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Carnival  作者: ハル
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最近の情勢とこれからの目標

 イベントが終わってから数日の時が過ぎた。

 現状公式イベントの告知もなく、夏休み真っ盛りな学生たちが中心となりながらフリスタの世界はどんどんと進んでいく。

 攻略組であるイサナギたちは、イベントも終わりようやく攻略に集中していくことになり、しばらく一緒に遊ぶことも出来ないだろうという連絡があった。

 イサナギたちが所属する攻略ギルドのグロリアスは、なんでも王都の北から行ける山都を経由して東へと進んでいこうとしているらしい。

 最前線としてはもう一つあり、そっちは王都の東方面で森都経由で更に東へと突き進んでいるのだそうだ。そっちを主に攻略しているのは、これまた攻略ギルドでもあるファングだそうだ。

 グロリアスとファングは互いにライバル同士として、どちらが先に攻略を進めるかと日々研鑽しているらしい。最も外聞的にも、大多数がグロリアスを応援しているのだが。

 残る三大ギルドの自由騎士団と陽炎は、どちらも手堅く同時に攻め込んでいるらしいが、やはり先の二つのギルドには後れを取っていると言っていた。

 まあどちらにせよ、俺にとってはまだ遠い話だ。

 始まりの街から王都へ入ったなら行き先は三方向だが、北と東は同難易度で攻略最前線でもある。となると、残りの南が、俺たち正式組の次なる行き先となるのだ。難易度的に言うならば。

 もちろんそれに従う必要などないし、レベル上げが必要だが直接北東に進むのもいい。それこそプレイヤー自身の自由でもある。

 そんな俺はこの数日はソロで過ごして、王都の探索を主に、レベル上げを王都南のマップのブローテン郊野で行っていた。

 コーダとライアとは密に連絡を取っているが、三人のパーティーでは効率が悪いのでレベル上げは基本各自でやっている。≪シンクロ・舞曲≫のスキルのおかげで、俺たちは切っても切れぬ関係になっているからだ。

 ブローテン郊野で主にストレイウルフを狩り続け、ようやく素材がたまった俺は王都のメインストリートにあるマーケット市場までやってきた。

 数多くの端末が置いてある巨大な電光板を中心とし、その前後に多くの生産プレイヤーたちが露店を開いている場所だ。

 この電光板と端末は王都の各地や各都にも置いてあり、接続することでアイテムや装備品を直接売買できる仕組みで、まあよくある競売システムだ。

 ただ単に売買をするだけならこれを使えばいいだけなのだが、それとは別に多くの生産プレイヤーはこの王都のメインストリートに露店を広げている。これは直接にプレイヤー同士で交渉し合うことが目的だからだ。

 俺も後者の方が楽しいので、暇があればぶらついていろいろな品物を見て交流を図っていた。その中でも何人かのプレイヤーと懇意な話に発展し、そのうちの一人が≪革細工≫を持つベータ組のプレイヤーだった。

 俺は今彼女のもとを訪れていた。


「こんにちは、ヘレンさん」


 露店で接客をしている彼女へと声を掛けた。

 ブロンドを肩まで流し、特徴ある青い澄んだ瞳が煌めく。見るからに西洋の人を思わせる美しい彼女は、まあもちろんただのキャラメイクだ。

 名前はヘレンさん。丸腰だった俺に興味を持ってくれて、装備の相談をすると素材持ち込みで格安で作ってくれると言ってくれた心優しいお方である。まじ女神。

 そんでその素材がストレイウルフの落とすウルフの皮である。レベル上げがてらこれらを集めて、こうしてやってきたのだ。


「あら、タクトくんじゃない。もしかしてもう集まったの?」

「はい。これが言われてた量です」

「本当だわ。さすが若い男の子ね。仕事が早いったら」


 遠回しに学生の夏休みを責めているのは、彼女が社会人だからである。そこは今だけの特権なのだから有効活用するのは当然だろう。まあそれはそれだ。


「うん、いいわ。それじゃこれから作るから、全部出来上がるには三十分くらい掛かるからまたそれぐらいに来てもらってもいい?」

「分かりました。お願いします、ヘレンさん」


 すると彼女はすぐにでも取り掛かるかのように、この場を離れていく。

 向かったのは居住エリアだ。そこにはプレイヤー専用のハウジングがあり、そこで生産活動をするのだろう。ちなみにそこは完全なフィールドとは別の扱いとなっており、関係者やそれを許された者以外は訪れることが出来ない。

 プレイヤーはあるクエストを受けることで、マイルームという小さなハウジングを得られることが出来る。そこは基本的に自分以外誰も出入りが出来ない自分だけの空間を得られるのだ。そこに出入りできるのが居住エリアである。

 このマイルームは最初は六畳一間ぐらいの何もない部屋でしかないが、お金を払ったりすることで拡張したり、設備を増やすことが出来る。そのうちの一つが生産設備で、これがないと生産系のスキルは成功率を落としてしまうのだそうだ。

