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第ニ話:登録なんて無料だと思ったのに

「なあ、そういやなんでこっちの言葉が喋れてるんだ?」

 町のでおっさんと会話できた事を思い出す。

 あの時は必死で話してたから気にならなかったが、こっちの世界も日本語だとは思えない。

「ああ、それはガルネ様からの贈り物ですよ。あなたの脳にちょっとした負荷をかけてこの世界の言語を習得させたんです」

「脳に負荷をかけてって……なんか変な事にならないよな?」

「多分……運が悪いと人格が壊れるらしいですけど……」

「間違えられて死んだほど運の悪い俺にとっては笑えないな、それ……」

 そう言うとアルネはビクッ震えた。

 ああ、そう言えば俺はこいつに殺されたんだった。

 まあ、なんにしてもギルドだ。この世界でどうしたらいいか分からない以上、組織に所属して援助でも受けた方がいい。

 俺はもう一度手に取ったチラシを見てみるが……ギルドの場所が書いてない。

 町ではギルドは有名だろうし場所を書く必要もないのかもしれない。

 ……誰かに聞くか。

 コミュ障口下手の俺にとってはハードルがかなり高いが……。

「で。ギルドに行くんですか? ソウタさん」

 あ、そう言えばこいつ天使だしギルドの場所くらい分かるかも。

 「おいアルネ、ギルドってどこにあるんだ? 天使なら分かるだろ?」

 するとアルネはキョトンとした顔で、

「分かりませんよ、天使といっても知ってるのはこの世界の常識くらいです。天使だって暇じゃないんですよ」

 と言ってきた。


 やっぱりこいつ使えねー。


 しょうがない、その辺にいる人に聞くか。

「あのー、すみません。冒険者ギルドをさがしているのですが」

「あら、冒険者ギルドを知らないなんて、他所から来た人?」

 俺は出店で買い物をしていたおばあさんに声をかけた。男だとガラが悪いと困るし、女性相手に愛想よく喋れる自信はない。ところがその点おばあさんは自分で話を広げてくれることが多いから楽だ。

「そうなんです。田舎から来たばかりでして……」

「そうなの、ようこそ『ファスト』へ、ギルドなら町の中央だから、そこの道を抜けた大通りを真っ直ぐ行くとあるわよ」

「ありがとうございます。おい、行くぞアルネ」

 俺はおばあさんにお礼を言うとアルネの手を引っ張って、教えられた大通りに向かった。

 ひょこひょこと俺の後ろをついてくるアルネが尊敬の眼差しをこちらに向けていた。

「手際がいいんですね。引きこもりだった割には」

「一言多いんだよ、このバカ天使、役に立たないお前に代わって聞いたんだろうが」

 バカ天使呼ばわりされたアルネが頬を膨らませているが、そんな事は気にしない。


 ここがギルドか。

 言われた通り町のど真ん中にギルドはあった。

 それはかなり大きな建物で中からはうまそうな匂いが漂っていた。

 これから俺の冒険が始まるのかというワクワクと、新参者イビリにでも会うのではとの心配を抱きつつ、覚悟を決め、扉に手を掛けた——


「いらっしゃいませー、ギルド関係なら右のカウンターへ、宿泊なら中央のカウンターへ、食事なら左の酒場にどうぞー」

 茶髪のウェイトレスのお姉さんが明るく迎えてくれた。

 ギルド少し薄暗く、酒場と宿泊施設が併設してある。なるほど、冒険者はここで衣食住ができるのか。

 幸いにもガラの悪い連中は見当たらないので、俺のさっきの心配は取り越し苦労だったらしい。

 だが、みんなこちらを見ている。やはり新参者は珍しいものなのだろうか? あんなチラシまで配っておいて。

 と思ったところで気づいた、なぜこちらを見ているのかを、

「あの、なんだか見られてるんですが……私が天使ってばれちゃったんですかね?」

 どうもこの天使を見ていたらしい。黙っていれば俺の第一印象のように美人だと思うのだろう。俺のそれは殺す相手を間違え、先輩に泣きついていた時点で崩れたが。

 というかバレるもなにも羽でバレるだろ、って————

「お前、羽はどうしたんだよ」

アルネの羽が無くなっていた。

「罰としてここに来たんですから、帰ってこられないように取り上げられたんです」

 羽って取り外し可能なのかよ。

 まあ、いいや、とにかく当初の目的を完遂しよう。

「あの、ソウタさん、ギルドに登録する必要ってあるんですか?」

 どうもこのバカ天使はどうもゲームの常識ってものが分かってないらしい。

「はあ……いいかアルネ、冒険者ギルドってのは登録すれば、冒険者を援助してくれるところだ、例えば軍資金を貸してくれたり、宿を紹介してもらったりしてな。とりあえず今日は登録をして、寝る場所を確保、そしてある程度の装備を揃える所まで進める。いいな?」

「良くわかりませんが、私も登録すればいいんですね?」

「そういう事だ、よし、行くぞ」


 お姉さんに言われた様に右のカウンターに行くと、五つの受付があり、十人ほどが分かれて並んでいた。

 こいつら皆俺たちのようにチラシを見て来た連中だろうか。

 受付の内、三人が女性で、二人が男性。

 俺はもちろん美人の女性のカウンターに並ぶ。

 コミュ障口下手の俺でも喋る内容が決まっていれば喋ることができる。

「あの、なんでわざわざここに並ぶんですか? 一番列が長いのに、あ、受付が美人だからですか? やっぱり男の子なんですね」

「その言い方やめろ。男の子なんて歳じゃないし、これには狙いがある」

「美人と仲良くなるっていう狙いですよね」

「違うわ! いいか、美人ってのはそれだけでステータスだ。男性職員はメロメロ、女性職員には尊敬の眼差しを受ける、つまり美人は地位が必然的に高いことが多い。だから美人との関係を築くことで、ここの職員、はたまたその上司との関係を間接的に結ぶことができるんだ」

「すみません。まさかそんな意図があったなんて……」

 まあ、嘘だがな。

 普通に美人のところに並びたかっただけだし。

 このバカ天使をだますくらいちょろいもんだ。



「はい、本日はどうされました?」

 俺たちの番がやってきた。

 やはり美人だ、金髪のロングヘアーと巨乳が大人の色気を醸し出している。健全な男子ならば絶対に反応してしまうだろう。

「あの……どうかされました?」

 おっと、見惚みとれてしまっていた。

「えっと、冒険者になりたいのですが」

「そうですか、チラシを見てこられたんですね、ありがとうございます。冒険者は人手不足でして、助かります」

 チラシを配るくらいだからそうだろうとは思った。冒険者なんて危険な仕事は避けたいものだろうし。

「では、登録手数料がお一人五百アナトになりますが」

「登録手数料……? 金ってもってるか?」

 アルネが首を振った。

「罰でここにきたんですから、お金なんて持たされてませんよ」

「…………」


 どうしよう、いきなりつまずいた……。

 登録ってポイントカードみたいに無料じゃないのかよ……。

第ニ話になりました。

読んでくださっている皆様、ありがとうございます。

毎日更新を目標にしていますが、隔日更新になってしまっています……。

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