高一・一学期 16
四月には雪なんて降るわけないのに、藤沖の自転車にくっついて走っているうちに目の前をちらちら白いものがちらついて消えた。ハンドルを取られそうになるが、うまくこらえた。
「そろそろだ」
「わりと近いな」
だいぶ身体がなまっていたのがわかる。ふくらはぎが腫れてきている。気付かれてたまるか。乙彦は自転車から降りた。あちらこちらに汚れた雪の塊が残っているで、幼稚園の遊び場程度の芝生が広がっていた。きちんと刈り取られているから、草むらではないだろう。
「その辺に自転車をつけておけ」
「ここに、か?」
「いつもそうしている」
藤沖は慣れた風に、その芝生へ自転車を下ろし、茶色い木造の建物横に自転車を留めた。丁寧に鍵をロックした。
「ここでいいのか」
「そうだ。ちなみにこれはいわゆる雪隠というものだ」
「せっちん?」
「結城先輩の部屋から一番近いトイレだ」
確かに昔、「雪隠」という言葉が存在したらしいとは聞いているが。疑問を口にする前に藤沖は、例の如く丁寧なレクチャーを行ってくれた。
「結城先輩はほら、あの家に住んでいる。よく工事現場で使用するようなプレハブの物置を自分専用の部屋にして生活しておられる」
「あそこか?」
観れば言われた通りの、白っぽく屋根が平らな物置小屋がちんまり建っている。だいたい大またで歩いて十歩くらい先だろうか。かなり薄汚れている。
「一人暮らしか」
「とも違う。結城先輩の御自宅は、ほら、もっと向こうの大きな建物だ」
視線を斜め上に向けてみると、確かに二階建ての瀟洒な建物がでんと建っている。雰囲気としてはベルサイユ宮殿……ほどではないにしても、かなり手が込んでいる。少女漫画の花を背負った背景が似合いそうだが、乙彦の記憶する結城先輩にはどう考えても不釣合いだ。
「間違ってアベックが彷徨い込むこともあるそうだ」
「なぜだ」
「まあ、そういうことだ」
よくわからないことを藤沖は付け加えた。
「とにかく結城先輩の指示により、俺はお前を連れてきた。連れてきたのはいいのだが、俺は玄関先で失礼する」
「お前も一緒に呼ばれたんじゃないのか」
てっきりふたりセットでと思っていたのだが。藤沖は首を振って、肩を竦めた。
「結城先輩はお前と話をしたいらしい。おそらくいろいろと言って聞かせたいこともあるのだろうな。俺は今まで何度も結城先輩とあの部屋で話をしたことがあるので、今のところは遠慮しておく。俺の仕事は今日、お前を連れてくることだけだ」
妙にそこだけ力が入っているのが不気味だ。
「それならそれでいいが」
「関崎、ひとつ聞いておきたい。お前の好みは」
いきなり藤沖は真剣に訊ねてきた。
「好み?」
「芸能人で好きなタイプなどはいるのか」
「いないが」
ぶっきらぼうに答えた。
「『日本少女宮』は嫌いか」
「知っているだけだ」
あれだけ人気の高い少女アイドルグループを知らない方が変だろう。一通り顔はすべて見分けられる。だが、それだけだ。巫女の衣装を着て全員で踊る「巫女ちゃんになりたい!」
くらいはメロディも歌も覚えている。
「そうか。アイドルに拒絶反応はないな」
「そういうことか」
名刺の内容を思い出し納得した。安心させておいたほうがいい。乙彦もかつての自分とは違い、ある程度律することができるのだから。
「藤沖、心配しなくてもいい。結城先輩の前で芸能人を罵倒するような愚かな真似はしない」
「いや、俺が心配しているのはそんなことではないんだが」
そこまで言いかけ、藤沖は大きく溜息をついた。
「まあ、男同士だ、たいしたことはないだろう」
ひとりごちた後、背中を押した。
「入り口で俺は帰るからな」
なぜそこまで強調するのか、その理由は藤沖がドアをノックし返事と共に開けたとたん初めて理解できた。
──あれは、なんだ?
