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冥界葬送  作者: 白羽
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「現世と…天国の、狭間?」


「はい。人は皆、現世で一生を終えると魂と精神が分離し、精神だけが天国へと逝くのです。

そして魂はどうなるか。それが天国の狭間へと送られてゆくのです」


この娘は何を言っているのだろう。悠はやはりこれは夢なのではないかと再度考えを巡らせる。


「天国の狭間とは、いわば魂を管理する処なのです。送られた魂はまた新たな生命へと送られて、この世界は成り立っています」


悠は黙って彼女の話に耳を傾ける。信じられるものでは到底なかったが、何故だか聞かずにはいられないような気がした。


「それが今…深刻な魂不足に追いやられている。何故だか、分かりますか?」


「…ごめん、わからない」


「私のような、死に損ないの増加です」


また彼女は今にも涙が零れ落ちそうな顔をする。華奢なその身体には重すぎるほどの想いを抱えているかと思うと、悠の胸までも締め付けられる感覚に襲われた。


「この世に未練を残し、彷徨う魂が増えてしまったのです。私のように…

皆、寂しいのです、苦しいのです。天国が如何に素敵なところかも皆知っています。それでも成仏する訳にはいかなかったのです。

そんな人達が現世に溢れてしまったことで、狭間の管理人は対策をせざるを得なくなりました」


「それが、私達…。冥界への送り人です。」


手に汗を握るそのリアルな感覚に、悠はこれは夢なんかじゃなかったと深く実感した。冥鳴のこの想いや真剣な眼差し。どうしても嘘や妄言には思えなかった。


「私達は死に損ないとして、同じ死に損ないで彷徨う魂を冥界に送るという使命を課されました。

私のような思いを、他の人にもして欲しくないですし、何より…」


「また、あの人を探せますから……」


心の底から嬉しそうに微笑むその姿に少しだけ恐怖を覚える。


「でも、本当は…、本当は苦しいんじゃないのか?」


「え…」


冥鳴は不意をつかれたかの様に思わず1歩後ずさってしまう。


「千年も待ち続けるなんて簡単な事じゃない。本当はもう──」


彼はあの世に逝ったのではないか


悠は思わず恐らく彼女にとって禁句であろう事を口走りそうになる。何故だか必死になってしまう自分が信じられなかった。


「そんな事ありません…。私が馬鹿だったんです。捜し物は自分の足で捜さないといけないのです。彼はきっと私の事をどこかでずっと待っててくれているんです。だから…私が捜しにいかないと……」


「それなら」


悠は1歩彼女に歩み寄る。手に汗を握る恐怖はもうそこにはなかった。


「今から捜しにいこう。一緒に」

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