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Carnival  作者: ハル
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ナルシーのスタイルとスキル

 戦闘が終わった後は、安全な道を進みながらもその振り返りだ。いろいろと聞きたいことばかりだが、やはり一番はシュヴァルツさんだろう。何なんだ、あの戦い方は。

 ≪剣術・片手≫までは全然問題ないし、それだけ見れば確かにダメージは大きく強かった。少なからずレベル差もあるだろうし当たり前なんだが、とにかく驚いたのは彼が≪火魔法≫を使ったことである。

 魔法スキルのほとんどは適正武器とスキルに杖が必要だ。それらを必要としないものも勿論あるが、少なくとも基本の魔法スキルである≪火魔法≫はそれに該当する。

 魔法使いのスタイルとして武器に杖と、スキルにも≪杖≫を付けることで本来の実力を発揮できるのだ。≪火魔法≫スキルさえあれば魔法を放てるが、例えINTのステータスをあげていようがそれらがないと強さはイマイチでしかない。実際他の武器を装備する人が魔法スキルを取ることは滅多にないと聞いていたはずだ。

 だが、シュヴァルツさんはどうだ。剣を武器にしているくせに、なぜか≪火魔法≫を取っているらしい。しかしそのダメージはハッキリ言ってそう高くはない。むしろ無駄撃ちにしか思えないくらいには。そう考えるともしかしたら≪杖≫スキルもないかもしれない。

 ならば、≪火魔法≫の理由は?そう考えていくとキリがないくらいだ。

 結局は本人に尋ねるくらいしかない。もちろんそれを話すかどうかは本人次第で、パーティーを組んでるとは言え強要できることでもない。

 まあだが、これくらいなら問題はないだろ。


「シュヴァルツさんのスタイルって結局何なんですか?」


 そもそもアタッカーであることしか聞いていない。そう聞くことは自然なことだし、みんな気になってたのか耳を傾けさえしていた。


「何だい、少年。やっぱり僕のことが気になるのかい?」

「いや、そういうのはいらないんで」

「……くっ、君って奴は……」


 所々うざったいが、まあ初めて会った時ほどのしつこさはやはりなくなっている。どうもメンタル面が弱い一面もあるようだ。


「まあ、仕方ない。僕のスタイルは魔法剣士さ!」

「魔法……剣士……」

「驚いただろう?まあレア中のレアでもあるしね」


 そんなスタイルもあるのか。世界は広いんだろう。

 ……なんて、素直にそう思うとでも思ったのか?この人は。


「魔法剣士と言う割には魔法のダメージ低すぎません?それに俺の知る限りじゃそんなスタイルだったらスキル枠が圧迫される気がするんですが」

「……そ、それはだね……。まだ完成していないし……」

「でもスキルは十個あるんですよね?」

「まあそうだが……。そうは言ってもだな……」

「それで、何で魔法剣士なんてスタイルを選んだんです?」

「そんなの決まっているだろう!響きが格好いいからさ!!」


 うん。そんなことだろうとは思ったよ。

 確かに響きは格好良いし憧れるのも分からなくはないけどな。

 けど魔法剣士っていろんなゲームを見ても器用貧乏でしかないイメージだ。ましてやスキルが有限のこのゲームで果たしてそんなことが成り立つことが出来るのか。少なくともそう簡単にできることではないのは間違いない。


「言いたくなければいいんですけど、杖も装備してなければ、≪杖≫スキルもないんじゃないですか?それで≪火魔法≫ってダメージもほとんど通ってなかったし……。ちなみにステータスって……」

