反省会とお調子者
始まりの街に戻った俺たちは、揃って噴水前のベンチに腰掛けて反省会と情報の共有を行った。
本当なら酒場に行ってやりたいとこだけど、本当に疲労って辛いんだよな。二人もソロでプレイしてる時に死んだ場合は、潔くゲーム自体を落としてるみたいなのでこの状態で動くのも慣れてないという。
「まあ、思ったよりは行けたんじゃないか?」
「そうね。まさかタクトがあそこまで攻撃を回避出来るなんてね」
「支援スタイルのくせにぶっ飛んでたよな。おかげでこっちは楽だったけどよ」
結果的にはオークのHPを半分切ったところまで行けた。トリガー後の最初の行動しか見られなかったが、あれは攻撃力アップの五連撃ってとこだろう。その後は分からないが、あの攻撃は今の俺にはきついな。完全に隙のない連撃だったから、一度見ただけでは回避出来る気はしない。
ならば、耐えればいいだけの話だが生憎と俺たちにはそんな真似は出来ないだろう。
「スキルのおかげだよ。回避に特化したスキルだから、オークの通常攻撃ぐらいなら何とかってところだな。ただやっぱりちゃんとしたタンクがいないと話にならない。一発しか耐えれなかったしな……」
「安心して。私は一発で死んだわ」
「俺も耐えたのは一発だな。タクトみたいに避けようと思ったけど、ありゃ無理だ」
低レベルの争い過ぎるだろ。
「そういや、タクトのおかげでライアの回復のチャンスはなかったけど、どうなんだ?」
「ヒールダンスはソロの時に自分で使ってHP二割くらいの回復かしらね。CTは3秒あるから連発出来ないし、私たちじゃ意味もないに等しいんじゃないかしら」
「それはあるな」
一度の被弾でHPの半分以上を持ってかれるなら、それを回復するのに時間が掛かる。ポーションを併用したとしてもすぐにとは言い辛い時間だ。
「攻撃も結局俺たちより毒のが強いんだもんなぁ」
「10秒ちょっとぐらい掛かってたけど、HPも10%くらい減ってたよな」
「強すぎね。最もそれに対する消費したMPや行動を考えると結局割に合ってはいないんだけどね」
「毒になったらラッキーって感じかな。時間は掛かっても普通に攻撃した方がいいだろ。長期戦になるからMP温存も大事だし」
「なら後半戦になったら連発するのもアリよね」
「そんなチャンスがあればだけどな」
なにせ後半戦は未知数だ。どんな戦いに展開するかも分からない。
最も街道のボスであるはぐれオークは、最初のフィールドボスとあって難易度は易しいと聞いている。そこまで複雑に戦い方が変わるとは思えない。
「まあ、だいたいこんなもんかな」
「しっかし、こうしてみると憐れだな……」
「どれを取っても、タンク、アタッカー、ヒーラーには成り切れないわよね。当たり前だけど」
そう。そこなんだ。
結局俺たちじゃ、三人でボスなんて無理があるのだ。行けるとしたらレベルを上げて、最低限ボスネームを青くするぐらいにはいかないといけないだろう。
やっぱりそれぞれのスタイルが欲しいとこだよな。
時間も正午を過ぎ。タイムリミットはもう間近だ。
果たして見つかるのだろうか。
デスペナルティの時間も終わり、後半はただ談笑してた俺たちもようやく再び酒場へと足を向けた。
酒場の中は依然とガランとしており、プレイヤーの数は少ない。けれど当たり前というか、そこにいた人々は午前中から変わっているし、多少であるが人の数も増えている。
改めて募集する前に、ダメ元で声を掛けてみるか?
