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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
入学編
20/62

天才少女


 十戦全敗。なんともみっともない結果だ。反省点を考えながら、着替える。そして、バランス栄養食を水で流し込み、少し早いが教室へと向かった。


道中、額に痛みを感じたためトイレへ。鏡を見るとやはり、額の一部が少し切れていた。

「カッコ悪ぃ」

鏡に映る自分に向かって吐き捨てた。


 まあ、このぐらいの傷なら、ぶつけたと言っておけばごまかせるだろう。


 時刻は七時半。教室にはリーエル他、数名だけと少ない。昨日までは俺もこの時間に起きていたので、あまり人のことは言えないが。


 とりあえず、昨日のことを改めて謝った。加えて、しばらく部活は任せる、と。それをリーエルは黙って受け入れてくれた。



 魔導工学はノート作りで終わり、体育はただひたすら火を出し続けた。魔法の制御は着実に成長しているが、できないふりをして時間稼ぎをしている状態だ。

俺には、もう少し時間が必要だ。


 そして、放課後。

体育教官室に向かい、放課後の演習場利用の許可を得ようと試みる。しかし、その話にオルド先生は肩をすくめた。


 放課後のことなら、使う部活動に聞いてくれ。体育科にその権限はないとのことだ。

渡された使用時間割に目をやる。今日は魔術部が占有。前半は男子で後半に女子。明日は対人戦闘部、明後日は魔術部と格闘技部、その後も空いている時間はない。

 とりあえず、直接聞くしかないので、すぐに演習場へ向かった。



 場内、コートでは魔術部の男子が練習に励み、観客席にはそれらを応援する女子生徒や練習に備えストレッチをする魔術部女子の姿がある。

 朝はとても静かだった演習場が、まるで別の場所であるかのように思える。


 コート脇の通路に立っていた一人の部員に声をかけ、顧問の場所まで案内してもらった。

「練習中すみません。少しお時間よろしいでしょうか?」

一瞬、怪訝な顔をしたが、どうやら話を聴いてくれるようだ。


 一通り事情を説明し、頭を下げた。

「なるほど、空き時間に使わせてほしい……か」

少し考え、先生は一人の部員を呼び寄せた。どうやら部長のようだ。

 部長にも、同じように説明する。

「なら、交換条件にしよう。僕たちの手伝いをしてくれるなら、休憩中や終わった後に使っていいってのはどうかな?」

「手伝い、ですか?」


 マネージャーは全員女子。さらに爆炎系魔法を使える人が少なく、それに対する対処法の練習が満足にできずに困っていたらしい。

どうやら、向こうは俺のことを知っていた様子だった。


当然、引き受けた。

「本当に助かるよ」

「こちらこそ、ありがとうございます」

もう一度、深く頭を下げた。

早速更衣室へと向かい、制服から市販の戦闘着へ。


マネジャーの一人に説明を受けた。


 この部活は基本的には自主練形式。コートごとに練習メニューを割り当ててあるのだという。

 例えば、俺は第三コート担当で、そこは爆炎系魔法への対応の練習となる。そして、一人約30秒でローテーションし、30分おきに全体で10分の休憩があるとのこと。


 つまり、休憩中は自由にコートを使うことができるわけだ。マネジャー達もその間に軍用魔術の練習をしているらしい。


『第三コート、今日は助っ人です。皆さんお待ちかねの爆炎系。今日は一人、五発までです』

場内アナウンスを聞いた部員達はすぐに第三コートに飛んできた。数十秒で既に列ができている。


『第二セット、いきます』

 一人目。要望は特になく、すぐに終わった。

 二人目。こちらは三発の同時着弾。

やり方はわかっていたが、慣れないためにかなりの魔力を無駄にしてしまった。


 その後も数人から訳のわからない注文を受けたが、なんとか一セットが終わった。


ここからは俺の時間だ。


 朝の敗因は、速さで勝とうとしていたことにあった。

 やってみて、速さでは絶対に勝てないことを痛感した。ならば、機動力で魔法を躱し、死角から攻撃を与えていくしかない。

そのためには、このフィールドを有効に使う必要がある。


 俺が考えているのは、四方八方を飛び回る戦い方だ。


 今までやったことはないというか、空を飛べない俺には普通ならできない。だが、反動で浮くというだけなら、理論上は俺でもできる。


