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ちょっと不思議な鉄道旅

ちょっと不思議な鉄道旅 大空の駅

作者: 白波

 トンネルを抜けると、そこは大空だった。


 あまりにも突拍子のない一言かもしれないが、今までも星空だったり海中だったりと突拍子もないところを通ってきたので今頃驚いたりはしない。


『まもなく、大空駅。大空駅。お降りの方はお仕度ください』


 眼下に広がる街を眺めていると、そんな案内放送が流れ始める。どうやら、この大空にも駅があるようだ。


 せっかくだから降りてみよう。


 そう決めた私は降りる支度を始める。


 そのころになると、列車はどんどんと速度を落とし始めていて、やがて列車はゆっくりと大空駅に滑り込んでいく。


『大空駅。大空駅です。どなた様もお忘れ物ないようにご注意ください』


 到着放送が流れると同時に私は大空駅に降り立つ。


 大空駅は複線の線路に対して、その線路の間にホームが一つある島式の駅で、跨線橋を渡ると簡素な駅舎がある。


 私が下りたところから少し離れたところには“大空駅”と書かれた看板が立っており、ここの駅名を知らせている。もっとも、その駅名自体は列車内のアナウンスで把握しているのだが……


 私をはじめとした乗客を降ろした列車はゆっくりと駅を離れて走り去っていく。


 青い空に溶け込むのではないかと思われるほどのスカイブルーに塗られた列車が去っていくのを見送った後、私は駅のベンチに座り、降りた人たちが改札口の方へと向かうのをボーと眺める。


 次の列車が来るのは二十分後ぐらいだ。それまでの間、駅の中をのんびりと散策してみるのもいいだろう。


 駅のホームの人が大体はけたのを確認すると、私は駅の中を歩きだす。


 今でこそ4両編成が一番長いぐらいの路線だが、かつては10両の列車が乗り入れたこともある駅というだけあって、駅のホームは長く端から端まで歩くのに少々苦労する。


 ホームの一番端までくると、これから私が向かう方向の線路は少しだけ言ったところでトンネルに入っている。そこまでは線路は完全に宙に浮いていて、トンネルの入り口も空中に浮かんでいるという何とも不思議な光景が展開されている。


『まもなく2番線に○○方面の快速列車が4両で到着いたします。危ないですから黄色の線の内側までお下がりください』


 そうしていると、トンネルの向こうにベッドライトが見え、トンネルから先ほど乗ってきた車両と同じ形式の車両を使った快速列車が姿を現す。


 4両編成の快速列車は速度を落としながら、大空駅に侵入し、私から遠く離れた反対側の端のあたりで停車する。


 そんな快速列車を目で追いながら駅の外を見ると、外はトンネルを抜けたときと同様にきれいに晴れ渡っていて、上を見ても、下を見ても雲一つない快晴だ。


 また、日差しもかなり強くじりじりと駅のホームを照り付けている。


 私は“太陽がまぶしいな”などと考えながら、ホームの中でも屋根がある跨線橋の近くへ向けて歩き出した。


『まもなく△△方面の普通列車が参ります。黄色の線の内側までお下がりください』


 私が次の乗る予定の列車の到着放送が流れ始めたのはちょうどそんなタイミングだ。どうやら、駅のホームの端から周りを眺めているうちに思っていたよりも時間が過ぎていたらしい。


 私は少し歩調を早めて、“4両編成の先頭車両はこちら”と書かれた看板の方へと向かう。

 気づけば、向こう側のトンネルからスカイブルーの車両が姿を現していて、今にも大空駅に停車しそうな勢いだ。


 その姿を確認すると、私は走って乗車位置へと向かう。


 それから少し遅れて列車は駅のホームに到着し、扉を開ける。


 そのころになると、ようやく私は乗車口に到着をし、息を切らしながら列車に乗り込む。


「はぁはぁ……何とか間に合った……」


 正直なところ、走って疲れたので座席に座りたいところだが、残念ながら座席は埋まっていて、立っている乗客もいるような状況だ。


『ドアが閉まります。ご注意ください』


 その事実を目の当たりにして、落胆している私の背後で扉が閉まる。


 たくさんの乗客を乗せた列車は少しずつ速度を上げて大空駅を後にした。

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