のれん、だということはわかる。しかし、布ではない。
ストレートヘアで真中から前髪をまっぷたつに分けた女子が、玉ぐしを片手に投げキッスしている。人物がプリントされている部分が妙な膨らみ方をしている。そう、白い襟に赤いはかま。その胸元と頬とが加工されて少しゆがんでいる。
「先輩、関崎を連れてきました」
「おお、ご苦労さん。さあさ、入った入った」
藤沖はそ知らぬ顔でそのまま乙彦の頭をのれんに押し込んだ。妙にどきんとする。靴をそのまま脱ぎ捨て、直接繋がった部屋をぐるりと見渡してみる。結城先輩がどこにいるのかわからない。だいたい六畳程度のこじんまりした洋室ながら、自分の部屋よりもせまくるしく感じるのはなぜか。壁、床、窓その他びっしりと巫女姿の女子がべったり張り巡らされているからだ。部屋一面が細胞分裂したかのよう。生物の授業で蛙の卵の細胞分裂に近いものではなかろうか。見ていると具合悪くなりそうだ。しかも匂うのはやはり、男子の汗くさいもの。透明ビニールシートが敷いてあるのに気付き、なんとか安心して足を踏み込ませる。思わず振り返り藤沖の姿を探すが、一瞬遅く戸はぴたりと閉まっていた。
「やあ、再会できたねえ、さあさ、ここにお座り」
少し甲高いながら穏やかな声音が斜め前から聞こえた。
──どこだよ?
「ほら、ここだよ」
──見分けられないはずだ。
結城先輩は例の女子がプリントされた抱き枕の上にまたがり、おいでおいでをしていた。黒いトレーナーにジーンズ姿といういたってまっとうな格好ながら、その行動はやはり謎だった。
「あ、先日はありがとうございました!」
視界がちかちかして頭の痛い中、乙彦は少し目を細めてお礼をまず言った。
──藤沖の奴、本当に帰りやがって!
勧められて腰を下ろし正座した。缶コーヒーを出されてしばらく黙っていると、
「二度目ともなればもう慣れたであろうが、さすが礼儀はしっかりしているのう」
また偽お公家さまのようないい方で乙彦に語りかけてきた。
──この部屋に入るのがいやだったんだ、きっとそうだ、だから逃げたんだ!
視線のやり場に困る。はたしてどこに目を向ければいいのだろう。「日本少女宮」なるアイドルグループが巫女さんの衣装を売りにしていることは知っているが、まさにその写真を……もちろん顔が違うのはわかっているがそれが誰かは覚えていない……ありとあらゆる場所で目にすると、だんだんそれ以外の女子を見たくなる。もちろん中には巫女衣装以外にもビキニの水着などを着ている写真も混じっている。不覚にも、心中、反応してしまいそうな瞬間を覚え慌てて自制する。鼻血なんて出そうもんなら、青大附属高校で一生の恥さらしである。
「藤沖から前もって話は聞いていたが、なるほどな。そういうことかな」
「生徒会狙いというわけではありません」
「ほお、やはりそのあたり狙っているのか?」
おもしろそうに結城先輩は頷いた。明らかに誤解している。このまま藤沖と同じ勘違いをされたら話がややこやしくなるのは目に見えている。慌てて否定する。
「いえ、違います。藤沖は僕が生徒会に立候補したがっていると思っているようですが」
「初耳だなあ」
のほほんと結城先輩は、股のところで微笑んでいる巫女さんの口を撫でた。
「僕はただ、規律委員会でまず、いろいろなことを学びたいと考えて、それで」
「規律はちょうどいい委員会だと思うよ。藤沖にもそう話しておいたけどねえ」
──ちょっと待て、藤沖が結城先輩と話をしたというのか?
