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Carnival  作者: ハル
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危険人物とメンバー確保

 体格は俺とそう変わらなそうだ。髪色は茶髪なんだが、ところどころ青いメッシュが入っている。動きやすそうな装備に帯剣してることから剣士の人だと思われた。そして何より、髪をかき上げる仕草から漂う何かと自信満々なその顔。

 本能が危険だと俺を告げていた。

 どうする?目が合ったけど、無視したらさすがに失礼か。

 けどなんでかこの人とこれ以上話してはいけないと何かが告げている。

 そう迷ったほんの二秒。先手を相手に許してしまった。


「まさか僕に会えたことで感激しているのかな?そんなに照れる必要もない。僕の顔が美しすぎるのが罪なのだから」


 あ、ヤバい。ガチなやつだ。


「いえ、なんでもないです。……さてと待ち合わせの時間だ。もう行かなきゃ」

「え、なんて?おい、君?ちょ、ちょっと……!!」


 追いかけてきそうな雰囲気があったので、俺は一目散に明後日の方向に逃げ出した。

 あれは、何だろう。

 未確認生物にでもあったような気分だった。

 とりあえず振り切って、追いつかれてないことは確認した。

 さすがに無視をしたのはまずかったか?

 でも絶対あれ話が通じなそうだったよな。何か関わったら大変な目に合いそうだったし。

 少し申しわけなく思ったものの、結局自分の安全を取って気にしないことにした。


「マーケットから遠くなったか……」


 どうやら反対方向に走ったみたいだ。まあここから歩いて戻ればちょうどいい時間だろう。

 新しく手に入る装備を思うと自然と足取りも早くなる。

 この辺りはNPCの商店エリアか。

 レベルが上がるほど、店売りの武器防具では物足りなくなってくる。王都にあるくせに、プレイヤーの数はそんなに多くはない。果たしてそんな状況を彼らはいったいどう思っているのかは気になった。

 もちろん中には有用なものも売ってるし、完全に寂れることもないんだろうが。


「あれ、もしかしてタクト?」


 ふと自分の名を呼ばれて、振り返った。


「エッジさん?」


 長身の青年。黒髪に爽やかな笑顔が光る。前掛けエプロンを着用しており、俺が最近知り合った生産プレイヤーの一人だった。

 メインスキルは≪料理≫であり、同じ料理好きと彼も正式組なことから、意気投合して仲良くなるには時間も掛からなかった。始まりの街にいた時も<団欒>のゲンゾウさんにお世話になってたと言い、それこそ一番盛り上がったもんだ。

 出会った切っ掛けとしては、エッジさんもヘレンさんと同じアイリーン商会の所属で二人が一緒にいた時に紹介してもらったのである。


「こんな所で会うとはな。ヘレンさんに装備依頼してたんじゃなかったか?」

「いや、買いにきたわけじゃないんですよ。ちょっと逃げてたらここまで来ただけで……」

「逃げて?追われてんのか?」


 心配して詰問しそうになるのをとりあえず軽く誤魔化しておいた。

 どうやら進行方向は同じなようだったので、一緒にマーケットの方まで歩きながらも話をしていく。


「エッジさんは何でここに?」

「材料の仕入れにな。生産プレイヤーはこの辺のNPCの人たちとは懇意にしてるからな。結構安く仕入れられるんだ」

「そうなんですね。生産は順調みたいですね」

「まあな。もともと≪料理≫を取ってる人が少ないせいか未知な部分も多いけど、俺としては大いに楽しんでるぜ」


 本当に見ていて楽しそうにエッジさんは語った。

 フリスタの料理はただの嗜好品でしかない。空腹度があるわけでもなく、何らかのバフがあるわけでもない。実用的でない≪料理≫はただの趣味扱いで、それをメインとしているエッジさんも言い様によっては俺と同様マイナースタイルなのだ。

 そこで思い出した。


「そういや、エッジさんってマイルームもう持ってます?」

「ん?あぁ、あれな。まだだな。採取スキルもちゃんとしたものがないから、正直きついんだよなぁ。それにギルドホームがあるから、急いで欲しいわけでもないし」


 なるほど。エッジさんらしい解答だ。

 それならいいだろう。


「俺もうすぐフレンドの奴らと地下水路の攻略の方法で取ろうと思ってるんですけど、まだパーティーが全員見つかってなくて良かったらどうです?つっても攻略できる保証なんてないんですけど……」

「地下水路の攻略?タクトが?けどお前……」


 エッジさんも勿論俺のスタイルを知っている。

 地下水路の攻略は普通は腕に自信のあるプレイヤーが選ぶ方法だ。俺みたいな不遇扱いのスタイルが選ぶ方法ではない。それを分かってるからこその言葉だった。


「俺も合わないってのは分かってるんですよ。でも友達の一人がやりたいって言って、そいつもまあマイナーなんですけど、考えたら面白そうかなって……。なんで決して強いパーティーってわけじゃないんで、もし良ければって感じですね」

「なるほどなー。まあ挑戦し続けるのは悪くねぇよな。その姿勢は好きだぜ。けど俺が生産プレイヤーなの知ってるだろ。言っとくが弱いぞ?」

「そうなんですか?でも肉の調達とか自前って言ってたじゃないですか。少なくともこの辺でソロで戦えるってことですよね。なら大丈夫ですよ」

「まあそりゃそうだけどよ……いや、いいか。折角誘ってくれたんだし俺も入れてもらうか」

「本当ですか!?それじゃ早速あいつらに連絡しときます」


 パーティーメンバーを一人確保できたとこで幸先が良い。

 それにエッジさんは謙遜していたが、彼が普通に強いのを俺は知っている。

 つーかむしろ、俺よりも強い。その場を偶然にも発見したのだから間違いはないのだ。

 あの時は自分が憐れでそっと立ち去ったのもいい思い出なんだよな。

 コーダとライアに連絡をいれると、ライアからもヒーラーが見つかったとの連絡があった。

 まじか!

 やっぱりヒーラーは大事だもんな。ちゃんとしたヒーラーがいるといないとでは違う。

 残るは後一人。出来ればタンクが欲しいとこだが、見つかるかどうか。


キャラクター紹介 エッジ

性別:男

身長:181cm

レベル:17

スタイル:料理人

スキル:≪料理≫≪生産≫≪器用さ増加≫≪剣術・短剣≫≪運増加≫≪短剣≫≪狙う≫≪?≫≪?≫≪?≫


王都で出会った料理をメインとする生産プレイヤー。何でも卒なく器用にこなすことも出来る。

ガチ勢ほどではないが、戦闘もある程度出来ることもあり、食材も自分で調達することがほとんどである。

ギルド、アイリーン商会に所属しており、そのマスターからは大層気に入られている。


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