黒騎士と労い
激戦の末、無事にオークを倒せた俺たち。死人が出てしまった以上、完全勝利とは言いがたいが、それでも初めてのフィールドボスを倒せたことは大きい。
俺にとっては三体目のボスではあるが、それでもこの自分たちの力で勝ち取った勝利は大きかった。
「だから言っただろ!俺はやれば出来るんだってな!」
「ま、俺たちだけじゃ無理だったけどな。タクトさんたちがいなきゃ勝てなかったぞ」
「それはまあ……ほんのちょっとっつーか、まじでちょっとのちょっとだけだかんな?」
どんなツンデレだよ、こいつは。
けどまあ、少しは最初のイメージを払拭したと思ってもいいのか?
俺としてはすでに可愛い弟のようなもんだと思ってる。
ダイチはまあ……見ようによってはだけども。
「照れてんだなあ、カインは。ま、実際こいつらいなかったら俺らも勝てなかったけどな」
笑いながらそう分析するコーダの言う事も間違いではない。むしろ俺たちの方が戦力的には低かったし、何よりカインの働きは俺たち全員の中でも一つ頭抜けていたはずだ。
こいつなら本当に、自由騎士団の精鋭クラスにまで成長するのかもしれないな。
「さて、そろそろライアとヒューが到着する頃だな」
「にしても可哀想だな。疲労状態でここまで歩いてくるなんて」
そう言うコーダの顔は決して言葉通りではない。むしろ面白がってる節があるんだろう。
フィールドボスを倒したとしても、戦闘不能状態からは自動的に解除することはない。蘇生方法がない以上、二人は一度始まりの街に戻ってまた合流することになっている。
パーティーを組んで倒した以上、六人揃って王都へと足を踏み入れたいと言った俺の提案に、誰も反対をしなかったからだ。
程なくして、二人は確かに俺たちのもとへとやってきた。
しかし、誰も予想だにしない状況で。
「おい、タクト!なんかこっちに走ってこないか!?」
「ん?あれは……馬、か……?」
真っ先にコーダがそれに気づき、俺も確認するとそれは確かに馬のようだった。真っ直ぐにこっちへ走っている。
まさかモンスター!?
と危険を察知したのも束の間、カインの声でそれが違うのだと知る。
「あ!あれってリオンじゃんかよ!」
「うぉっ!本当じゃねぇか!」
興奮気味に語るカインとダイチ。どうやらあの馬の名前なのだろうか。
とにかく知っている馬なのだろう。
年相応の燥ぎ様になんだか可愛く思えた。
その馬には確かに敵意がないようで、純黒の毛並みがここからでもよく目立つ。
そして近づいてくれば分かったことだが、その背には人が乗っている。一人ではない。
「あれって……」
「おいおい、あの【黒騎士】ってやつか!?」
そう、アレンさんだ。
純黒の鎧に、手綱を握る馬。その風貌は確かに【黒騎士】そのままだった。
そして彼の前後に乗っているのはライアとヒューだ。心なしかライアは目を回しているのは気のせいか。
彼らが俺たちの側へと到着したのはすぐで、辿り着いたと同時に馬から降りて彼は笑った。
「お疲れ、お前たち。無事にボスを倒せたようだな。まあ、若干二名死んでしまったみたいだが」
「アレンさん……」
まじかよ。
これがあんな軽薄そうな人と同一人物だなんて。
黒馬から颯爽と降りる姿は、本当にゲームや漫画の中の騎士とそっくりだった。
「ハハッ、驚いたか?こいつは俺の相棒でリオン。よろしくしてくれよ」
「かーっ!マジかよ、ヒュー!お前リオンに乗れたとかズルすぎるぞ!」
「羨ましいな。俺も乗りたいのに……」
「ライアも羨ましいぜ!何だよ、その馬!カッコよすぎだって!」
興奮するカインたちを他所に、当の二人はグッタリしてるのは気のせいじゃないだろう。
まあ疲労状態だもんな。そうなるのは分からなくはない。
にしても……。
「自由騎士団ってのは本当に騎士なのか……」
ゲーム内で馬の情報は何も聞いてなかったな。そう簡単に手に入れられるものだとは思えないけど。
それでもそれを揃えてる自由騎士団とはさすがと言うべきなのか。
そう俺は思っていたのだが、どうやら違っていたらしい。
「ま、驚くのは無理ないよな。言っとくけど、こんな毛並みのいい馬を持ってるのはこいつだけなんだぜ。なんつーの?豚に真珠だっけか?」
「そうっすね。騎乗しながら戦うことが出来るスタイルだからこその、【黒騎士】。アレンさんはこう見えても、有名中の有名プレイヤーなんすよ」
嘘だろ。そんなに凄いプレイヤーなのか。
つか二人の発言に所々ディスってるのは気のせいじゃないんだよな。
「お前らな……褒めるならもうちょっとちゃんと褒めろって」
本人も言ってるぐらいだしな。
「タクトたちは、ちゃんと俺を敬えよ?その方が可愛げもあるってもんだしな!」
「はぁ……」
いや、それは別だろーな。どっちかつーとカインに賛同だ。
結局本性がこれなんだからな。
「で、そのアレンさんがなんでここへ?二人を連れて来てくれたみたいですけど」
それこそ、一番の疑問だ。ただ二人を送ったとは思い辛い。
「まあ時間も時間だからな。イベントの主催は俺たち自由騎士団だ。遅れるわけにもいかないし、そろそろ王都へと戻ろうとしたところでこいつらが死に戻りしてきてな。無事にボスを倒せたって聞いて、お祝いの言葉一つでもと思ったわけよ」
「そうなんですね」
「てことで、お前たち。おめでとうな。正直本当に倒せるとは思わなかったんだが、結果良けりゃ問題ねぇな」
あっけらかんと笑うアレンさん。
いや、笑えねぇよ。その発言は。
「てめぇ……!」
「まあ、落ち着け。カイン」
余計な一言で苛立つカインをダイチは収めていく。こいつもこんな形してなんか大変そうなやつだな。
「おいおい、そんな態度取っていいのか?サポートなしでボスを倒したって言ったら【団長】も気に留めるかもしれないってのに」
「ま、まじか!?」
「もちろんだ。最もその報告をするのは俺次第なんだけどなー?」
「お、ま、え!!」
ギャップが恐ろしすぎる。
絶対こんな大人にはなりたくないな……。
手玉に取られるカインに同情するしかない。
それからというもの、アレンさんが俺たちに無理矢理着いてくる形で、結局は七人一緒に王都へと足を踏み入れることになったのだった。
キャラクター紹介 ヒュー
性別:男
身長:169cm
レベル:10
スタイル:弓使い
スキル:≪弓術≫≪弓≫≪器用さ増加≫≪素早さ増加≫≪見識≫≪狙う≫≪休息≫
中学生の割には身長は高い方だが、体重も軽い。もやしっ子体型。
実際普段からやる気も出さずに過ごしているため、カインとダイチがいなければ未だに始まりの街から出なかったんじゃないかと言われるほど。
それでもセンスは高く、やる気さえあれば強くなれるのにと二人が愚痴をこぼしている。