頭の中が混乱しそうになる。ここでつっぱしってしまうのが以前の乙彦だったけれども、今はそんなガキじゃない。冷静に、ゆっくりと、告げた。
「僕は、まだ青大附属にきて一週間です。だからこれから先、他の外部生たちについていくため、まず委員会で少しずつ学んでいこうと思ってます」
「そうかそうか。そうだなあ。一年の面子を見た限りだと、南雲が順当に上がって来て、お神酒徳利で東堂がきて、清坂ちゃんがきてと、なかなか面白い感じじゃないか。結構、附中時代はみな有名人だからねえ。やつらを見ているだけでも青大附中の人間模様を読むのに役立つと思うよ」
「いえ、人間関係は決め付けられるものではないです」
言い返すのは先輩に対して失礼と言われるかもしれないが、藤沖のように勘違い一直線になってしまうよりはちょっとだけむっとしてもらった方がましだ。
「ほお、それはなぜに」
怒らずに、結城先輩は乙彦の顔を覗き込んできた。用心深く乙彦も続けた。
「人間関係は、作っていくものだと思うからです。先入観をもって観てしまうというのは危険です」
「確かに一理あるわな。さあさ、まずはコーヒー、飲め飲め。本当はもっと甘いもんが欲しかったんだが、我が家でダイエット指令が出ているもんでね。苦いがしょうがなかろう」
──確かにいちごミルクよりは苦いだろうな。
「いただきます」
乙彦は一気に飲み乾した。その間に結城先輩は、レコードの準備をし、針を落とした。部屋のてっぺんあたりに潜んでいたスピーカーから、エネルギッシュな音ががんがんと流れた。
──み・こ・ちゃんに、なりーたーいーわたーしーの、ゆめのーやしろーへ。
芸能人に疎い乙彦でも知っている。「日本少女宮」のデビューシングル「巫女ちゃんになりたい!」の歌い出しだった。
「ところで関崎くんとやら、『日本少女宮』の中では誰がタイプかな?」
「しょっちゅうメンバーチェンジしているようなので今はわかりません」
実は弟が、「日本少女宮」のプロマイドを机の中に押し込んでいるのを見つけて、とりあげつつ覚えただけのことだった。あまり歌のうまくない中学生から高校生の女子たちを中心に、巫女の格好でアイドルソングを歌う。乙彦からすると歌のうまい連中はアイドルになれないのだという認識となる。みな髪の毛がロングのストレートなのでよくよく顔を見ないと分別しづらいが、それでも小柄なタイプの中学生はなかなか悪くないと思っていたりもする。
聞かれた以上は答えねばならないのだが、やたらとメンバーチェンジの多いグループ……どうやら高校を卒業した段階で引退か脱退をしているらしい……なので、よくわからない。
「写真を見れば好みはわかります」
「じゃあ、これはどうだ!」
ファーストアルバム「巫女ちゃんになりたい!」を手渡された。おそらく初期メンバーだろう。乙彦はひとりひとり指でなぞっていき、最後に指差した。この子だと思う。
「僕はこちらの方がタイプです」
「ずいぶん地味な子選んだねえ」
地味かどうかわからんが、一番日本風の顔立ちではつかねずみのようなあどけない感じ。結城先輩はふむふむと頷きつつ、改めて呟いた。
「そうかあ、久美ちゃんねえ。君もやっぱり、面食いだねえ」
──それは人間を顔で決め付けているということか?