酒場をぐるりと見回すと、だいたい四つのグループが出来ていた。
一つはすでに六人パーティで埋まっている。これから意気揚々と出かけるタイミングの若者たちだ。
もう一つは二人組の男。人相が悪く、態度も心なしか悪い。関わりたくないと察知して、素早く目を逸らす。
三つ目は俺たちと同じく三人グループの男女。年も近そうだが、初期装備なのと会話が聞こえた限りではレベル1のプレイヤーもいるらしい。残念ながら今の状況では無理だろう。
そして最後のグループは四人組。正しくは三人組+保護者ってとこだろうか。少なくともその保護者と思われるプレイヤーの装備は、ここにいる誰よりも強そうで明らかにベータプレイヤーであり、レベルも高いと分かる。
不躾に視線をやっていたわけではないが、それを感じたのか男も顔を上げて視線が合った。
「ん?」
「あ、いえ……すみません」
用があったわけではない。どのみち彼のような人がいるなら俺たちの目的とは合わないだろう。
やっぱりここは再びパーティー登録するしかないのか。
そう思って二葉さんに近寄った所――なぜか先にコーダが彼女と会話をしていたが――さっきの男の方から声を掛けられた。
「なあ、あんたら。もしかしてこれから街道のボスに挑む気だったり?」
「え、どうして……」
男は俺たちに近づいてきて、無遠慮な視線で見まわす。
「ふーん。興味深いな……。装備を見るからに、タンクはなし、魔法使いもなし。嬢ちゃんは盗賊系か?そこの金髪兄ちゃんが持ってんのはギター?まじか、そんなのあるのか。それにあんたは見たところ武器もない……。こりゃまたへんてこりんなパーティーだ」
「は!?何なの、あんた!?」
見下されたのを感じたのか、ライアが真っ先に声を上げた。
以前のナンパの時もそうだったが、彼女は結構短気みたいだ。怒らせないようにしないと。
対する男は悪びれもなく、清々しく笑っていた。
装備しているのは純黒の鎧。恐らく街中だから頭装備はなさそうだが、同じように兜もあると見ていいだろう。腰に差しているのは槍か。
装備に反して髪型はオレンジ色と非常に明るい。顔立ちも爽やかな笑みを浮かべており、年齢的には見た目では20代半ばぐらいだと思われる。
「悪い悪い。俺の名はアレン。もしくは【黒騎士】って聞いたことないか?」
【黒騎士】――どうやら二つ名を持つ有名プレイヤーのようだった。
当然俺は掲示板とかは見ないので生憎と知りはしない。
ライアに視線を向けると、彼女も当然のように首を横に振っている。
コーダは……まだ二葉さんと話してんのかよ!
「何やってんだよ、コーダ!」
「ん?タクト、呼んだか?」
ようやくとばかりにコーダがこっちの状況に気付き、まじまじと男と視線を交わす。
「【黒騎士】ねぇ……。どっかで聞いたことがあるような、ないような……」
要は知らないと。
「まじか……!これでも初心者プレイヤーには有名だと思ってたんだがなぁ……。俺も【団長】に比べたらマダマダだな」
【団長】?それなら聞き覚えがあるな。
確か――
「自由騎士団、か?」
騎士と付いているし、そういや自由騎士団は今王都への護送などをしているんだっけか。
それを思い出せば、この人がここにいるのも納得できる。
「そうそう!その自由騎士団!俺はそこの本隊にいるアレン。またの名を【黒騎士】。以後お見知りおきを!」
「そんなこと言われても、私たちこれっきりでしょ?あんたが話しかけてきただけじゃない」
「え、酷い!……ってのは冗談で、最初にも言ったけどアンタら王都に行くためにフィールドボスを倒しに行くんだろ?どうよ、今ならこの【黒騎士】、無償で護衛してやるぜ」
「いや、間に合ってます」
「カーッ!アンタらもそう来たか!あれか?自分たちの力じゃないと気が済まないって性質?分かる、分かるんだよその気持ち。俺だってあんたと同じだ。けどな、イベントまでもう時間もない。それでもアンタらは自分たちの力でボスを倒したいって?そう言うのか!?」
何なんだ、この人。
テンションに追いつけねぇ。
「まあ、そんな感じですね。申し訳ないけど、同じレベルのメンバーを募集してるんですよ」
時間もあんまりないし、やんわりと断るしかない。
なのに、その言葉にアレンという男は輝くばかりに目を光らせた。
「なるほど!つまりメンバーを探してるんだな!しかも三人と。見たところ欲しいのはタンクに魔法使い?今ならアタッカーの弓使いもいてお得だよ!」
何を言ってるんだと思ったのは一瞬。
アレンさんは俺たちの意識を後方へと誘導させた。
最初に共にしていたアレンさん以外の三人だ。
彼らも突然のように目を瞬かせている。
全て、アレンさんが勝手に描いたシナリオなんだろう。
「どうだい?君たち三人と、この子たち三人。パーティーを組んでボスに挑むってのは!」
スキル紹介 踊り
――≪踊り≫
踊ることによって様々な効果をもたらす。
レベル1魅力の踊り
レベル5ステップダンス
レベル10ヒールダンス
レベル15???
・
・
適正スキル:≪体幹≫




