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第三話:ギルド登録完了!

「おい、どうしよう、出鼻くじかれたんだけど」

 受付を離れて作戦会議を始める。

「はぁ、お金が必要なことくらいわかるでしょ。バカなんですか?」

 ぐっ、こいつにバカにされるとは。

 とはいえ、確かにお金がないとどうしようもないしな。どうしたものか……。

「あの……ソウタさん、まだ私見られてるんですが……」

 キョロキョロと周りを見てアルネが言ってきた。

 どうやら男の冒険者達はこの天使に釘付けらしい。

 ……まてよ。

「おいアルネ、ちょっと行って、お前見てる奴らからお金もらってこいよ」

「ええっ⁉︎」

 こいつに釘付けの連中ならちょっとかわいくお願いでもすればお金くらい貸してくれるだろう。

「とにかく最低限の金を手に入れるためだ、お前に見とれてる奴らの中からマヌケそうなのを見つけてお前の美貌でたぶらかしてこい。黙ってれば美人なんだから手数料に困ってますアピールしながらかわいくおねだりしたら一人か二人くらいイチコロだろ」

「黙ってればってところが少々気になるんですが……」

 アルネが恨みったらしく睨んできたが、そんな事は気にしない。

 いいからさっさと行ってこい。

 俺は視線でそう告げた。

「わかりました……なんとかやってみますよ。はあ」

 アルネはそう言うと体を不自然にクネクネさせながら近くの男二人に近づいていった。

 どうやらあれで色気を振りまいてるつもりらしい。

 だが、あれではどう見ても頭のおかしい子にしか見えない。


 俺はどうしてあいつと一緒に行動しているんだろうか。

 どうせならもっとちゃんとした美少女がよかった。


「ちょっとそこのお兄さん方、相席よろしいですか〜?」

「あ、ああ、ど、どうぞ……」

 今の今まで見とれていた相手が頭のおかしい行動を起こしているのを見て、明らかに引き気味だった。

 二人のうちアルネに話しかけられなかった方は完全に他人のふりをしている。

「あなた達はこういうお店は初めてですかぁ?」


 あ、これダメなやつだ。


「いや、俺たちはよくここで飲んでるんだけど……」

「あら〜、お盛んなんですね〜」


 ダメだ。本格的にダメだ。

 どうやらあのバカ天使は、どっかの変な店の接客嬢と間違っている。


「ねぇ、私に聞きたい事があるんでしょ? さっきから私の事見てたでしょ〜?」

「い、いや、見てないぜ」


 もう、見てられない。


「そんな事言って、本当は私の事見てよくじょ、ちょっとソウタさん、いいところなのになんで邪魔するんですか、もう少しなのに!」

「このバカ天使! どう見たらそう思うんだ。ったく、お前に任せた俺がバカだった。男の経験ないならそう言えよ」

「べっ、別に経験ないわけじゃないんですからね、ちょっと男の人と話すのが苦手なだけで……」

 苦手なのを無理してやるとああなるのか?

 

「はあ、どうしたもんかな。このバカ天使は使えないし」

「使えないなんて言わないでください。じゃあ、ソウタさんがやってみてくださいよ」

「アホか、俺が男に媚びてどうするんだよ。追い返されるのか、ボコられるのがオチだ」

 俺たち二人は酒場のテーブルで頭を抱えていた。

 するとそこに、

「あれ? あなた方冒険者なんですか?」

 おっさんが声をかけてきた。

 そう、町の前で会ったおっさん。

「いや、冒険者になろうとしてるところです……」

「あ、手数料がないんですか?」

 俺たち二人はビクッと身を震わせた。

「あははは、そうでしたか、でしたらこれをどうぞ」

 そう言って、おっさんは少しばかりのお金をくれた。

「えっ、いいんですか?」

「いいんですよ、魔王軍に立ち向かおうって言う勇敢な人がいるんだ。つまりは私たちを守ってくれる人たちなんだから、これくらいのことはさせてくれ」

 聖者のような優しい言葉をかけてくれたおっさんに礼を言うと、俺たちは受付に戻ってきた。


「あの、登録手数料、持ってきました」

「は、はあ……登録料はお一人五百アナトになります」

 親切なおっさんにもらったのは一万アナト。一円=一アナトらしいので一万円もの大金を貸してくれた。

「では、冒険者カードを発行しますので、こちらの用紙に必要事項を記入して下さい」

 えっと、身長は165センチ。体重56キロ、見た目の特徴……特徴なんかあるかな? とりあえず、茶髪、茶眼っと。

「はい、結構です、では少々お待ち下さい」

 お姉さんはそう言うと、用紙を妙な機械に通した。

「はい、こちらが冒険者カードになります」

 カードの見てくれはほぼ免許証と同じだった。身分証も兼ねているのだろうか。

「では冒険者になりたいということですので、ある程度は理解してはいると思いますが、説明をしておきますね。まず、冒険者とは魔王軍ならびにモンスターと呼ばれる魔物……つまりは人に害を与える生物の討伐を請け負う方々の総称です。とはいえ、一般の人々の依頼を受けたりと基本は何でも屋のようなものです」