「ほとんどSTRとINTしか上げてない。INTを上げてるのにまさかこれほどダメージが出ないなんて僕も思わなかったんだよ。仕方ないじゃないか」

「純粋な質問ですけど、今からスタイルを変更するのは……?」

「嫌だね!分かっているのか?魔法に剣士だぞ?両極端を操るなんて、それこそ男のロマンじゃないか!誰が何を言おうと僕はこの道を行くんだ!」


 ヤバい、その熱意は俺にもちゃんと伝わってきた。言ってることは少し馬鹿な気もするが、自分のスタイルを貫くという点では激しく共感出来るとこがある。不本意ではあるが。

 まあ同じようなマイナーなスタイルの俺がどうこう言うのもおこがましい。素直に応援することにしよう。

 そんな意思を伝えると、シュヴァルツさんは調子に乗ったように笑いだした。


「やっぱり少年には分かってはしまうのだな、この魅力が。ならば見せるしかない。魔法剣士たる僕の力をね!」

「あ、はい……」


 まあ当たり前だが、期待なんて何もしてないけどな。

 そしてタイミング良く、シャーナさんが≪索敵≫によって四体のモンスターグループを見つけた。進行方向も同じなので、交戦するべく道を進んでいく。


「ふぅ。あいつらはいないみたいね」


 モンスターの群れを確認すると同時に、ライアが安心するように告げた。

 現れたのは二種類のモンスターが二体ずつ。

 ヒュージマウスとトゥースバットだ。鼠の何十倍と人間近く大きくなったその姿と、牙を最大限に特徴とする蝙蝠だ。見た目だけで言えばコックローチが最強かもしれないが、普通にレベルも強さもこいつらのほうが高い。数も増えたし、油断は出来るわけもなかった。

 まず今回は、きちんと最初に支援を掛ける。三人分のシンクロは確かに今までよりも大きな効果をもたらしていた。


「で、タクト、どうすんだ?」


 確認するようにコーダが尋ねる。基本的にはさっきと変わらない。


「俺がトゥースバット二体を持つから、エッジさんとシュヴァルツさんでそれぞれヒュージマウスの方を」

「おいおい、歌使いのお前が二体も持って大丈夫なのか?」

「どうですかね。ただ同じバットなら多分大丈夫だとは思うんですよ」


 そうだ。個体としては違えども、種族としてはトロスト鉱山で戦ったバットと同じだ。自惚れではないが、俺はあいつの超音波を避けることが出来た。もちろんこいつが同じ攻撃をするとは限らないが、今は≪柔術≫もあるし何とかなるだろう。ただ敵を引き付けるくらいなら。


「いや、ここは俺に任せろ。ヒュージマウス二体を俺が持つから、シュヴァルツさんはトゥースバットの方を」

「エッジさん!?」


 何か策があるのか。そうでなければエッジさんが自らそう言うわけもないか。無駄に自己犠牲があるような人でもないはずだし。ここはエッジさんを信じてみよう。


「まあどちらでもいいさ。どのみち僕の力が炸裂するんだろうからね」

「……一応期待しておくよ。んじゃ行くか」


 まず俺とシュヴァルツさんがそれぞれトゥースバットに攻撃を仕掛ける。

 その間エッジさんはヒュージマウスの攻撃範囲に入りながらも、何かを取り出して地面へと設置していた。

 あれは、まさか……!

 そのままヒュージマウス二体はエッジさん目掛けて走り、彼が何かを施した地面へと乗り出す。

 途端、その地面から罠が発動する。


「よし、成功だな」


 嬉しそうにエッジさんは笑っていた。

 あれは見たことがある。たまたまエッジさんの戦いを見た時に使っていたものと同じだ。

 ≪罠≫スキルのトラバサミ。

 見事それは片方のヒュージマウスを行動不能とさせていた。もちろんその隙をコーダとライアも見逃さず、エッジさんも含めてそれぞれ攻撃していく。

 無防備と化していたヒュージマウスは瞬く間にその姿を消す。


「なっ!?あの男、僕の活躍を奪う気か!?」


 その状況に焦ったのは敵でなく、味方のはずのシュヴァルツさんだった。さすがだ、その考え方は。


「少年!ならばこっちは二人でこいつらを倒すぞ!」

「いやいや……」


 何を張り合っているのか。普通に待てばいいだろう。

 もちろんそんなことこの男に通じるわけもない。


「トゥースバットは闇属性か……。弱点は光だが、生憎とまだないからな……」


 ん?

 何を言っているんだ。

 獲物を見つける捕食者かのようにシュヴァルツさんはトゥースバットと相対している。

 それだけを見ると、僅かにその後の行動が気になりシュヴァルツさんから目が離せなかった。

 そして彼が放つ。≪剣術・片手≫でも≪火魔法≫でもない、見たこともないスキルを。


「喰らえ!!……アイスグラディウス!!」


 突如として、シュヴァルツさんの剣が冷気を集めながらも、その一撃がトゥースバットにダメージを与える。


「嘘、だろ……」


 一撃、とまではいかない。だが、それでもその攻撃は軽くトゥースバットのHPを半分以上削ることに成功していた。

そして信じられないのが、その攻撃に一番驚いたのはまさかの本人だったということだ。


「あ、あれ……?こんなに強かったか……?」


 はあああああああ!!!???

 何なんだ、その発言は!


スキル情報 罠


――≪罠≫ 技能スキル

あらゆる罠を仕掛けることができる。

適切ステータス:DEX


レベル1 トラバサミ

レベル5 地雷

レベル10 ポイズンガス

レベル15 睡眠ガス

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