魔法工学入門
二、三限目は魔導工学。内容としては、その導入程度。俺、リーエル 、シャル、その他数名は内職の許可をもらっている。
「お前らは知ってると思うが、これはこうなる。そんでこうなって、こうだ」
かなり雑だが、言いたいことはわかる。導入は退屈なのだろう。
今話しているのは、古代技術の紹介とそれに対応する魔法の説明だ。
例えば、古代の乗り物である航空機は、その原理は簡単に言うと浮く、進むの二つから成り立っている。浮く力である揚力というものは、重力操作系魔法に相応し、進む力である推進力というのもは、移動系魔法や、俺の爆炎系魔法の反動に相応している。
とても簡単なことなはずなのだが、クラスの大半が理解していない。
『押せば押し返される』という、作用反作用の法則が分かっていないのだ。
隣のやつは理解しようと熱心に消しゴムをつついている。そんな軽いもので反作用を受けるわけがないのだが、あまりに必死なので言い出せない。
幼少期から魔法でものを浮かし、魔法で移動させている連中に理解しろというのも難しい。
まあ、それらの魔法が使えない俺は、重いものも全て自力で運んでいたから、嫌でも理解させられている。
俺もリーエルもシャルも、一年の間に学ぶことは既に網羅している。だから聞く必要はない。
「退屈です」
ボソッと、後ろからリーエルが呟く。
設計図を忘れて嘆いているのだ。設計図というのは、例の製作物の為のもの。
[どんなの作るんだ?]
ノートの切れ端に書いて渡す。さすがに、後ろを向いて話すわけにはいかない。
「まだ決まってません。そちらは?」
[F-B90を自作する]
F-B90とは、飛行補助魔導器を手がけるマゼラティクス社の競技用魔導器、F-Bシリーズの最新型。
あくまで補助装置である。重力操作系魔法の適正がない俺にとってはただの板でしかない。
「また凄いのを……」
[夢だからな]
F-Bシリーズに乗るのが小さい頃の夢だった。それを自身の手で実現できるかもしれないのだ。燃えないわけがない。
F-Bシリーズもそうだが、全ての魔導器は魔導鋼という金属に魔法陣や詠唱文を書き込み、使用者の魔力変換だけで魔法が展開するように作られている。だから当然、必要とされる魔法適正と魔力がなければ使えない。
そうなると俺は、爆炎系の魔法を用いて全てをなんとかしなければならない。
こうして自分で考えてみると、改めてF-Bシリーズの凄さが分かる。
あの薄くて軽い板の内部に浮遊、加速、減速の為の機能が詰まっている。何がすごいかと聞かれれば、間違いなく負荷の少なさだ。生身なら負荷が強く、普通なら二回の重ねがけが限界の加速系の魔法を、最大八回も重ねられる点だ。
魔法陣は○,魔導線は➖,起動魔力は□,魔力伝達先の切り替えをは∠,魔力の安定機構は◇、これらは魔導器の設計に用いる記号だ。それを設計図に書き込んでいく。
この二時間で、自身の体重を支えるのに程度の魔法と魔法陣が必要かを安全性を含めて求めた結果、魔法陣は9個必要で、前進させるための推進機構には4つ必要であることがわかった。
あとはそれをどう配置するかが問題だ。それは部活で先生に相談するとしよう。
二、三限が終わり、四限目は魔法学だ。これも俺たち魔導工学科には関係ないため、資格に興味のない生徒は軍用魔術の詠唱を覚えたりする。
俺は『近代戦闘はこうして勝つ[爆炎系]』という本を開いた。
『こうして勝つ』シリーズはそれぞれの系統ごとに詳しく書かれている。主に学生の間で評判で、学校の書店でも売っている。リーエルに勧められ、体育の後すぐに買いにいった。
中でも気に入った戦法が、こけおどし持久戦だ。
弱い威力の魔法を速攻魔法で放ち、そこからも定期的に放ちながら、敵の隙を見て詠唱を展開、キャンセルを繰り返す。相手が防御系の魔法を展開すればそのまま消費魔力の差を活かして持久戦に持ち込むというものだ。
変な名前だし、マイナーな戦法ではあるが、爆炎系魔法は弱い威力の魔法でも爆風や衝撃波などでダメージを与えられるため、この作戦は有効なのだ。
戦いの流れを掴んだところで、四限目も終わった。
「そのまま終礼するぞ。特にいうことはないが、リーエルとアルバートは生徒会室に行くように。そのほかは自由だ、解散」
俺はともかく、リーエルが生徒会室に呼ばれる理由がよくわからない。この前の一件ではなさそうだし、なんなのだろうか。
よくわからないまま、荷物をまとめて生徒会室に向かった。




