支援スタイルとチャレンジ
前話で書き忘れたあとがきにて、キャラクター紹介のコーダを載せてます。興味ある方は前話のあとがきを見てください。
残りのパーティーメンバーを探すこと、三十分。いっこうに誰も現れる気配はない。
それどころか、酒場にすら新たな人物が現れることもなかった。
日曜にも関わらず、これじゃあやっぱみんなすでに王都なんだよなぁ。
「どうする?」
二人にも集まりそうな気配など感じていないだろう。だんだんと口数も減っているくらいだ。そんな状況で貴重な時間を無為にしていくわけにもいかない。
「そうね……」
少しだけ悩む素振りをするライア。
その心はだいたい分かる。
そもそも何かアテがあるならば、俺のパーティーに入るわけがないのだ。抜けたから次がある状況じゃないのは明白なんだよな。
「なあ……どうせなら俺たち三人で一回チャレンジしないか?」
「は?」
「あんた何言ってんの!?」
ふざけたことを口にしたのはコーダだ。
三人でチャレンジ?
もちろんボスのことだよな?
「もしかしたら時間も関係してんじゃん?まだ午前中だし、昼過ぎたら本当に慌てた人がやってくるかもしれないし……それに俺初見だからボスの情報も知りたいしなぁ。万一死んでもデスペナ一時間だからそれまでに、またメンバー探すってのもありなんじゃね?」
こいつ、本気で言ってるのか。
支援スタイル三人でどうやったって勝てるわけないだろうに。
だけど――
「ふーん……いいんじゃない?」
「面白いな、それも」
「え、まじで!?」
こういうチャレンジ精神は好きだ。やってみないと分からないしな。
しかも意外にもライアも乗り気なのか。
「お互いにどんな戦い方するのか知るのもいいだろうし」
「よっしゃ!やっぱ言ってみるもんだな!」
善は急げだ。
準備もほどほどに、俺たちは三人だけでバランタイン街道へと向かった。
始まりの街を東に抜けて、真っ直ぐに伸びる一つの街道。
バランタイン街道と呼ばれ、その遠く先には、霞むように大きな城が目にすることが出来た。バランタイン街道は二つのマップで出来ているが、始まりの街から東に出たところが西バランタイン街道、反対に王都を西に出たところが東バランタイン街道と呼ばれている。
少し分かりにくいんだよな。
街道周辺にモンスターは少なく、王都へと進むだけならそうそうモンスターに出会う機会は少ない。街道から逸れていくほどに、モンスターも多く分布されているのだ。
レストエリアは小さなテントが敷かれていて、焚き火がある休憩所だ。昼は消されているが、夜になれば自動的に火がおこされるので情緒を感じるであろう。
そこに散らばる大きな丸太に腰を掛けながら、俺たち三人は最終的な確認だけをしていく。
「とりあえず、みんな支援スタイルなんだよな。俺の≪歌≫は味方全体のバフな。今覚えてるのはSTR、VIT、INT、MND、DEXの三つだ。まあ効果はハッキリ言ってしょぼいけど」
これでも≪声量≫と≪音楽≫が上がったおかげで、それなりには上がるようになったんだが、まだまだ≪付与魔法≫には及ばない。
それにコーダとライアは支援スタイルでも、攻撃向きと回復向きと言っていた。俺の≪歌≫とはやはり異なるんだ。
「≪歌≫の話は聞いたことあるぜ。多分俺の≪演奏≫よりかは有名だろ。俺が今覚えてるバフは全体STRだけだな。後は全体攻撃があるんだけど……まあハッキリ言って弱い。タイマンじゃ殴った方が効率いいぐらいだな。今のレベルじゃ」
このレベルで全体攻撃って強い気もするが、コーダの感じではそうでもなにというか。話を聞けばきくほど、≪歌≫と同じように大器晩成型で茨の道らしい。それでソロで13まで上げたこいつはやっぱり凄いんだろう。
「私のスキルは≪踊り≫。全体バフはCHMとAGI。それと単体回復があるけど、本当に低いわ。少なくともピンチを乗り越えられる程度ではないのは分かっておいて」
それでも回復スキルがあるってのは強みになるんじゃないだろうか。それにバフもCHMとAGIなら、俺と被ることはない。むしろ俺が欲しいステータスじゃんか。
「オッケー。んじゃ支援の振り分けどうする?被ってるのは俺とコーダのSTRだけだな。STRはコーダに任せるとして、CHMとAGIはライア。後は俺だけど……防御の補填としてVITとMNDはいいけど、INTとDEXって必要か?さすがにMPがどうなるか分からないから効果がないものは歌わないつもりだけど」
「俺はいらねぇな」
「私もよ」
「てか、タクト。お前≪歌≫のレベルいくつなんだ?俺よりスキル多くねぇか?」
「……そういえばそうね。レベル10なら三つよね?」
あー、うん。そりゃ思うよな。
プレイヤーレベル12にして≪歌≫のレベルが20なんて普通じゃないもんな。街中で歌うだけでレベルは上がるから不可能ではないんだろうけど。実際それで上がったわけだし。
まあそこは素直に白状しておこう。ユニークスキルはさすがにまだ話せるほどの相手ではないから伏せる。
すると二人はなんだか可哀想なものを見る目で言葉を濁していた。
なんでだ……。
「まあ、タクトのことはいいわ。それよりポジションどうするの?ボスの相手なんて私絶対無理だから」
「俺もなー、逃げ回るだけなら何とかいけるかもしれないけど……」
「……だよな。それは出来るか分かんないけど俺がやるよ」
「タクトが?まじかよ!」
「出来るの?」
自信はそんなにあるわけではない。けれど挑戦してみたい気持ちはあった。
まあもともとダメで仕方がない特効だ。少なくとも次に活かせる経験ぐらいは持てればいい。
「アタッカーはコーダな。ライアは支援と回復で。攻撃手段がもしあるなら無理ない程度で」
「……一応短剣装備してるけど、ダメージは期待しないで」
「安心しろライア!俺のダメージも期待できないからおあいこだ」
「ま、戦ってみないと分かんないよな」
負け前提の特攻だ。ここで誰がミスしても恨まないだろう。
気を楽にして、俺たちはボスへの境界線を潜った。
キャラクター紹介 ライア
性別:女
身長:158cm
スタイル:踊り子
レベル:10
スキル:≪踊り≫≪体幹≫≪魅力増加≫≪音楽≫≪見識≫≪剣術・短剣≫≪素早さ増加≫
以前に酒場でナンパされているところを救った女性。その後見かけることもなかったが、なにかの縁か、タクトの募集していたパーティーに入る。同じ音楽系スキルを持っていることにより親近感を抱く。




