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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
入学編
22/62

摂理

 開始と同時、朝と同じく攻守を兼ねた速攻魔法で距離を取る。


「フレア!」

そして着地と同時に三発。

初弾は大きな弧を描かせ、二発目は小さな弧を、そして三発目は直線で、目の前の地面めがけて撃ち込む。


嫌という程やらされた同時着弾。タイミングは完璧だ。


相手は防御せざるを得ない。


目の前に着弾させた最後の一つによる爆風で体制を崩すことができた。


が、焦る必要はない。これを繰り返していけばいいのだ。

攻守の魔術戦では、守る側の魔力消費の方が大きい。その差でどんどん体力を削っていけば、いずれ勝てる。


そう、これは『こけおどし持久戦』だ。


本でも紹介されている立派な戦術だ。自身のプライドを損なうため、実際はあまり好まれないらしいが、俺にプライドなんてものはない。


この世の中は、勝者こそ正義なのだ。戦争がそれを肯定している。


だが俺は、はなから持久戦なんてするつもりはない。普通に考えて、二時間魔法を撃ち続けた後で持久戦を選ぶわけがないだろう。


これはあくまで敵を油断させるためだけの罠だ。


 部長は冷静だ。当然の事ながら、判断を誤らない。


「雷撃よ!」

部長は、魔法を防ぐのと同時、速攻魔法を展開した。


 判断が的確だからこそ、持久戦に対する最善策を選ぶ。

だが、そこに罠がある。防御魔法から攻撃魔法に転じる時は、たとえ速攻魔法でも展開に僅かな時間がかかる。

「フレア!」

一発で電撃と相殺。煙が広がる。

「フレア!」

二発目は両手から、火力度外視で後方に放ち、反動で前方へ。


煙を突っ切り、相手に急速接近。

「っ!盾よ!」

展開に時間がかかるのは、その逆も同じ。最速で反応できていていたとしても、間に合わない。


これは、『すれ違い爆撃』の応用だ。


煙を抜けると目の前に部長が現れた。これは、速すぎた。このまま体当たりをすれば、怪我をさせる。

「っ!」

「きゃあ!」

ぶつかる寸前、とっさに部長を抱え込み、なんとか頭を手で押さえる。


部長を抱えたまま壁に激突。マット質とはいえかなりの衝撃だ。抱え込んだおかげで、俺へのダメージだけで済んだ。

俺は立ち上がり、部長に手を差し出した。

「私の負けだ」

「大丈夫ですか?」

「私は平気だ。君こそ大丈夫か?」

頷く。部長が怪我をしていなくて安心した。


「怪我はないですか!」

もう一人の部長が駆け込んできた。

「私は平気だ」

「貴方じゃなくて、アルバート君です」

「あ、大丈夫です」

「もっと心配してくれても良いんじゃないのか?これでも女子だぞ?」

「油断した貴方が悪いです」

「そう言われるときついな」

二人は笑った。


 両方とも無事とはいえ、事故が起きたことには変わりない。今日は終わることになった。


片付けをしていると突然、ハンナ部長に詰め寄られた。

「女に対して、あれはやりすぎだ」

「すみません」

深く頭を下げた。一歩間違えば怪我をしていたのだ。

「でも、感謝している」

と、先輩は俺の肩に手を置いた。


その言葉には、色々な意味が含まれているように感じた。

「一戦を交えた仲だ。私のことはハンナで構わないぞ?」

「それは色々と問題があるので、ハンナ先輩で」

「仕方ないな」


 演習場を後にし、門まで三人で歩く。

「今日は本当に助かったよ」

と、男子部長のケース先輩が俺の両肩に手を置いた。

「確かに、評判は良かったぞ」

と、ハンナ先輩が続く。


 ケース先輩が耳打ちをしてきた。彼が言うには、ハンナ先輩はやっぱり、相当モテているらしい。

「先輩どうなんですか?」

当然、聞いた。

「僕はもう彼女がいるから、そういうのはないよ」

「ですよね」

まあ、ここまで顔も性格も優しいイケメンを放っておくわけがないか。


 別れ間際。ハンナ先輩が、何か言いげな顔でこちらを見ている。

「ハンナ先輩?」

なかなか口が動かない。なら僕からと、ケース先輩が口を開いた。

「今日のことは秘密にしてほしい。これは僕からのお願いでもある」

部長として、あまり良くないのだろう。


少し間が開いて、俯いていたハンナ先輩が近づいてきて、俺を見上げた。

「やっぱり……だめ……だろうか?」

これは反則だ。ケース先輩を睨んだ。この状況で断れますか?と目で訴える。彼は苦笑いしながら首を横に振った。


「またお邪魔させてくれるなら、いいですよ」

先輩は安心した様子で、ほっと息を吐いた。そして、はっとした様子でいつもの凛とした姿に戻る。

「すまない。こちらもいつでも歓迎だ。あと、さっきの変な姿は忘れてくれ」

あれが先輩の素なのだろう。


ケース先輩が近づいてきた。

「僕からも、是非暇があれば遊びにきてほしい」

と、強く手を握る。そして耳元で囁いた。 

「ハンナのあの素の顔を知っているのは、僕と君だけだよ」

だから秘密にしろということか。

「分かってますよ」

男だけの秘密というわけだ。


 そうして、連絡先を交換し、二人と別れた。


 家族の下に新たにケース先輩が、クルシュ・メルトバーグの下にハンナ先輩が加わった。


姉と弟でなぜここまで違ってくるのか不思議なぐらいだ。


 街灯が照らす家路を、ゆっくりと歩いていく。それは、俺にとっては一日で起こったことを思い返す唯一の時間だ。


 多くの人は、誠意を見せれば優しく応じてくれることがわかった。きっとあの人もそうだろう。


 家に入れば、明日に向けて動き出す。

明日はシュヴァルト先輩に頭を下げに行こう。





 



 


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