さすがにそれは黙っていた。
しばらく結城先輩は一曲一曲、さりげなく音程がぴっちり合った声で歌っていた。こういうアイドルマニアの奴が歌うのは下手なのが常識だと思っていた。しかしまあ、結城先輩は想像以上にうまい。
「お上手ですね」
お世辞でもなく素直に伝えたところ、結城先輩も単純に喜んでくれた。いきなり足にはさみっぱなしのクッションに乗るよう誘われたが、それは丁重にお断りした。
「関崎くん、君は歌わないのか?」
「音痴です」
嘘ではない。聞くのは好きだが歌うと一本調子になるのだ。笑われる。
「いいぞ、腹の底から声を出すのは」
「もしやるなら応援団の方が向いています」
少し辟易していたところもある「日本少女宮」。だんだん夜も闇。早く帰りたいところだが、おそらく結城先輩も乙彦にアイドル談義するため呼び出したわけではあるまい。藤沖をからめるかたちで話を引き出したかった。予想通り結城先輩は藤沖の名を出した。
「藤沖と応援団でもやるのか」
「いえ、部活動は基本的に無理です。バイトしてます」
「ああ、そんなこと言っていたなあ。どうだバイトは」
「おもしろい、です」
言葉を切った。それよりも。
「ただ、仕事をする以上はもっと苦労しなくてはならないと思います。まだ、楽しんでいるだけでは、仕事じゃないと思います」
正直な気持ちだった。結城先輩がけげんそうにこちらを見る。
「まだバイトをはじめて二週間ですが、覚えることがたくさんあって面白いです。ですが、仕事というものはもっと汗水流して苦労するものであって、楽しいなどとふぬけたことを言っていてはいけないと、思ってます」
「それは、君のお父上がそういうのかな」
「はい」
嘘ではない。実際父は疲れ果てた顔して毎日家に帰ってくる。バイトをする以上はきっと苦しい日々が待っているのだろうと覚悟をしていたが、思ったよりも軽い日々。これでいいんだろうかと、思わずにはいられない。
「楽しくていいんだよ」
いきなり、結城先輩が甲高い声で言い放った。流れている「日本少女宮」の歌よりも迫力があるのは生だからか。息を飲んだ。
「仕事は、何はともあれ、楽しいのが一番だ。いいかい関崎くん。世の中、仕事が大変だとか苦しいとか辛いとか、いろいろ陰気な言い方してくる奴らがいるが、そんなのに飲み込まれちゃあ、いけないよ」
「でも実際は」
「仕事は楽しくしちまうものなのだよ、関崎くん。仕事だけじゃあない。勉強も、委員会も、日々の生活もみな、自分の力でだねえ、どんどん楽しくスパイスを振り掛けるのがコツ。そういうもんだよ」
「先輩のお父上がそうおっしゃったのですか」
問い返すと、結城先輩は大きく頷いた。
「我が父上も、楽しむことに関しては天才的能力を持っているからねえ。だが君の場合、いろいろとネガティヴなことをふっかけてくる輩が多そうだ。藤沖にもこれからきっちり、指導をしておかねばなるまいがまた今度いちごミルクを振舞いつつ教えることにするとして。まずは関崎、君だなあ」
いきなり呼び捨てだ。正座しなおした。背を伸ばした。
「つまりだ。いったいどこの誰に君は、『仕事は辛い』と刷り込まれたのかな」
「たぶん、両親」
「それは残念。だが、今君は、バイトが楽しくてならないだろう?」
「だからそれは」
「まずは先輩を立てたまえ。で次。関崎、君は委員会に関してどういうイメージを持っていた? 大変だとか、またいいかげんだとか、変人ばかりだとか」
──これは試されてるかもしれない。
鈍感な乙彦も、ここまであからさまに突っ込まれたら答えるしかない。
「全力投球せねばならない場所だと思ってます。たとえどういう委員会であってもです」
「全力投球、ねえ」
しばらく考え込むように、クッションを両手でもみほぐす結城先輩、次に向けられた視線は鋭いものだった。覚悟はしていた。
「どうしてそういうイメージを持ったのかな」