 お姉さんはカードの一部を指差すと。

「ここにレベルという項目がありますね、ご存知かと思いますが、この世の全ての生物には魂を宿しています。食べる。倒すなどの形で生物の生命活動にとどめを刺すとき、魂は天に登りますが、このカードはその魂の一部を吸収、保存します。いわゆる経験値と呼ばれるものです。魂は通常、目で見ることはできませんが、このカードはその経験値を数値で表し、それに応じてレベルも表記されます。レベルはその冒険者のつよさの基準になり、ここにはどの生物を倒したかなども記録されます。また、経験値がたまると、ある日突然、急激な成長をします、これを俗にレベルアップといいます。レベルが上がると、ステータスの上昇、スキルの獲得ができますので、頑張ってレベル上げをして下さいね。スキルは各個人の得手、不得手によって異なりますが……」

 うんうん。いままでの説明を聞くとゲームの世界って感じがするよな。

 これから俺の異世界ライフが始まるんだ。


「ではこのカードに魔力を込めて下さい」

 えっ?

 魔力を込める? なにそれどうやんの?

 そもそも俺って魔力持ってるのか?

 と、カードを持って戸惑っていると、

「魔力は誰にでもあるので、安心して下さい、魔力の出し方はイメージです。自分の中の力が手に流れるようなイメージを持って下さい」

 アルネがアドバイスをしてくれた。

 こいつもたまには役に立つようだ。

 イメージなら任せとけ、だてに引きこもって毎日中二的な妄想してたわけじゃない。

 俺は言われた通りにイメージを集中すると……。

 カードに文字が浮かび上がった。

 その文字を見てみると、体力、敏捷性、魔力容量、知能、器用度、幸運値などの表記があり、その隣には数字が書かれていた。

 どうやらこれが俺のステータスらしい。すごいのかは全くわからないが……。

「はい、ありがとうございます。確認しますね……えっと、スズキ ソウタさんですね。ステータスは……うわっ、すごい」

 なんだ俺ってすごいのか?

 お姉さんのすごいという言葉にちょっと興奮していると。

「見事なまでに平均ですよ、狙ったかのような平均値ばかりです。特徴といえば、知能がほんの少し高くて、幸運値が低いことくらいしか……」

 期待をあっさりとへし折られた。

そこまで言うと、お姉さんは心配そうな顔で。

「あの、本当に冒険者になるんですか? このステータスだと、クエストをこなすのにも苦労しますし……ましてや魔王軍と戦うなんて……」

 おい、どうなってんの、大体こういうのは主人公的なポジションの俺が類稀たぐいまれなステータスで、周りがざわつくとかそんなパターンじゃないのか。

 横でクスクス笑ってる天使をひっぱたきたいんだが。

「じゃあ私の番ですね、見てて下さいよ、天使の実力を見せちゃいますから」

 自信たっぷりに俺に微笑みながらアルネがカードに手を触れると、

「これは……すごいです……」

 なんだ、あれだけ自信満々で俺と同じ……

「な、なんですかこのステータスは⁉︎ 先程の方とは打って変わって、ステータスが大幅に平均値を超えてますよ‼︎ あ、でも知能と幸運値と器用度が最低レベルですが。それでも初めからこんなステータスの人は見たことないです!」

 お姉さんの興奮した声にギルド内がざわつき始めた。

 あれっ?

 なんでこいつがすごいんだ?

 一応は天使であることのアドバンテージなのか?

 というかその俺TUEEEE展開は普通俺のものなんじゃ……。

 ちょっと誇らしげな顔がイラっとするんだが……。

「それではお二人とも、今後の活躍を期待をしていますね!」

 お姉さんはそう言うとにこやかな笑みを浮かべた。


 まあ、思ってたのとは違うけど。

 俺の異世界生活が始まりを迎えた。

 


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