挑戦状
どうやら冗談ではないようだ。
「さあ、早く」
目の前の女子部員は手を広げて俺の攻撃を待っている。多分避けるだろうが、それでも抵抗はある。
「いいんだな?」
彼女が頷いたので、覚悟を決めて魔法を放った。
「ああっ!」
反応はしていたが、直撃……
彼女は飛ばされ、周りは呆然としていた。
俺はすぐに駆け寄った。
「大丈夫か?」
当てておいてなんだが、心配になる。
「速いです。それに、痛いですね……」
「当たり前だ」
大丈夫じゃないのは頭の方かもしれない。
「何がしたかったんだ」
「あなたの覚悟を確かめました」
その覚悟は本物でしたと、丁寧に礼をしてからコートを出ていった。
かなり変な奴だ。部長に注意を受けている。
二人目からは常識人が続き、無事に一セット目が終了した。
休憩時間。動きの確認をしているが、どうも部員たちからの目線が気になる。
ちなみに、さっきの変人が例の一年だったようで、痛みが引かないのか、遠くから俺を睨んでいる。
彼女は俺が練習相手として相応しいかを確かめたかったらしい。根が真面目なのはわかったが、ほかに方法はなかったのかとは思う。
二セット目も大盛況だった。女子は練習が男子優先であるために、特に爆炎系魔法に触れる機会が少ないのだという。
頭のおかしなあいつも、このセットは普通だった。
このまま無事に終わるのかと思っていた、三セット目の最後の一人。部長だ。
「この後、自主練をするそうですね」
魔法を受けながら話すとは、さすがとしか言えない。
「私もご一緒してよろしいでしょうか」
「ご自由に」
男子の部長にも聞かれたが、元々はそちらが自由に使えるのだから、ご自由にとしか言いようがない。
部員の指導で自身はあまり練習できないらしい。
三セット目が終了。男子と合わせて計五セットを終えた。
片付けを手伝い、いよいよ俺の時間だ。
時刻は18時半。20時に完全下校だから、練習時間は十分だ。
男子部長は俺に気を使って、部長どうしで練習してくれそうだ。
今朝の反省を続ける。
まず、一戦目の反省点は後方への回避の着地が失敗したことだ。そこから後手に回ってしまった。
「フレア!」
もう一度、同じく後方に跳ぶ。ここで相手の動きを見なければならない。
今朝は真っ向から撃って来たから左右どちらでもよかったのに、心理干渉の影響で俺は迷った。その時点で勝敗は喫していた。
二戦目は手数不足だったからどうしようもない。三戦目は後一歩だったが、こちらの迷いで逆転負け。心理干渉に慣れるしかない。
そこまでの反省を終えたところに、部長が来た。
「一人で寂しくないのか?」
「いえ、別に」
むしろ一人の方が自分のペースで練習できるし、人とやるより楽でいい。
「人とやりたいと思わないのか?」
この人、本当は自分が戦いたいだけだ。目を逸らして誤魔化そうとしているのが、少し可愛らしい。
まあ、後輩にそういうのを頼むのは勇気がいるだろうし、ここはこちらが折れるべきか。
「いや、そろそろ一人も飽きて来た頃ですね」
「そうか、なら私が相手をしてやろうか?」
目を見開いてこちらを見た。嬉しそうだな。
「お願いします。形式はどうしますか?」
「えっと……んー、どうしようかな……君はどうしたい……?」
この人、部内の男子にモテてるだろうな。
何でもいいと答えた結果、魔術×格闘の異種戦闘となった。
こちらは魔法で留めを刺すのは禁止で、動けなくなれったら負けだ。
それに対して向こうは、間合いに入られたら負けだ。
よく考えたら、こちらが圧倒的に不利だ。
両者がコートに入り、対峙した。
『始め』
弟への鬱憤を、ほんの少し晴らさせてもらう。