「はい、中学の頃、何度か評議委員会と交流会を持ちました。その時に青大附中の評議たちと話してて、俺、ええと僕の想像していた委員会活動とは打って変わって、みな、手抜きしてない、苦労しているという印象を受けました」
「主に誰と話をしたのかな? 評議だとおそらく」
言いかけた結城先輩を遮り言い切った。
「はい、前期評議委員長だった立村と、よく話をしていました。あと体育大会前には、三年の学級対抗リレー選手に選ばれたらしくて、俺に、指導を請いにきました。俺は元陸上部です」
けたけた笑い、クッションの顔を何度も抱きしめる結城先輩。
その後、また鋭い眼差しに戻った。乙彦を手招きした。しかたなく近づいた。動くたび、足元の巫女さんたちが笑顔で恨み目を向けているようだった。
「少々話すと長いことになるが、関崎くん」
「はい」
「立村とは同じ英語科だったね」
「はい」
「なら、奴とはできるだけ距離を置いた付き合いをするようにしなさい」
ここだけは命令だった。ぐいとあごを引き、乙彦は問うた。
「なぜですか」
「君の御両親と一緒だ。御両親は決して君に、仕事について悪印象を与えようとは思っていなかたに違いない。だが、結果として、仕事は辛いものというイメージを植え付けてしまっただろう。悪意はない」
「あったら困ります」
失礼な。自分の親になんてこというんだ。言い返そうとするが次の言葉に追いやられる。
「それと同じことだ。関崎、立村も決して悪意はない。おそらく素直に自分の言動を口にしただけだろう」
言われている意味がわからない。謎かけのようだ。言葉が詰まった。
「だが、それは関崎、君にとって悪い暗示だ」
「立村がですか?」
繰り返すと、結城先輩は大きく頷いた。
「僕が、青大附中で評議委員長を務めていたことは知っているね」
「はい」
自己紹介でもそう言ったじゃないか。覚えている。
「当然、立村がどういう奴かを見てきたからこそ、言えるが」
「立村を無視しろというんですか!」
声が荒立つ。まあまあ、と肩を叩かれる。
「適度な距離を置くべきだと言っただけだよ、関崎くん」
また「くん」付けに戻った。大きく溜息をつきつつ、結城先輩はひとことひとこと、ゆっくりと口を開いた。
「立村は決して悪気があってやるわけではないが、一緒に行動したり話をしたりすると、大抵の相手は疲れ果てる。疲れるという表現は正しくないな。なぜか、運を吸い取られるような感覚に捕らわれる」
「俺はそんな気ないですが」
「よく聞くんだよ、君」
結城先輩はまたも繰り返した。
「運を吸い取られるというのはだね、自分が楽しくてはいけないような気にさせられるってことなんだ。今、関崎くん、君は仕事を楽しんじゃいけないと思っている。同時に委員会も全力投球しなくてはならないものだと思っている。楽しさのかけらも感じられないだろう」
「いや、充実感は」
「無理しちゃいけない。いいかい、君はさっき、『先入観』という言葉を発したけれどもね、先入観というのは、無意識のうちに刷り込まれるものなんだ。自分がいつ、その先入観を持って人を観ているのかを改めて意識しなさい。もし、立村から何も聞いてなくて委員会に入っていたとしたらどう思っていたかい? こういったら南雲たちに半殺しに合うだろうが、規律とは、公立でいう生活委員のことだよ。週番だとか、違反カード切りとかだよ」
水野五月の顔が浮かび、消えた。そして水鳥中学の腕章も。
「元生徒会副会長の君としては、それほど、力こぶ作らなくてもやっていけそうな気がしなかったかい?」
──先入観か。
「立村にかかると、すべての出来事は必死に、顔をしかめて戦わねばならないものとして映る。本来ならばもっと脳天気にやっていけるし楽しめるし、苦労も実は快感。しかし最初からそんなマイナス思考が頭の中に刷り込まれていたら、どうするんだい?」
──でも、それは。
「まあいい、これから少し、おじいさんの長話に付き合ってもらうよ。いいね」
有無を言わせぬ口調で結城先輩はレコードを裏返した。