するとなると、そこからさらに五年はかかるだろう。


彼女は驚く俺をみて、少し嬉しそうな顔をしていた。さっきの仕返しといったところか……


 そんな先輩にまざまざと技量の差を見せつけられたところで、ランニングを終えた。

いつもならどう勝つのかを考えるが、あまりの凄さに半ば諦めている自分がいる。

 

 タオルで汗を拭っていたところに、見覚えのある奴がやってきた。名前は知らない。

「アルバート君でしたっけ?オレと戦わないっすか?あっ、オレの名前はフォックスっす」

飄々と話すので、馴れ馴れしいが、どこか憎めない。

「何でまた、俺と戦いたいんですか」

「自分、近接戦闘が結構苦手で、君の動きを見てこれだ!って思ったんすよ」

何かもう一つ言いたそうにしているから、こちらから助け舟を出す。

「戦うだけでいいんですか?」

申し訳なさそうに、手を合わせた。

「できれば教えて欲しいっす」

ハンナ先輩と似た感じだ。先輩に下手(したて)に出られたら、断れない。

「わかりました」

「あざっす」

俺は、意外とチョロいお人好しなのかもしれない。


 コートに入り、近接戦の間合いに入った。この間合いに入ったら、俺は負けない。

「実戦形式でやりましょうか」

近接戦闘の実戦は、本来、引き出しが多い方が勝つ。

「マジすか?」

こちらより早く展開できるものなら、使ってみればいい。


[始め]


互いに間合いを測る。

先に動きを見せたのは向こうだった。

 迫る右腕を左手でいなし、反撃。下腹部に蹴りを入れる。

が、吹っ飛ぶだけでダメージは少ない。


他者と高速で接触すれば、その部分が硬質化し、さらに反発力が生まれる。

それは、人の体は、物理的な衝撃に対しては、防衛本能で威力が低減されるという仕組みになっているからだ。


飛ばされた相手に、立て直す隙は与えられない。


「っ!」

やはり、魔法を使ってきたか。

「い……」

口が開いたのと同時、こちらが魔法が展開される。

「ええっ!?熱っ!」

現れた炎の柱が相手を包む。


そして、隙だらけとなった相手の胸ぐらを掴み、投げた。倒れる敵に、掌を向ける。これで、勝負はついた。

「俺の負けっす」

「大丈夫ですか?」

「正直やばかったっす」

手加減したとはいえ直撃したので、結構心配だ。

「というか、いつのまに詠唱してたんすか?」

「いや、してませんが」

「無詠唱!?」

「そんな驚くことですか?」

ミーナもリーエルもやっているので、凄いことなのかよくわからない。

「爆炎系でそれはやばいっすよ!」

「まあ、練習してきたので」

一つのことだけしかできないのだから、こうなるのは普通のことだと思うのだが。

「ちょっと先輩呼んでくるっす」


 すぐにシュヴァルト先輩とアネット先輩がやってきた。

「マジですって。逸材っす」

「アルバート、見せてくれ」

手を前に突き出し、少しだけ意識を集中させる。


手のひらから溢れ出した魔力は、すぐさま炎へと姿を変え、勢いよく燃え広がる。

「これでいいですか?」

「確かに凄いな……俺でも無詠唱では不可能だ。一節でも怪しい」

「悔しいけど、私なら三節は必要ね」

「いや、二人も十分凄いっすよ」

二人がさらりと言った事に、フォックス先輩は苦笑いしている。


「一節詠唱ができるようになったのは何歳だ?」

シュヴァルト先輩の質問に十歳の時だと答えた。ケンカをしていて、暴言で魔法が発動した時だ。

「それで、無詠唱は?」

「無詠唱は九歳の時ですね」

「嘘だろ?」

「いえ、ここまでの威力になったのは十三歳の時ですが、その時にはロウソクの火ぐらいは無詠唱で出せてました」

三人が呆れている。


「アルバート君、この威力になったのは三年前だよね?」

頷いた。彼女の予想通り、今ではもっと威力があるし、ある程度は整形ができる。

「今は……?」

「まだ球状にはできませんが、火を圧縮することはできます」


「やってみてくれるか?」

離れてくださいと三人に注意を促し、そっと目を閉じた。


業火をイメージする。


体内の魔力が急速に手に流れ、痺れとともに熱を感じ、直後、魔法が瞬く間に展開された。

 青い炎はすぐさま赤く燃え広がる。先ほどとは比べ物にならないほど長く、細く前方へ広がる。


「やばいっすね。やっぱり、ギフテッドじゃないっすか」

そう言われても、あまり嬉しくない。


 ギフテッドは、多くの魔法適正を持っている奴にほどその恩恵がある。俺には、ほとんど恩恵はない。


「まあ……他がダメなんで、ほとんど意味ないんですけどね」

何度も言われてきたが。昔は、そんなおまけなんて要らないと、ただ、いくつか魔法が使えればそれでよかったのにと、思っていた。


「何で生徒証にマークが無かったんだ?」

シュヴァルト先輩が問う。

 マークというのは、女神のマークのことで、条件を満たした人に与えられる。


入部届けに添付した学生証をよく見ているから、先輩はマークが無いのを知っていだのだろう。

「まあ、あっても意味ないんで」

あったところで、魔法適正が一つならただの飾りにしかならない。だから、わざわざ申請していない。


意味がないという言葉に、先輩は首を横に振った。

「それがあれば、あらゆる企業や技研から声がかかる」

それだけじゃない、と。

 研究活動や課外活動に対しては国や学園から助成金が支給されたりする他、学園生活でも授業料の一部が免除されるといった、主に金銭面での恩恵が受けられるらしい。


その言葉で、思い出した。

 先日、来年の冬にアリシアの中等部を受験すると、妹から報告を受けた。

正直に言って、妹が落ちるわけがない。

そうなれば、来年からは兄弟が私立の学校に通うことになるわけで、それは相当なお金がかかることを意味する。


俺にかかる金は、三年で一般的な平均年収と同じぐらい。そして、そこから仕送りや様々な演習に参加するための費用を合わせると、その倍はかかる。


それが、妹もとなると、結果は目に見えている。


 俺は今まで、強さを基準にして必要、不必要を考えてきた。俺にとって、ギフテッドの称号は明らかに強くなるためには不要の代物だ。


だが、断れるわけがない。

「申請はどこでできますか?」

散々迷惑をかけた親に、ささやかな恩返しを。

「教務課だ。今から一緒に行こう」

魔法協会の職員が常駐しており、今すぐに簡易試験を受ければ、交付してもらえるらしい。



 そして、俺と先輩はアリーナを後にした。


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