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Carnival  作者: ハル
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郊野のボスとフルアタック

 周囲を林に囲まれたボスフィールド。上空からは太陽の陽ざしが降りているので、意外とそこは明るかった。

 そしてその光を浴びながら、その中央に鎮座する一体のボスモンスター。


「あれが、ツインスネイクか……。想像以上だな」


 高さで言えば、俺の倍以上。三メートルは絶対ある。間近に行けば、きっと見上げながら戦わなければならないんだろう。

 更には二メートル近い頭が二つ、こちらを待ち構えるように視線を向けている。そしてそこから胴体、尻尾の先までと全長十メートルくらいには及んでいた。

 尻尾と言えど、あんなのに押しつぶされたりしたらひとたまりもないんじゃないか。


「行くぞ」


 ボスの姿にまるで動じることもなく、レインは事も無げに言い放った。

 それが合図となり、俺とコーダはそれぞれ支援を掛け、まずはボスの向きを固定するべくレインと俺が走り出す。


「挑発!ファント!」


 レインが≪ヘイト≫スキルでボスのターゲットを自分に向かせながら、≪盾剣術≫の基本スキルのファントを仕掛けていく。

 ボスの双頭がレインに向くのを確認しながら、その一つを取るべく、レインの少し隣へと立ち俺もまた攻撃を仕掛ける。


「強パンチ!強キック!発勁!」


 もはや慣れてしまった流れるようなコンボを叩いていく。

 コンボとか言っても、俺のこの三つのスキルよりも、レインのファントの方がダメージ的にはでかい。

 うん、知ってたさ。

 ともかく、これで二つの頭はそれぞれ俺とレインに向いたようだ。

 それぞれの首は独立しているらしく、どちらも百八十度回転出来る。こいつ等は度々状態異常のブレス攻撃をしてくるらしいので、俺たちは被らないように相応の距離を保ちながら攻撃していく。

 そして俺たちの行動に呼応するように、四人もそれぞれ所定の位置について攻撃を開始しようとしていた。

 チラリとボスの後ろを見れば、ターゲットの尻尾部分は思いのほか常にユラユラ揺れ動いている。弱点部位は尻尾と言っても、正確に弱点となる範囲は数センチほどだ。あれじゃ狙って当てるのは難しいだろ。少なくとも俺は無理だな。尻尾の動きを注意するので精一杯だ。


「最初に仕掛けるぞ!」


 当初の作戦通り、まずは初めに全力攻撃を仕掛ける。

 合図となるのはシンの行動からだった。


「……行くよ」


 一人離れた位置に立つシンが、一つのポーションを取り出してボスに向かって投げた。

 アシッドポーション。

 対象のDEFとMDEFを下げるアイテムだった。効果は30秒。

 それだけ聞くと素晴らしいアイテムであるのだが、材料が高価であり、量産が出来ないらしい。それでもここぞという時に、そんな貴重なアイテムを使うのだからこそ、アイテム使いなんだろう。

 それにアイテムといえども、デバフ系は通常ボスにはレジストされる可能性もあるのだが、それを相殺するのがシンの持つスキル≪アイテムアップ≫だという。

 アシッドポーションがボスに当たり、エフェクトが掛かる。それと同時にレインがスキルを発動した。


「鼓舞!」


 パーティーの攻撃力、防御力を上げるスキルだ。

 それだけではない、他にもレイン、アリア、コーダがそれぞれ自己バフとなるスキルを発動していく。


「捨身!」

「気合!」

「ボルテージ!」


 これで準備は整った。各々が持てる、最高火力のスキルを叩き込んでいく。

 ま、俺は大して変わらないんだけどな。まあそれも仕方ないだろう。一応頑張って≪体術≫スキルを叩き込みはしていくけども。


「連突!」

「精密射撃!」

「哀愁のエレジー!」

「アクアセイバー!」


 それぞれ四人が持つ最高火力のスキルが次々とボスを襲う。

 やはり、と言うべきか。一番火力が出ていたのはシュヴァルツの≪魔法剣≫だった。

 ライアがいない分、支援の上昇率は下がるが、アシッドポーションの弱体と鼓舞の増強、属性も相まって、恐るべきダメージだ。

 これで性格があれじゃなきゃ、本来は引っ張りだこだったんじゃないだろうか。あれはあれで、損な性格だよな……。

 そしてそれに次ぐダメージはアリアの≪弩術≫だ。

 精密射撃はその名の通り、ボスの弱点部位の尻尾を的確に捉えて大ダメージを出していた。それを見た瞬間、マジかと目を疑わずにいられなかった。

 背後から狙うように、一直線に綺麗に矢が刺さったのだ。あんなとこを狙うなんて無理だと思った分、その印象は遥かに大きかった。何よりも戦闘中は、さっきまでと反して一言も喋らずに、狙いすましていることだろう。その分、一人口うるさいシュヴァルツが憐れでもあるけどな。

 レインとコーダの攻撃はさほど変わりはしなかった。元々どちらとも本来のロール的にはアタッカーがメインではないが、それでも俺に比べたら遥かに高いダメージだ。

 盾剣はそもそもタンクもアタッカーもこなせるものらしいので、納得いくものではある。

 想像以上なのがコーダの攻撃だよ。

 哀愁のエレジーは水属性な分、ダメージ倍率が上がっているはずだが、それでも高い。その一つが≪ボルテージ≫の効果である怒り状態だからなんだろう。それに≪演奏≫もCHM依存な分、レベルが上がるほどにコーダの攻撃力は高まっている。

