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Carnival  作者: ハル
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出会い

 二人と分かれた後、まずは街の散策に回った。

 ひとまずは店でも巡ってみるかな。戦闘がどんなものか分からない以上、特に買うつもりもないけど。

 とはいえ、やっぱり武器は必要か?

 武器系スキルである≪声量≫。つまり喉こそが歌にとっての武器となる。あながち間違いではないが、これを武器にして魔物と戦うのはいくらVRMMMOだとしても無理なはず。攻撃手段として武器を手にするのも悪いことではない。

 ちなみに俺の初期装備はこんなものだ。


右手:なし

左手:なし

頭:なし

胴:初心者の服

腕:初心者の手袋

足:初心者の靴

アクセ:なし

アクセ:なし


 典型的な初期装備だな。通常ならこれに武器がついてくるんだろうが、ないものねだりしてもしょうがない。ちなみに所持金は初めから1000G持っている。

 とりあえず武器屋から見てみるか。

 店を探そうと少し歩くと、目的の武器屋はすぐに見つかった。街も大して広くないのだ。看板の目印も大きく、なかなかに分かりやすかった。

 店に入るとそこは至る所に武器が飾ってある。そりゃ武器屋なんだから当たり前っちゃ当たり前だが、リアルな武器屋なんて初めてだしな。


「おう、またお客さんか。今日は繁盛するな。冒険者様様だぜ」


 店主であろう親父がガハハと笑いながら構えていた。

 確かプレイヤーはゲーム内では冒険者なんだったよな。どこから現れたとかは大して気にした風でもないので、俺も気にしないことにしよう。

 さて肝心の武器はっと。

 …………

 一番安いので銅のシリーズで800Gだった。というか銅シリーズしか売っていなかったが。

試しに銅の剣を見てみる。


――銅の剣

銅製のいたって簡素な剣。初心者用よりかは普通に強い。

ATK+20


 多分文字通り普通に強いとは思うが、いかんせん金額がなぁ。さすがに初期費用からは出しにくい。

 保留にしておくか。

 店主に買わない旨を告げても嫌な反応はしなかった。客が来るだけでも有り難い、と。そんなもんか。

 それから武器屋を出て防具屋と道具屋も軽く見て回った。

 防具は布シリーズが300~400Gと少し安価だが部位を揃えるならやっぱり高い金額になるし、HPポーションにいたっては消耗品なのに500Gもした。小と付いてるにも関わらず。

 ここはやっぱモンスターを狩ってお金を稼ぐしかないよな。そうすりゃまともな装備も購入出来るだろうし、それでちょっと強いモンスターも狩りにいける。

 うん、そうしよう。ひとまずその方向で。


「狩りに行く前にもうちょい散策するか。確か酒場ではクエストの受注も出来るとか言ってたよな」


 とはいえ、酒場らしきものは見当たらない。北側か?