 俺の魔法にだけ反動があるのは、頭の中にロケットやら飛行機やらの知識があるせいだ。


 手のひらを下に向け、詠唱を唱えた。

「ルーヴィス・ケルト・レーベンアプト」

手と足から炎が勢いよく噴き出し、体が少しずつ浮かび上がる。

 常時展開による反動を活かして飛ぼうと考えたわけだ。


 体は浮いたが、もう少し高さが欲しい。意識を集中させ、出力を上げた……が慣れないことはするものではなかった。


 出力を出しすぎた結果、体は急上昇。


「っセル!ゔっ!」

慌てて魔法を解除したが間に合わず。天井に頭を強打。挙句、地面に落下。

「死ぬかと思った……」

フロアがマット質で助かった。


 小学校の先生が運動場や体育館以外で魔法を使ってはいけないと言っていた意味がようやく理解できた。地面だったら間違いなく大怪我だ。


 ここまで盛大にやらかすと、俺も笑うしかない。周りも笑っている。


 飛べることはわかったが、制御が上手くなるまでは飛ばないでおこうと固く決意する。

恥ずかしさを誤魔化すようにスポーツドリンクを飲み、今朝の戦闘の反省点の動きの練習を始めた。


 二セット目の30分をなんとか乗り切り、男子の練習が終了した。


 今までこんなに魔法を撃ち続けたことはなかったので、かなりきつい。俺もまだまだということだろう。

 これを続ければ、魔力はもちろんだが、同時着弾や偏差射撃などの技術的な成長も見込めそうだ。


 評判は意外と良かった。多くの部員からまたきて欲しいと言われだことに少し驚く。挨拶を交えながら、差し入れのエナジードリンクを飲み、次に備える。



 次は、女子の練習だ。


 女子も、演習場を使えるのはほとんど先輩。しかし、一人だけ一年がいるらしい。同じ一年としては、どんな奴か気になる。


 部長へ挨拶をしようと探していたところ、向こうからやってきた。

「はじめまして、部長のハンナ・メルトバーグだ。よろしく頼む」

メルトバーグという名に、思わず顔が引きつる。あいつの姉か……

「アルバート・レーザスです。こちらこそ、よろしくお願いします」

弟とは違い礼儀正しいのだが、どうしても意識してしまう。なんとも複雑な気分だ。


 部長と別れ、コートに戻った。


 男子である俺のところには来ないと思っていたが、開始前から人がいる。爆炎系の人気に驚いた。


『練習開始です』


女子の練習が始まった。

「私に当てて」

一人目からよくわからない奴が来た。冗談と思いしばらく待つが。

「早く」

どうやら冗談ではないようだ。

「いいんだな?」

俺の言葉に、コクリと頷いた。

目の前の女子部員は手を広げて俺の攻撃を待っている。多分避けるだろうが、それでも抵抗はある。

覚悟を決めて魔法を放った。

「わっ!」

何かしらの反応はしていたが、直撃。ぶっ飛ばされ、周りは呆然としていた。

「おい!大丈夫か!?」

すぐに駆け寄り、容態を確認する。

「大丈夫。それより、綺麗な魔法」

大丈夫じゃないのは頭の方かもしれない。かなり変な奴だ。コート外につまみ出され、部長に注意を受けている。


 二人目からはまともな人が続き、無事に一セット目が終了した。


 休憩時間。動きの確認をしていると、不思議な視線を感じた。その方向を見ると、さっきの変人がじっとこちらを凝視している。聞くところによると、これが噂の一年らしい。


 睨み返すが、それでも視線を外さない。

集中力が切れたため、一度中断しスポーツドリンクを飲む。ジャージの裾を引っ張られた。振り返ると、そいつがいた。

「どうして止めたの?」

「どうやって入ってきた」

「んー。開けゴマ?」

いや待て、このコートはインターバル以外は完全に密室のはずだ。

一つの結論に至った。

「干渉魔法……か」


間違いなく天才だ。


「早く続きをして」

その口から放たれた言葉が、頭の中を埋め尽くす。心理操作魔法か。

「ならここから出ろ」

「嫌だ」

さらに強まり、強烈な頭痛が襲う。

「わかった……そこで見てろ」

あまりの強さの心理魔法に、対抗するのを諦め、再開する。


しかし、うるさい。

「おお!今のもう一回」

「そろそろ黙れよ!」

「もう一回!」

目を見開いて、駄々をこねる。

「わかったから」

休みを与えられず、10分間シャドウと続けさせられた。


この10分がなによりもきつかったかもしれない。

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