 初めて一緒に戦ったボスのオーク戦の時が、嘘のようだ。あの時は三人揃ってダメージに嘆いていたってのに。

 俺たちの中で一番早い成長は絶対にコーダだろうな。


「残り10秒」


 シンのカウントと共に、CTを空けた攻撃を再度叩き込むアタッカーたち。

 攻撃手段がないと思われたシンでさえ、≪投擲≫によって本来武器と思われる剣を何本も無造作に投げていた。

 それに加え、≪魔法剣≫で多大なMPを消費したシュヴァルツにもきちんとMPポーションを投げ与えている。

 いったい彼が一戦に掛ける金額はいくらになるんだ……。

 ちなみにシンのMPポーションも限られているので、≪魔法剣≫を使うのは限られた場面だと釘は差している。でないと調子に乗ってシュヴァルツはいくらでも使うだろうしな。


「止めだ!アクアセイバー!!……フッ、雑魚め……」


 効果時間内の最後にシュヴァルツが一撃を叩き込み、なぜか余韻に浸っていた。

 ホント馬鹿だ、あいつ。

 もちろんそれは止めの一撃なんかではない。

 ここまでのフルアタックでようやく、ボスのHPが二割削れたくらいだ。

 僅か30秒でそこまで削れたのなら、かなりいい傾向だろう。

 自己バフのスキルたちにはCTがそれぞれ数分は存在している。ここからトリガーまでは、次のアタックまで温存しつつ安定していかなければならない。

 そう考えれば、俺の見せ所はここからだよな。

 さて、集中して頑張りますか。

 ボスと睨み合いながら、相手の出方を窺った。

 俺の頭の中には雑魚モンスターであるスネイクを重ねる。

 頭が動きだした。

 後ろへ助走をつけるかのような予備動作。

 噛み付き攻撃だ。


「受け流し!」


 頭が動いたと同時に発動し、その攻撃をいなす。

 スネイクの動きは予想以上に素早い。初めて戦った時は気づいた時には腕が噛まれていたのだ。それを思い出しながら、受け流すことに成功する。

 ボスはそれでも立て続けに連続で噛み付き攻撃をしてくるので、タイミングを見計らうように受け流していく。


「やるな」


 近くから余裕そうなレインの賛辞が聞こえてきたが、生憎と俺にはそっちを見る余裕はない。

 それに当然ボスの攻撃なんてこれだけじゃない。

 緩急つけるように、同じ予備動作から今度は頭自体を使った体当たりならぬ、頭突き攻撃もしてきたことにはビビった。一拍遅れたその攻撃に、ギリギリで受け流しは間に合ったのだから幸いだろう。

 そのまま同じような攻防を繰り返しつつ、しばらくするとボスの動きが変わってくる。


「気を付けろ!」


 全体に注意を促すようにレインが言うと同時に、ボスが大きく動き出す。

 軽く息を吸い込むと同時に二つの頭からそれぞれ違う色のブレスを吐きだした。

 早い。確かに避ける間もないほどの間隔だった。


「くっ……!」


 俺には黄色いブレスが掛かり、少しのダメージと共に状態異常麻痺に陥る。

 身体を少し動かそうとするだけで、電流が走るような感覚に痺れを起こしていた。

 辛い。が、全く動けないほどではない。無理に身体を動かすイメージでいけば、立ち上がることも可能だった。最も走れそうには到底なかったけど。

 隣のレインには緑色のブレス。毒状態に陥っていた。

 当然、どっちも放っておくわけにはいかない。打ち合わせ通り、シンがレインに向けて解毒ポーションを、そしてシュヴァルツが俺に≪回復魔法≫のリカバーを掛けて治療する。

 それで立て直そうとしたのも束の間、すでにボスは次の行動へと移っていた。

 身体を震わせ、その尻尾が大きく動く。


「危ない!」


 右から左へ。近くのものを薙ぎ倒すように、大きな音と共にボスの尻尾が背後を薙ぎ払っていく。

 危険を察知していたコーダはすでに攻撃圏外、それでもその風圧にもダメージ判定があったみたいでコーダもアリアもダメージを負っている。

 そして直撃を受けたのは俺に≪回復魔法≫を掛けていたシュヴァルツだった。

 俺と同じ防御力が紙同然のシュヴァルツはHPをレッドゾーンへと移行させながらアリアの後方まで吹き飛ばされていく。

 めっちゃギリギリじゃねぇかよ。下手したら絶対死んでただろ。

 シンがすかさず射程圏内まで駆け寄り、HPポーションを投げて事なきは得た。

 だが、俺にとっちゃ他人事じゃない。俺とシュヴァルツは防御力はほぼ変わらない。レベルが俺の方が低い分、むしろあれを喰らったら即死してもおかしくはない。もちろん、他の攻撃も同様だ。


「しっかし、えげつねぇな。前衛と後衛に時間差攻撃かよ」

「だから避けろっていったじゃない」

「へいへい。その通りで」

「醜い怪物め……。よくも、この僕に攻撃を!」


 どうやらシュヴァルツは怒り心頭のようだった。大丈夫か、あいつ。


「油断するな、まだまだ長いぞ」


 未だボスのHPは三割ほど削れたくらいだ。トリガーまではまだ掛かりそうである。

 気を取り直し、再び集中して俺はボスに向かい合った。



キャラ紹介 アリア

性別:女

身長:154cm

レベル:16

スタイル:弩使い

スキル:≪弩≫≪弩術≫≪器用さ増加≫≪気合≫≪遠目≫≪索敵≫≪猛攻≫≪素早さ増加≫≪罠≫≪隠密≫


レイン、シンと三人で組んでいる固定パーティーの紅一点。マイナースタイルの一つ。

勝気で言動も荒く敵を作りやすいが、努力家の一面もある。それ故、自分にも他人にも厳しい


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