 またマイルームとは別で、ギルド単位で所持するギルドホームも存在する。これは当然ギルド内での共有扱いであり、設備を増やしていったりするのは基本的にマイルームと同じだがその項目はだんぜんギルドホームのが多い。それにはいろんなものがありこれらのメリットこそ、ギルドの加入への大きな理由としてる人がほとんどなのだ。

 正式組も金がないから生産設備を増やすことは出来なくても、ギルドのを借りればすぐにでも可能なのだから。

 ヘレンさんが向かったのもギルドホームで、そこは生産系ギルドのアイリーン商会のものだった。当然生産ギルドなのだからその設備も一流であり、マイルームで得られるものとは比べものにならないらしい。

 ヘレンさんは腕も立つみたいだし、失敗の心配はないだろう。三十分後にまたここに来ればいいか。


「さて、どこで時間を潰すか」


 未だマイルームを持ってない身としては、固定のホームがない。

 これでも始まりの街にあった<団欒>のような食事処を探して王都を散策しているのだが、飲食店は多くてもこれだという店がないのが現状だ。

 まじであの<団欒>とゲンゾウさんが恋しいっていう現実。嫌だわ。

 ただ始まりの街と違うのは、ここではその飲食店にもプレイヤーが多いことだろう。

 俺と同じでマイルームを持たない正式組のたまり場だったり、単純にそこの料理を期待してだったりと様々であるが。

 さすがは人の多い活気のある王都と言ったとこなんだろう。

 とりあえず近くの喫茶店でいいか。

 マーケットの近くとあって、そこは結構賑わっている店だ。味は普通なんだけど、利便性もあって俺も何度も足を運んでいる。


「いらっしゃいませ」


 店員に出迎えられながらも、案内された席に腰を落として考えを巡らせた。

 装備の更新も出来そうで、ひとまず第一段階の目標はクリアだ。

 次なる目標は、さっき言っていたマイルームのゲットだ。

 やっぱり一人の空間って大事だもんな。その存在を知った時、喉から手が出るほど欲しがったものだ。

 そのクエストに関してはクリアの方法が三種類ある。それぞれいろんなプレイヤー向けに用意されていたんだろう。

 一つ目は指定のアイテムを納品すること。もちろんそれは数種類に及ぶし、必要数も多い。主に戦闘を苦手とする生産系プレイヤーへのクエストだ。逆に俺みたいにそれ系のスキルを持ってないと果てしなく難しい。

 二つ目は王都周辺のマップにて、指定のモンスターを指定数倒すこと。時間は掛かるが、ある意味誰にでも出来る。俺が正直一番やりたかった方法である。

 そして三つ目がダンジョン、王都地下水路のボス討伐である。

 戦力が整っているのなら、一番手早く済ませられるものだ。ただしこれはどちらかというとヘビーユーザー向けなんだろう。ただしあまり人気は少なく、推奨されていない。

 俺がこれらのクエストを受けようとしたとき、真っ先に二番目を選ぼうとした。なのに、それに異を唱えるやつが隣にいたのが失敗だった。


『は?こんなのボスの討伐が一番面白そうじゃん!タクトとライアもそう思うよな!?』


 確かに気持ちは分かるが、ボスの討伐って普通に考えて一番難しいだろ。

 コーダの意見をどうにか説き伏せようとしたものの、オーク戦で死亡したライアがリベンジしたいのかコーダに加勢したおかげで、俺の意見が通ることはなかった。

 三人で一緒にやることはすでに決めていたために、結局は地下水路のボスを討伐することに決定しまったのだ。

 ただし、ここでまた問題が一つ浮上。

 地下水路は適正レベルが最低でも15からで、俺たちのレベルでは足りなかった。そこで各自レベル上げと装備調達を課題としてそれぞれ過ごしていたのだが……。

 どう考えてもこの間に二番目のクエストはクリアできたんだよな。

 まあそれを言ってももう遅い。

 すでに俺とコーダはレベル16。ライアも15とギリギリだが上がった。肝心の問題としては他のパーティー集めである。

 マイルーム獲得のクエストには需要があるから、人は集まりやすそうだが、王都地下水路の攻略は所謂ガチ勢が選ぶものである。

 そんな奴らが果たして、俺たちのパーティーに協力してくれるかと言うと……。

 まじで、気が重い。


「はぁ……どっかに俺たちと同じような王都地下水路攻略しようとするマイナーなやつがいればな……」


 そんなやつがいればどれだけ助かることだろうか。

 まあいるわけないか。

 そう、ため息をもう一度吐くと――


「ちょっと君、今何て言ったんだい?王都地下水路の攻略?それは僕の力を貸して欲しいってことかい?」


 背中合わせになっていた席から、突然放たれた言葉。

 その意味も分からずに振り返って呆然とその瞳を見てしまった。


フィールド紹介 王都バランタイン


国内で一番広い都。冒険者の多くが滞在している。王都の中心には豪華ともいえるバレンティア城が悠然と構えている。冒険者は紹介がなければ立ち入ることは禁じられている。

国王は冒険者が持ち寄る宝と話を何よりも楽しみにし、それらを持ち帰る名高い冒険者を待ち続けている。


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