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ナタリアッサは優しく微笑みながらら静かにライオネルへの思いを語った。


「・・・何かしら特別な思い出があるわけではないのです。端正な顔立ちで努力を惜しまない優秀な男であり・・・そしてとても優しく笑う男だという認識だけでした。でもいつからかその笑みが私に向ける時だけ少しばかり違う感情が混ざっていることに気づきました・・・私は鈍い方ではありません・・・自分にむけられる好意に聡い方です。ですが自分の感情には鈍いのだと彼の好意に気づいた時に気づいたのです。彼の好意を嬉しく思う自分の感情に・・。ですがそれ以外彼はひたすら自分の感情を表に出しませんでした。自らの立場を忘れず、決して一線を超えてこない、そして時々彼が私を想っていることすら私の勘違いであったのかとすら思うぐらい彼はひたすら私への気持ちを隠していました。ですが・・・私がこの国にくることが決まった時・・・父の口から侍従らに伝えられた時・・・彼は息を乱し私の部屋に訪れました。驚く侍女らには目もくれず私に言ったのです。“私も連れて行って下さい。最後までお側にいさせて下さい・・・”と。・・・泣いてしまいたかった。私が決してアルベニハ王国を見捨てることはないとわかった上で彼は“連れて逃げる”ではなく“一緒に死ぬ”ことを選んでくれた。そんな彼に私はただ笑みをみせ首を横に振るだけでした。その時決めたんです。彼にこの身を捧げることを。貴族として生きてきた私の常識が何の迷いもなく消えました。ふふ、ライオネルは・・・いい男なんでしょうか?際限なく私を魅了し続け、ナタリアッサ・スベリアをただの女にしてしまう”悪い男“だと思いますわ」



くすくすと笑いながら、恥ずかしがることなく惚気けるナタリアッサに王は脱力し宰相も苦笑をもらした。



「・・・どうやらこれはどう頑張っても我が国に留まっていただく術はなさそうですなぁ」


「はぁ・・・そうだな。やはりもう選択肢は1つしかないようだ」


そんな2人の様子を静かに見つめながら、ナタリアッサはこのあとの発せられるであろう提案は予想ができていた。


「本当に・・・これほどまでの恩情はございません。私ナタリアッサ・スベリアは貴族位をすて、この国の平民に籍を移し“外交官”としてアルベニハ王国に派遣された後は、御恩に報えるよう命尽きるまで陛下に尽くしたいと思います。」


そう言い切るとナタリアッサは静かに頭を下げた。


両足の上で重ねられた手も華奢な肩も震えている。


どんなに覚悟をしていても恐怖は常にナタリアッサの心に居着いていた。


だが、そんなことは全く悟られないようにアルベニハ王国の公爵令嬢として立派に振る舞い続けたナタリアッサ。


その恐怖から放たれた今・・・ナタリアッサはどんなに我慢しようとも、溢れ出る安堵感や生きてアルベニハ王国に戻れることの喜びなどを、うまく隠すことができなかった。


体を震わせながら、決して頭をあげようとしないナタリアッサが必死に隠すものに王も宰相も気づきつつ見て見ぬふりをし、王はわざとからかうかのように「・・・ここまで賢いとは私の息子では手が余るな」と、呟くのであった。









―――――――――――――――――――――――――――・・・







数日後、アルベニハ王国へと向かう質素な馬車の中でナタリアッサは窓から顔を出し空を見上げた。


「あの時と変わらない綺麗な澄んだ空ね。こんなことが起こるなんて・・・またライオネルに会えるなんて・・・本当に陛下には感謝してもしきれないわ・・・。」








そして、外交官のナタリアッサとしてアルベニハ王国に戻り王に事の次第を説明したあと、涙を流し喜んだ王妃がすぐにスベリア公爵を召喚し親子は再会を果たした。



言葉なくナタリアッサを抱きしめるスベリア公爵。ナタリアッサは涙を流し父の背に手を回した。




しばらくして落ち着いたあと、スベリア公爵はナタリアッサがずっと気にしながらも己の立場ゆえに発言できなかったことを教えた。


「お前が唆した男だが、いまだ部屋に監禁されている。はっきりとお前が処されたという話が入ってこなかったのが幸いして自決まではしていないが、ほぼ死んでいるようなものだ あれは。早くいって生き返らせてやれ」


はっきりとナタリアッサが唆したといった父の言葉にナタリアッサは、事の次第が全て知られていることを知り、思わず視線をそらしたがそれから語られたライオネルの現状に泣きそうになった。



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