 そう当たりをつけて、折角なのに西側経由で進んでみる。そうすれば一通り街を回ることが出来るはずだ。

 西側は住宅街の地となっているからか、俺みたいなプレイヤーは一人と見なかった。

 それをいいことに俺は勝手に口ずさんでしまう。

 今の気分はこれからの冒険を思うと楽しみで仕方ないってとこか。意気揚々とした歌が俺から歌われる。歌うだけで俺の気持ちは晴れやかになり、力が湧いてくる気分だ。

 そのまま誰もいないことをいいことに歌い続けて北側に来て酒場を見つけたのはいいんだが。


「…………」


 いつの間に俺の後ろにいたのか、小さな二対の青い双眸が俺を見上げていた。

 明らかに子供だ。しかも双子。


「えっと……君たちは?」


 恐る恐る声を掛けたら二人の子はいっそう目を煌めいて反応してくれた。


「すっごい!お兄ちゃん歌うまいね!」

「すげー!母さんほどじゃないけど、上手いよ、兄ちゃん!もう一回歌って!」


 5、6歳ぐらいか?男の子と女の子の双子が期待に込めた眼差しで見上げてくる。

 例え子供といえど、こうして自分の歌を褒めてくれたら悪い気はしない。

 調子に乗って俺はもう一曲披露してしまった。

 その間二人は一言も発することなく、静かにけれど嬉しそうに耳を傾けてくれている。

 さながら二人だけのコンサートみたいなものだ。こういうのも楽しいもんだな。

 歌い終える度にアンコールを貰うものだから、俺は何度も歌うことにした。いろんな曲を交えて。

 やがて何曲目かを歌い終えると、二つの小さな拍手と共に、もう一つ大きな拍手が聞こえてきた。二人より後ろにいつの間にか女の人が立っていた。

 艶のある黒髪を一つに纏めて下げた妙齢の女性だ。服装は地味めであるが、それを隠しきれない美しさがある。


「あ、お母さん!」

「お母さんだ!」


 どうやら二人の母親のようだ。無邪気に喜ぶ二人とは正反対に、母親は少しだけ息を乱れさせて汗を掻いていた。

 もしかして二人を探し回っていたのか。だとしたら申し訳ないことをしたみたいだ。


「まったく二人とも、急にいなくなるもんだから心配したじゃない!」

「でもね、でもね!」

「お兄さんの歌が凄い綺麗だったんだよ!お母さんみたい!」

「もう……」


 母親の怒りは子供には伝わってないようである。どうやらやんちゃな双子のようだ。大変そうだな。

 とはいえ、時間を取らせてしまった俺にも責任はあるだろう。


「すみません、俺が子供たちを引き留めてしまったみたいで」


 そこでようやく彼女は俺の方へ向いた。


「いいのよ、どうせこの子たちが無理を言ったのでしょう?ごめんなさいね」

「俺は大丈夫ですよ。自分の歌を聞いてもらうのは好きですから」

「そう……私も同じだわ。それに貴方の歌、とても綺麗だったから私もつい聞き入ってしまったのだから。もう一度聞きたいくらい」


 嬉しいことを言ってくれる。彼女みたいな人からそう言われたら俺のテンションも上がってしまう。

 それに彼女も同じだと言ったし、子供たちも母親の歌が上手いと言っていた。


「失礼ですが、貴女も歌を?」

「……えぇ」


 どことなく翳りのある答えが気になった。


「お母さんはね、歌がとっても上手いんだよ」

「だけど最近はね、全然歌ってくれなくなったんだ」

「チャン……チャム……」


 母親は悲しそうな顔をして二人を抱き締めた。何だか見ていて痛ましく思ってしまう。

 気づけば口に出していた。


「あの、俺で良ければいつでも歌いますから」

「え……?」

「歌を聴くといろんな気分になりませんか?元気な歌なら元気に、悲しい歌なら悲しく。もし貴女が良ければ、元気になったり楽しくなるような歌を歌いますから」

「あなたは……」


 俺の言葉に驚いたような不思議そうな顔をしていた。

 さすがに会ったばっかりの男にそんなこと言われたくはないか。

 でも彼女の憂いが気になってしまった。そして一度気になったら俺は何とかしたいと思ってしまう。後悔するくらいなら。偽善であったとしてもだ。


「迷惑なら全然いいんです」

「……いいえ。あなたの歌は本当に綺麗だった。心からの歌は美しく、澄んでいて。私のような醜い歌とは大違いだわ」

「え……」

「だけど、もし叶うならもう一度前を向くのもいいのかもしれない」


 何かを噛み締めるように彼女は顔を上げた。


「私はローラといいます。冒険者さん、良ければあなたの歌をたくさん聞かせていただけませんか?」

「はい!もちろんです!俺はタクトって言います。よろしくお願いします、ローラさん」

「ありがとう、タクトさん」


 そう言ってローラさんは見惚れるような笑顔をしていた。



 クエスト【ローラの願い】を引き受けました。


キャラクター紹介 ミカン

性別:女

身長:163cm

スタイル:ヒーラー

レベル:27

スキル:≪杖≫≪回復魔法≫≪魔力増加≫≪?≫≪?≫≪?≫≪?≫≪?≫≪?≫≪?≫


タクトの親友にしてβプレイヤーの一人。イサナギ同様有名な人物であり、それはある意味イサナギ以上でもある。リアルでは勇也と恋人同士であるが、当然ゲーム内でそれを知る人物は数少ない。

意外と面倒見がよくサバサバしてる一見もある。


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