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王城らしく立派な造りの廊下を暫く歩くと、小ぶりでありながら洗礼された飾り付けの施された落ち着く部屋に通された。
そこにはすでに王と宰相、そして侍女らが数名おりお茶の準備をしていた。
部屋に入ってきたナタリアッサに王は席に座るよう促す。
ナタリアッサは一瞬戸惑ったが、軽く礼をし王の前の席に腰を下ろした。
「どこから話をしたものか。今回アルベニハ王国に王族の血を持つものであればどの者でも良いとした理由はわかるか?」
早々に王の口から問われた内容にナタリアッサは表情をかえず答えた。
「推測ではありますが、誰を差し出すかを限定しないことでこちらの誠意と思惑などを見ようとしたのだと」
「・・・そうだ。もし評判も悪く王族としての“質”もなく城でも厄介者扱いをされている第二王子を差し出してきたならば問答無用で処刑し、アルベニハ王国も害ありと判断し相応な対応をしていた。」
ここで言葉を区切り優雅にお茶に手を伸ばし喉を潤す王の一挙一動を見逃さないようナタリアッサは警戒し見つめた。想定はしていた内容ではあったが、やはりそれを肯定されはっきりと宣言されると心にのしかかるものがある。
「だが、アルベニハ王国は貴殿を差し出すことを決めた。先程宰相からも話があったように評判の良い・・・そして“王妃”または“女王”としての“質”さえもある貴殿をだ。この時点で選択肢は2つになった。表向きには処刑だけが選択肢としてみせていたが、実をいえばそれは選択肢の1つにもなっていなかった。」
「・・・え?」
さすがのナタリアッサも驚愕し思わず声が出てしまった。
そんなナタリアッサに優しげな笑みをみせ王は言葉を続ける。
「ナタリアッサ嬢、君を私の息子の妃とするか、それか一生外と連絡を取らないことを条件に我が国での特待貴族とするという2つの選択肢だ。・・・だが、その選択肢は貴殿を調べたことで消えた。まさか公爵家のご令嬢が死を覚悟したからといってあんな行動をとるとは・・・報告を聞いた時我が耳を疑ったものだ。」
肩肘をつきながらナタリアッサに呆れた視線をむける王
笑みを崩さずお茶を飲み続ける宰相
ナタリアッサは自分が言葉にする前にすでに己のあの行動が知られていたことを知り目を瞬かせた。
「ご存知でしたか。ではあの側室にというお言葉は私をお試しになったのですね。」
普通のご令嬢であれば羞恥するであろうに、全く恥ずかしがることなく冷静に言葉を返してきたナタリアッサに王は面白くなさそうにまたため息をついた。
「これだけの情報でそこまで察するか。本当にあらゆる意味で“勿体ない“娘だ・・・。その通り、どう返してくるか試していた。あそこで命乞いをし、私の提案に頷いていたら、私は貴殿を愚か者だと評しただろう。例え死が待ち構えている運命だとしても、その程度の愛で貴族令嬢としてあるまじき行動をした貴殿を評することは出来ぬ。だが貴殿はふてぶてしいまでにはっきりと己の行動を公表し私の申し出を拒否し・・・ライオネルだったか その男への愛を貫いた。 一切躊躇せずに大したものだった。だからこそ、貴殿には私の息子の妃となり、ゆくゆくはこの国の王妃となってほしかったが・・・“勿体ない”事だ。そんなに良い男か ライオネルとやらは・・・」




