表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Carnival  作者: ハル
14/68

ボスとデス

 ボスの境界線を越えると、周囲の景色も途端に変わる。

 いきなり広く開けた洞窟みたいな空間に変わり、奥には真っ暗な闇が続いていた。

 そしてそこに黒いモヤがあり、それはだんだんと姿を現していく。


「これが、ボス……」


 初めて見るボスは迫力が全然違った。

 禍々しさを帯びたボスは、まず身体が俺たちプレイヤーよりでかい。

 体長は三メートルくらいか。横には大きな翼が伸びているのでそれ以上だ。暗い中で光る双眸はすでに俺たちを餌と認識しているようだ。

 黒い翼を羽ばたかせる蝙蝠。


「闇夜のグレイターバット。レベルは13鳥種族に闇属性だね」


 トオルさんが≪見識≫のスキルでボスの情報をみんなに伝える。

 まさかこんなでかい蝙蝠と戦うことになるとはな。


「さて、みんな準備はいい?今回はアヤナが鍵だよ」

「大丈夫。≪光魔法≫はさっき覚えたから。タクトくん、微弱でも魔攻の歌は切らさないで。その変わり……」

「力の歌はいらない、ですよね。大丈夫です」


 事前の打ち合わせ通りだ。

 ボスフィールドに移動しても、一定の距離を越えない限りはボスはまだ攻撃してこない。まずは事前の準備としてそれぞれバフを唱える。


「魔攻の歌!」

「ストレングス!バイタリティ!」

「シールド!」

「アクアベール!」


 特にストレングスはこれまで使わなかった分、カナメさんの攻撃は今までの比じゃないだろう。

 それにボスが闇属性であるからこそ、アヤナさんが取得した≪光魔法≫の威力は大きい。≪回復魔法≫≪付与魔法≫≪光魔法≫、三つの魔法を駆使するアヤナさんこそが、このボスを倒すキーマンである。

 なら、俺の仕事は何としてもアヤナさんを守ることだろう。


「どうにか、全員無事に倒したいとこですね」

「馬鹿、タクト!そういうのをフラグって言うんだぞ!」

「えぇ……」


 そんなつもりじゃないのに……。


「こらこら。カナメも不吉なこと言わないでよ。とにかく行くよ!グイナス!」

「あぁ!……挑発!」


 真っ先にタンクのグイナスさんが突っ込んでグレイターバットのヘイトを取る。


「二連撃!」


 ≪剣術・片手≫のスキルでダメージを与えヘイトを固定していくグイナスさん。適宜挑発を使っているので、ヘイトに関しては問題ないだろう。


「攻撃開始!……アクアボール!」

「スラスト!」

「ライトボール!」

「強パンチ!」


 それぞれ四人が持てるスキルを使ってボスを削る。

 それでも削れたボスのHPは一割に満たなかった。


「固すぎじゃないすか!?」

「慌てない慌てない。ボスモンスターは通常とは全然違うし、長期戦を強いられるものよ」

「気持ちは分かるぜ、タクト!俺らも初めはそうだったからな!」


 いやいや、先に言ってくださいよ……。そしたら≪音楽≫じゃなくて≪瞑想≫取ったのに。

 魔攻の歌を歌って残るMPは335。戦闘中はMPは自動回復しないし、はじまりの街にはMPポーションは売っていない。

 あんまり強パンチと強キックは使いすぎない方がいいか?

 俺のダメージじゃ微々たるものだろうし、魔攻の歌を切らさないほうが重要だろう。


「とにかくグイナスがヘイトを取ってる間は大丈夫だから、攻撃を切らさないで!」


 CTクールタイムが明け次第、再度魔法を放つトオルさんにアヤナさん。やっぱり弱点属性である≪光魔法≫のライトボールの威力は高かった。


「オラオラァ!スラスト!」


 カナメさんも負けじと≪槍術≫を叩き込む。

 グレイターバットはダメージを受ける度にもがくも、そのHPは着実と減っていった。その攻撃もグイナスさんを致命傷には至ることなく、アヤナさんがすかさずヒールも掛ける。

 俺も魔攻の歌を切らさないようにしながら、少しずつ強パンチや強キックを入れていく。

 あれ、これって時間は掛かるけど、結構楽に終わるんじゃないか?

