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Carnival  作者: ハル
23/68

トッププレイヤーとコンダクター

「ウォークライ!」


 イサナギが最前線に躍り出て、その言葉を叫んだ。

 これは俺でも分かる。≪ヘイト≫スキルだ。

 グイナスさんに散々見せられた挑発の全体バージョン。それがウォークライだ。

 ≪ヘイト≫は技能スキルであり、タンクをスタイルとするプレイヤーには必須のスキルといっていい。当然イサナギは持ってるわけで、真っ先にそれを使いゴブリン五体のヘイトを自分へと向ける。

 さすが、守護神。お世辞でなく、その後ろ姿は恰好良かった。

 イサナギを対象とした五体のゴブリンは一斉に初手の攻撃をイサナギへと向ける。

 ゴブリンナイトは剣を向けて、レンジャーは弩を放ち、メイジは僅かな詠唱を以て火の玉を向けた。


「イサナギ!?」


 全弾被弾したイサナギに、思わず声を上げる。

 何せ相手のレベルは想定30と少し。それが五体分のダメージを受けたのならいくらタンクとてただですまないだろう。俺だったら何百%のオーバーキルだ。

 だがそう思ったのも束の間、立ち続けていたイサナギのHPは一割ほどしか減っていなかった。

 もちろんミカンがヒールをしたわけではない。


「なめんなよ。こちとら最強のタンクを背負ってんだ。この程度問題ないな」


 マジか。想像以上だ。

 そもそもイサナギとミカンと一緒に戦うのは、実質これが始めてじゃないか。

 噂などではその強さを聞いていたが、それを上回る事実が目の前にあった。


「大丈夫よ、タクト。イサナギは本当にこういう時は頼りになるから。タクトはタクトの仕事をして」

「ミカン……」


 その瞬間、ハッとした。

 事態を見ているだけだったが、俺はまだ何もしてないじゃないか。

 支援歌を掛けることこそ、俺のスタイルだというのに。


「悪い!……力の歌!守りの歌!魔攻の歌!精神の歌!」


 ≪歌≫のレベルが上がったとはいえ、まだまだその効果はそれほど高くはないだろう。

 けれど少しでも戦闘を有利にするべく歌を歌う。それが俺の役割だ。


「よし、反撃だ!」


 イサナギがゴブリンの攻撃を盾で受け止めながらも、剣で反撃を開始していく。それに連ねるようにミカンもまた攻撃の魔法を詠唱していく。

 ヒーラーであるミカンは≪回復魔法≫だけでなく≪光魔法≫も習得している。アヤナさんもそうだったが、ヒーラーの基本的のスキルとしてはこの二つは基本的なものらしいのだ。


「プリズムレイ!」


 ミカンが光魔法を発動する。屈折した光線がゴブリンを直線的に貫いていく。

 牽制にもなったその魔法はゴブリンたちの行動を少し遅らせていた。

 だが――


「……この程度か」


 男が何かを見極めるように声を漏らす。

 ゴブリンたちは大してHPは削られていない。

 それもそのはず。

 イサナギもミカンも、そして俺も、三人とも単純たるアタッカーではないのだ。

 俺にとっては格上も格上、二人にとっても今攻略している前線並のモンスターだ。当たり前だが、二人だけでは決定打となる攻撃を与えることが出来ない。

 そんなことは男でも分かってはいるはずだった。

 だが、男は不敵に口角を上げた。


「言ったはずだ。連携など必要はない、と」


 そう言い放った男は、懐から徐に何かを取り出した。

 ……棒?

 最も、それは単純な棒ではない。

 細く、鋭い、三十センチにも満たないだろう。銀色の小さな棒。

 いや、違う。見たことがある。あれは――


「踊れ、狂え」


 指揮棒だ!

 まるで音楽家の指揮者のように男は指揮棒を自由に振るう。

 そして、それに呼応するかのように一匹のゴブリンが動きを新たにしていく。


「これは……!」


 次の攻撃を仕掛けるゴブリンたちであったが、一番前に出ていたゴブリンナイトは唐突に後ろから鋭い一撃を見舞われた。

 鋭利に尖った矢。

 それは一体のゴブリンレンジャーから放たれていた。

 周りの仲間が驚く中、当のゴブリンレンジャーは二発、三発と立て続けに弩を放っていく。


「ギャァギャギャ!!」


 理解できない言語だが、ゴブリンたちには通じているんだろう。

 怒るように喚くゴブリンナイトだったが、ゴブリンレンジャーは今度は短剣を手に持って隣にいるもう一体のレンジャーに突き刺した。

 そこで初めてそのゴブリンレンジャーはゴブリンたちにとって敵と認識されていた。

 俺たちをよそに、四体のゴブリンは一体をめがけて攻撃し始める。

 その瞬間、俺は横で見ていた。

 再び男が指揮棒を自由に振り回すように動かすのを。

 そして――

 ゴブリンレンジャーが為すすべなくボコられる中、次に狂った行動をとったのはゴブリンナイトの方だった。しかも二体ともが。

 ゴブリンナイトたちは、突然標的をゴブリンメイジに変えて一斉に斬りかかる。詠唱を中断せざるを得なかったゴブリンメイジは、さっきのゴブリンナイトのように驚き、そして怒る。

 それからは同じようなことの連続だった。


「まじかよ……」


 その光景は俺だけでなく、イサナギもミカンも唖然とするように見つめるしかなかった。

 そして同時に思う。

 これこそが、【コンダクター】と呼ばれる所以なのだと。

 五体のゴブリンは同士討ちを繰り返し、最後にゴブリンナイトが一体残った。もはや攻撃対象を見失ったゴブリンナイトだったが、本能的に周囲にいるプレイヤーに目を向ける。

 けれど、そいつはもはや満身創痍でもあった。

 あと数発攻撃を入れれば、殺せるぐらいに。

 俺でさえ、この状態のゴブリンナイトであれば勝機を見いだせるくらいには。

 そして、それと同時に男は徐に指揮棒を仕舞いだし、代わりに別の何かを取り出す。


「それは……!!」


 この世界はゲームだ。

 どんな武器だって当然存在する。

 だからそれが、目の前にあるのも当たり前の事実なのである。


「……これで終わりだ」


 男が手に持つそれをゴブリンナイトに向け、その引き金を引く。

 銃だ。

 男は銃を武器にしているのだ。

 ただの通常攻撃がゴブリンナイトを射抜き、そしてその命を消していく。


「…………」


 圧倒的な一幕だった。

 俺だけじゃない。イサナギもミカンも何も言えないくらいに、男の強さが浮き彫りになっていた。

 これが、トッププレイヤーなのだと。

 その瞬間、何かが駆け巡るように俺の存在が震えていた。

 決して、イサナギとミカンが男に劣っているわけではない。

 実際、男の防御力も魔力も二人には敵わない。けれど男の攻撃には二人は当然敵わない。

 何よりも、イサナギとミカンはパーティーで戦闘をすることが主体であるが、男は一人で戦うことが当たり前なのだ。

 当然連携なんてあるわけもないし、必要ともしていない。

 これが男の戦い方なのだと。


スキル紹介 ヘイト


――≪ヘイト≫ 技能スキル 

敵視を動かすことに長けるスキル。

適切武器:近接系統


レベル1 挑発

レベル10 ウォークライ

レベル20 ???


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