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古代技術と爆炎の三流魔道士  作者: Uノ宮
入学編
15/62

Showtime


 悪い噂ほどすぐに伝わるというが、本当にその通りだ。昨日の朝に起こったことなのに、既にほとんどの生徒にまで広まっているようだ。


 第一グランドから最も遠く、さらに本校舎から離れた別館の校舎、他の科と関わりが最も少ない治療科の生徒に至るまでとは、さすがに早すぎる。


 聞こえてくる話の中の噂は尾ひれがつきすぎていて教室で魔法を展開しただの、先生に向けて魔法を撃っただの、もう既に原型を留めていない。

「でもまあ、やりすぎたよな……」

「元気ないね。昨日の体育でしょ?」

「そうだ」

「でも、負けたくなかったんでしょ?」

「まあな」

反省はしている。シャルを泣かせるつもりはなかったし、ここまで大ごとになるとは思っていなかった。

開始早々、完全に悪目立ちしている。


 門をくぐるとすぐにアプローチに差し掛かる。

しばらくすると、赤の制服を着た奴らが近づいてきた。面倒の予感がする。

「おお、お前がアルバートか?」

「そうですが」

身長は俺と同じくらい、高圧的に迫られれば、こちらも同じ態度で返す。


「こんな可愛い嬢ちゃん連れて、ノリノリだねぇ」

案の定だ。

魔導兵科の一部生徒の自己顕示欲の強さは有名だ。自分より目立つ奴がいれば気にくわないだろうから、こうなるのは仕方がない。


 というかこいつら、先輩が言っていた[関わってはいけない人間ランキング]の最上位の三人じゃねえか。


タイミングよく、隣を先輩が駆けていく。呼んでは見たものの、「時間がないからごめん、落ち着いて」と口を動かしたあと、颯爽とアプローチをかけていった。


言われた通り、落ち着いていこう。

「おかげさまで」

いや、これは違う。癖は抜けないな。

「ああ?舐めてんのか?」

やっぱり。まあ、この手の輩に何を言っても返答は同じだ。


 ちらっと横を見る。そろそろ限界という合図に、ミーナは首を横に振った。

「ご用件はなんでしょうか」

「ああ?一年に調子に乗ってる奴がいるって噂を聞いてな、どんな奴か見てやろうと思ってよ」

「やっぱり調子に乗ってたな」

と、三人は笑う。

どう考えても、調子に乗ってるのはお前らだろ。


「じゃあこの嬢ちゃんもらってくぜ?いいよな?」

「一年に色恋は早すぎるぜ?」

何が、じゃあなのか。思考回路がどう繋がったらそうなるのか、理解できない。

「すみません」

その後に、「お前らには釣り合わねえよ、鏡見ろよ」続けたかったが、なんとか踏みとどまった。

「おお、わかってるじゃねえか」

大した面もしてないくせに粋がりやがってブス。


 男らはミーナの方に歩み寄っていった。

 周りの生徒もざわつき始めた。なぜ止めないのかと俺に向かって非難の目を向けている。

 仕方ないだろ、これ以上騒ぎは起こせないんだよ。

「俺たちと行こうぜ」

「嫌です」

「いいじゃんかよ!」


リーダー格の男がミーナの手を掴んだ。

「やめてください」

そろそろ、か。ここで止めなければ男じゃない。

「触るな」

「なんだ?」

「その手を離せって言ってるんだ」

「それが先輩に対する態度か?一年が調子にのるなよ?」

矛先を俺に向けるだけでいい。最大限の悪意を込めた暴言を。


「たかだが二年早く産まれたぐらいで先輩風吹かすな雑魚。お前みたいな豚面にミーナは釣り合わねぇよ。鏡見てきたらどうだ?」

「はぁ?」

「鏡、知らねえの?トイレにあるから使ってみろよ」

的を射たその言葉に、周りの生徒が笑う。


「テメェ調子のんなよ?」

胸ぐらを掴まれた。怖い怖い。

「痛い目に会いたいようだな?」

「今のお前の方がよっぽどイタいから安心しろ」

さらに痛烈な一言。男の拳がふりあげられた。

「テメェ!」

避けようか迷ったが、男の拳が俺の頬を打ち抜いた。


「アルバート!」

ミーナが叫び、周りがどよめいた。

「痛ってえな」

避ければよかった……普通に痛え。シンプルな暴力は久しぶりだ。


「皆さん、今の見ましたか?」

立ち上がり、観衆に呼びかける。

「ふざけんな!」

男の追撃を交わし、さらに観衆に語りかける。

「これから俺はやり返します。何かあれば証人になってください」

皆は笑っている。これならいける。


「おい!こいつを掴まえろ!」

二人が俺を捕まえにかかる。それも蝶のように躱しながら、

「それと、あの噂は嘘です。尾ひれつけた人、怒らないから正直に手あげてください」

噂の弁明を試みる。笑いながら数人が申し訳なさそうに手を挙げた。


「もういい、魔法を使え!」

「力よ!」

「力よ!」

 相手が魔法を使うと、あっけなく捕まり羽交い締めにされた。さすがに自己強化で筋力を上げた奴には勝てない。

「二度と生意気なこと言えなくしてやろう」

「ミーナ、頼むぞ」

ミーナは頷いた。

「力よ集え。俺の拳は岩をも穿つ」

男の拳が光る。肉体強化魔法、殴られれば顎の骨が砕けるだろう。


 俺は目を閉じた。殴られる覚悟をしたわけではない。


 魔法というのは、意思とイメージだ。昨日の二人の速攻魔法の詠唱が、「雷よ」と「雷鳴よ」のように少し違っていても展開される魔法が同じなのは、意思は同じでも電撃に対する二人のイメージが異なるからだ。


 奴が詠唱中に「俺」という一人称を使っているのもそのためだ。


『魔法はイメージさえできれば詠唱なんて何だっていいし、極論をいえば必要ない。だが、それは不可能だから人間は詠唱を唱える。つまり詠唱は魔法という引き出しを開ける鍵なのさ。引き出しが違えば鍵も違う』


 これは親父の言葉だ。俺とミーナは略式詠唱を使えるのは、それが俺たちにとっての鍵だからだ。


 そして、俺が小さい頃から、喧嘩の時によく使っていた言葉がある。その言葉を言いながら魔法を使ったり殴りかかったりしていたから、その言葉から受けるイメージは攻撃。すなわち鍵である。


 俺は今や、意思を持ってその言葉を言えば、魔法が放てる。

「盾よ!」

ミーナがドーム状に障壁を展開。一節の魔法とは思えないほどのものが一瞬で展開される。


この世の中で二番目に短い、一節の詠唱文。


「死ね!」


 右の手の平から火球が高速展開され、放たれる。一直線に男へと向かい、直撃。爆発し後方へ吹き飛ばす。

煙がドームを包む。


そしてもう一つ。


「離れろ!」


羽交い締めにしていた二人を、背中からの爆発で吹き飛ばす。


「雑魚が粋がんな。次ふざけた真似したら殺すからな?」

周りに聞こえてないし、見えてないからこんなことができている。


俺の勝ちだ。


煙が晴れ、そこに立つ俺に観衆から拍手が送られた。ただの喧嘩だというのに、まるでショーを観たかのような反応だ。


 また問題を起こしてしまったが、れっきとした正当防衛。咎められることはない。


それに、他の奴らに釘をさせたのと、昨日の噂をする奴も減らせたので、一石二鳥だ。


 観衆に手を振りながら足早に校舎へと向かった。


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