 なんか拍子抜けしながら戦い続け、グレイターバットのHPは半分を削ろうとしていた。

 ようやく折り返しか。だいたい六分くらいだから、このままなら大丈夫だな。

 そんな呑気な考えをしていた俺は馬鹿だったのだろう。


「そろそろだ!トリガーに気を付けて!」

「え……?」


 トオルさんの注意する声と共にグレイターバットの足元には魔法陣みたいなものが光る。


「ボスは自身のHPによって攻撃パターンが変わるからな!気を付けろ、タクト!」


 いやだから、そんな情報初めに言ってくれ!

 魔法陣が最大な輝きを発した時、グレーターバットの周囲にバットが十体出現していた。


「取り巻きの召喚か。グイナス、大丈夫!?」

「……全部は無理だ!」

「バットの殲滅を優先して!タクトくん!」

「分かりました!」


 皆まで言わず。グイナスさんに群がるバットのうち、三体を攻撃して引きはがす。

 申し訳ないが、これが今の俺の限界だ。


「十分だ!オラァ、薙ぎ払い!」


 カナメさんがバットの群れに範囲攻撃をすると、四体のバットがターゲットをカナメさんに変えた。


「カナメさん!?」


 アタッカーであるカナメさんの防御力は高くはない。ここまででもカナメさんがモンスターのヘイトを取ることはしなかった。そうすることでカナメさんが自由に動けたからだ。


「心配するな!新しい技があるからな……風車!」


 そう言って、カナメさんは槍を自身の前で高速回転してバットの接近を許さない。


「アヤナ!今のうちに!」

「分かってる!」


 召喚されたバットは全部で十体。そのうち俺が三体、カナメさんが四体持っている。残りの三体とボスのグレイターバットは未だグイナスさんがヘイトを稼いでいた。

 グイナスさんは防御を主体として、耐えることに集中しているのだ。


「アクアボール!」

「ライトボール!」


 トオルさんとアヤナさんの魔法はカナメさんが持つバットへと放たれる。まず最大のアタッカーであるカナメさんの身を自由にする作戦だろう。


「ファイアーボール!……アクアボール!」


 魔法には詠唱時間とCTが存在する。レベル1のボール系魔法には詠唱時間は存在しないが、CTが3秒存在する。けれど≪水魔法≫と≪火魔法≫を交互に使用してCTを利用したトオルさんの連続攻撃で、次々とバットは消滅していった。


「強ぇ……」


 俺を除いた四人の連携は本当に凄いと言わざるを得なかった。

 そりゃ格上のボスも倒せるってもんだよ。

 カナメさんの身が自由になれば、バットの殲滅は容易い。

 俺に引っ付いていたバットも全て消え、再びボスのグレイターバットだけとなった。


「まだ油断はしないでね。この後も何を仕掛けてくるか分からないよ」


 俺の心を見透かすようにトオルさんは注意を促す。

 まだ他にもあるってのか?どんだけボスは大変なんだよ!


