動き出す歯車
進学して、初めて迎える週末。いつもと同じ時間に起きたが、特にやることもないので二度寝することに決めた。
再びベッドに潜り込んだとき、携帯が鳴り始めた。画面を見る。リーエルからだ。
「リーエル、どうした?」
『俺だ』
リーエルとは違う声に驚いた。
「先生、何ですか?」
『肝心のお前に声をかけるのを忘れてた。部活だ、今から来れるか?』
「わかりました。飯食ってから行きます」
『なるべく早く頼む』
一度携帯を置き、バランス栄養食をかじる。何年も変わらない美味しさだ。
歯を磨き、身支度を整えた。制服のコートを羽織り、家を飛びだす。徒歩五分の道のりを駆け、二分ほどで到着。だが、この学校は門からが長い。
場所は魔導工学科棟の三階 、俺の教室の上だ。
そこはフロア全体が研究室になっており、魔導工学科の生徒全員を収容することが可能である。
部屋全体に並ぶ十人掛けのテーブル。その一つに、十人が集まっていた。先生、リーエル、シャル、あとは知らない奴が七人。
先生に挨拶し、空いている席、リーエルとシャルの間に座る。
「すまんな」
「十人も集まったんですね」
「俺も驚いてる」
七人集が笑う。今の会話のどこが面白いんだよ。
「まずは自己紹介だな。それからアルバート主体で今後の予定について話し合うか」
「アルバートだ、特に言うことは無い、以上」
「アリシア・リーエルです。これからよろしくお願いします」
「ナッカ・チェルシャといいます。お願いします」
その後は七人集が続く。揃って自己主張が激しい。
名前はシャルの左から時計回りにライノ、クルシュ。この二人は確か同じクラスだったはずだ。続いてスピーク、ピーター、クライブ、トール、エルディ。後半は他クラスだ。
「んじゃ、後はアルバートとリーエルに任せる。俺は前で寝てるから、何かあったら呼んでくれ」
はじめの頃はふざけてるのかと思っていたが、これが彼の素性なのだ。
白い目で背中を見ながら、話を進める。
「お前ら、何したい?じゃ、トール」
おずおずと手を挙げたトールに振る。
「授業とは別に、何かを製作するというのはどうでしょうか」
「いいですね。私は賛成です」
「他にある奴いるか?」
リーエルが賛成した以上、誰も反論できない。シャルは俺に丸投げだし、その俺もリーエルに任せている。
「なら決定か。なら、どう進める」
今度はシャルだ。
「二班に分かれて、互いに競い合うというのはどうかな?」
七人集の顔が曇った。リーエルと離れるリスクは負いたくないらしい。
「それだと偏る恐れがあるよね」
ここに集まったメンバーを考えたらそんなことは無いと思うが。
「僕は、一回目は個人製作がいいと思う。二回目から、それぞれの特徴を考えて班分けしたらいいんじゃないかな?」
「それだエルディ。それでいこう。何を作るかはそれぞれが決めて、判断は先生に。そして二回目の班は一位と二位でのドラフト制にしよう」
まだ納得していない奴がいるが、長くなりそうだからこれでいい。
「ドラフト制?」
ドラフト制という言葉に全員が首を傾げた。
「互いに指名して、同じ人を指名したらくじかなんかで決めることだ」
その説明で、なんとか通じた。そういえば死語だったんだっけ。
先生を起こし、決定事項を伝えた。今日はこれで解散らしい。
明後日、月曜日から授業が始まる。面倒なことに、一限の初っ端からカルロスとの勝負が控えている。
リーエルを誘って練習でもしようか。不本意だが負けるよりマシだ。
そう思っていると、向こうから声をかけてきた。
「アルバート君、予定がなければ明日、練習しませんか?」
向こうもその気だったらしい。
「俺もその気だったが、場所はどうする」
一番の懸念材料はそれだ。公園で魔法をぶっ放すわけにはいかない。
「それなら問題ありません。私の家にはそういった設備がありますから」
「そうなのか……」
明日の九時に学校の前で待ち合わせをし、別れた。人の家に行くなんて、何年ぶりだろうか。




