パーティーとお誘い
「まあこれはこれで良かったかな。絡まれてた女の子もとっととログアウトしたみたいだし」
「けど普通礼くらい言ってくだろ。何も言わずにこいつが絡んだ瞬間にログアウトしてったぜ?」
「そんなの当たり前でしょ!女の子なのよ。あんな男に絡まれて怖かったに決まってるじゃない!ホントカナメはその辺分かってないんだから」
「そうだな。だからモテないんだぞ」
「う、うるせーな!」
後ろの四人は何事もなかったのように談笑を始めた。
女の子のことに関しては俺も礼を言われたくてやったわけじゃないから別にいい。変なトラウマを持たないことを祈るしかない。
それにしても、四人ともが強そうだな。ひとまずお礼は言わないと。
「あの、トオルさんでしたか?助けに入ってくれてありがとうございました。俺一人じゃ拗れてたと思いますので」
「……まさかそう来るとは。むしろ僕たちが詫びるべきだよ。初めは出ていくか戸惑ったとこだったから」
それと同時に、野次馬と化した周囲のプレイヤーたちもバツの悪そうな顔をしていた。
それは別に気にしない。現実でも知らない人の喧嘩の仲裁をする人なんてまずそうそういない。
これは俺がやりたくてやったことであり、やらなかった人を責めるつもりも非難するつもりも毛頭ないのだから。
それをきちんとトオルさんに説明した。
「お前、いい性格してんなぁ。まだ高校生くらいだろ?」
「カナメ、リアルのことをそんな気軽に聞いちゃいけないよ」
「おっと、悪い悪い」
何だか思った以上に良さそうな人たちだったみたいだ。
「自己紹介がまだだったね。僕は水と火の魔道士で、トオル」
「俺は槍使いのアタッカーでカナメだ!」
「私はヒーラーのアヤナよ」
「タンクのグイナスだ」
聞いた感じパランスのいいパーティーなんだろう。仲の良さもすごい良いと分かる雰囲気だった。
リーダーであろうトオルさんは水を象徴とする青色の髪で温和そうな人だった。
カナメさんはちょっとガサツというか豪快な感じ。金髪がちょっとヤンキーに見える。
ピンク色の髪をしたアヤナさんは綺麗でお姉さんっていう感じ。カナメさんをよく注意している。
グイナスさんは黒髪で硬派なイメージ。三人と比べると無口なのだと思われる。
「俺はタクトです。スタイルはさっきも言ったけど歌使いですね。周りの情報とかよく分からなくて……トオルさんは有名な人なんですか?」
あの男もそうだったが、有名な人の身内とか?まあ結局その有名な人が分からないわけだが。
俺の質問にトオルさんは苦笑しているようだった。
「あー、うん。別に有名ってわけじゃないんだけど……」
「ばっか!あれは誇っていいことだろ!もしかしたらあの人たちに近づけるかもしれねぇじゃん!」
「そうね。あれだけ連携が取れてないと多分無理だと思うわ」
「あぁ。トオルはもっと誇れ」
なんだかよく分からないがトオルさんが謙遜していることだけは分かった。
「タクトくんは東のフィールドにボスがいるのは知ってる?」
東ってのは確か西バランタイン街道だったな。
はじまりの街を東に突き進むと王都バランタインに辿り着く。多くのプレイヤーがそこを拠点としているので、王都に着いて初めて初心者を脱却できるとも聞いている。
そこまでに至る道がバランタイン街道と呼ばれ、東西で二つのマップに区切られていた。
その中間にあるのがフィールドボスだ。そいつを倒さないと先へは進むことが出来ない。相応の強さがないと先に進めないってわけだ。と、イサナギからは聞いている。
「はい。どんなボスかは知らないですけど、レベル10のプレイヤーが六人組んで倒せるだろうって聞きました」
イサナギからはレベル10になったらパーティ―募集して挑めって言われたからな。その辺りが区切りなんだろう。
「そうそう。それくらいの強さなんだけど、実はそのボスを僕たちレベル8で四人で倒しちゃってね。それが結構広まっちゃって何か一気に有名になったみたいで……」
は?何だそれ。
「めちゃくちゃ凄いじゃないですか!?」
おぉ、思わず声が出てしまった。
「タクト、お前は分かる奴だな。トオルはこの通り消極的だからな。もっと俺たちを褒め称えろ!」
「ちょっと!何言ってんのよあんた」
アヤナさんが呆れたようにカナメさんを諫めている。
多分だがさっき連携がどうのこうの言ってたから、この四人だから成し遂げたことなのだろう。
けど一つ疑問に思うならば、なぜボスを倒したのにまだはじまりの街にいるのかということだった。
その疑問をぶつけたら難なく返ってくる。
「僕たちレベルはまだ8だからね。運が良かったとはいえレベル上げは適正した場所の方が効率がいいからまだこっちにいるんだ」
確かにその通りだ。自分のレベルより離れた相手との戦闘では経験値に補正が掛かってしまう。格下相手なら経験値はほとんど入らないし、格上であったらなら制限が掛かってしまう。そのシステムがパワーレベリングを防止しているのだ。一番効率がいいのはレベルが3~5ぐらい高い黄色のモンスター名を狩るのがいいと言われている。
「それで、僕たちこれから鉱山ダンジョンに行こうと思ってたんだけど、良かったらどうだい?何かの縁ってことでタクトくんも一緒に行かない?」
なん、だと。
ここでまさかのパーティーのお誘いが来るなんて。
けど鉱山ダンジョンか。北にあるダンジョンなのは知ってるが、どらくらいのレベルがいるのかは分からない。それに俺歌使いだし?
「俺のレベル5ですよ?それに≪歌≫ってレベル低いと効果も低いし、多分MP切れも多くて……」
自分で言ってて恥ずかしい。
本音を言えば一緒に行きたいが、それで迷惑を掛けてしまうならさすがに別だ。
「そんなこと気にしないよ。鉱山ダンジョンの適正レベルは5~8だからタクトくんにもいいレベル上げになるんじゃないかな?別に急いでいるわけじゃないし、適度に休憩を挟んでも問題ないよ」
「そうそう、もっと気楽にいけよ!ま、弱そうなタクトは俺が守ってやるから!」
「それを言うならグイナスが、じゃない?」
「……あぁ」
くっ、優しさが心に染みる!
やっぱり初めてのパーティーとダンジョンが魅力的過ぎて、ここまで言われたら断るわけにもいかないだろう。
俺は是非にとトオルさんたちにお願いした。
「じゃぁこれでパーティー結成だね」
「よっしゃ、やってやるぜ!二体目のボス狩りだ!」
「街道のボスよりレベルは低いらしいし、何とかなるかな?」
「レベル的には問題ないはずだ」
ん?
不穏な言葉が聞こえたのは、気のせいか?
キャラクター紹介 トオル
性別:男
身長:175cm
スタイル:火と水の魔道士
レベル:8
スキル:≪水魔法≫≪杖≫≪魔力増加≫≪火魔法≫≪見識≫
始まりの街の酒場で出会った男。四人パーティーのリーダーを務めており、その洞察力や指示力は目を光ものがある。
レベル8の四人パーティーで街道のボスを倒すという偉業を成し遂げたことにより、周囲からはその実力を買われている。