「分かりました!……魔攻の歌!」


 切れそうになる魔攻の歌を更新しながら、俺は注意深くグレイターバットへと視線を向ける。

 その時、グレイターバットの口元が僅かに震えていた。


「来ます!超音波です!」

「えっ……!?」


 口元から発せられた後では遅い。俺はグレイターバットの足元まで走って超音波を回避しながらも強パンチの反撃を浴びせる。

 ただのバットなら単体攻撃の超音波もボスならば全体攻撃と成り果てていた。

 俺以外の四人みんなが全て超音波を被弾していた。


「タクト……お前は何であんな攻撃避けれるんだよ……」


 若干フラッとしながらカナメさんが悪態をついてくる。

 そう言われてもな。


「ヒール!」


 今ので喰らった攻撃をアヤナさんが一人ずつ回復していく。

 多分だがアヤナさんのMPもそう残ってはいないだろう。


「だけど、もう少しだよ!タクトくん、超音波の兆しがまた合ったらお願い!」

「……分かりました!」


 グレイターバットのHPは残り三割。恐らくこのままいけば大丈夫だとは思うが……。

 いやいや、油断はするもんじゃないな。


「ライトボール!」

「アクアボール!」

「スラスト!」

「二連撃!」

「強パンチ!」


 隙を見て攻撃を叩き込む俺たち。

 何とかHPも二割までも持ってきた。


「来るよ!」


 え?来るって?もしかしてまだあんの!?

 グレイターバットは身体を震わせながら、絶叫を発生した。


「キィィィィィイィィィ!!!」


 刹那、グレイターバットの周囲に黒いモヤが現れる。

 どこかで見たような……。


「魔法だ!」


 トオルさんの声でそれはハッキリと分かった。トオルさんやアヤナさんが魔法を唱える時に現れるエフェクトに似ているのだ。

 トオルさんのは青いモヤに赤いモヤ。アヤナさんのは白いモヤ。それはつまり属性を現している。

 そしてグレイターバットの足元は黒いモヤ。

 闇属性の魔法だ。

 黒い球状の魔法がグイナスさんへと一直線に向かう。


「ぐっ……!」


 今までの攻撃よりも遥かに効いている。


「ヒール!」

「悪い……魔法耐性は少ないんだ」

「まさか魔法を使ってくるなんて……」


 トオルさんが悔しそうに顔を歪めていた。そこに更に最悪な情報がもたらせる。


「ごめん、トオル!MPがもう少ししか……!」

「おいおい、まじかよ」


 パーティーの生命線であるヒーラーのMPの尽きは死を意味すると同義だ。


「くっ……グレイターバットのHPはもう少しだ!これ以上の消耗戦は無駄なだけ。みんな攻撃だけを!」


 トオルさんが下した決断は全員攻撃だった。

 それはそうだ。一番のダメージソースはアヤナさんのライトボールだ。少ない彼女のMPを使うならヒールよりもライトボールだ。その判断は間違いではないはず。


「魔攻の歌!」


 少しのダメージを切らさないためにも≪歌≫を掛け直す。


「グイナス、耐えて!」

「任せろ!!」


 全員が正念場だった。

 持てる最大限の攻撃をとにかく浴びせ続ける。

 グレイターバットのHPはついに一割へと辿り着く。

 これなら、勝てる。

 そう確信したと共に、再びグレイターバットは黒いモヤに包まれた。

 さっきと同じ、≪闇魔法≫のダークボールか。

 いや、違う!

 詠唱時間がさっきよりも長い!


「グイナス、気を付けて!」


 トオルさんがグイナスさんに注意を促すが、俺は一人でに身体がが動く。

 グレイターバットの狙いは一人だ。その対象であるアヤナさんの前に俺は躍り出て、グレイターバットから放たれる魔法を直撃した。


「マジか……」


 ≪闇魔法≫ダークレイ。闇の光線は俺の身体を一突きし、俺のHPは0になった。


「タクトくん!?」

「タクト!?」

「タクト!!」

「タクトくん……!!」


 みんながみんな、俺の名を叫んでくれたのは気のせいだろうか。

 俺は初めてのゲームでの死を迎えた。


キャラクター紹介 グイナス

性別:男

身長:184cm

レベル:9

スタイル:タンク

スキル:≪盾術≫≪盾≫≪体力増加≫≪ヘイト≫≪剣術・片手≫≪堅固≫


始まりの街の酒場で出会った男性。トオルをリーダーとするPTの一員で、パーティーを守るタンクを担う。実直な性格だが、無口が祟って初対面の人からは恐れられることが多い。弟がいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